2020年12月号

View Point

石原 秀樹(いしはら ひでき)

長野県信用保証協会会長

昭和56年、長野県庁入庁。ドイツ駐在員、防災係長、観光振興課長、産業政策課長、労働雇用担当部長、産業政策監(産業労働部長兼務)、長野県信用保証協会常務などを経て、平成31年より現職。

グローバル時代にも埋没しない
 個性豊かで力強い長野地域をつくるためにも
  中小企業をしっかりサポートしていきます

 昨年の台風19号や、今年に入ってからはコロナ禍により大きな被害を受けた中小企業に対し、長野県信用保証協会は公的保証機関として地元金融機関と一緒になってスピーディーな資金繰り支援を実施してきました。今後は、商工会議所や商工会の経営指導員のお力も借りながら、企業の経営支援により力を入れて、新しい時代に相応しいビジネスモデルづくりを応援してまいります。

資金繰り支援を
スピード感を持って実施

── 昨今の長野経済に鑑みて、長野県信用保証協会はどのようなご対応をされていますか。

石原
 現在の長野県経済はたいへん厳しい状況にあると感じています。昨年10月の台風19号により、北信東信では大きな被害が発生しましたし、その後も記録的な暖冬の影響が観光・サービス、小売業で拡大しました。さらに春以降、新型コロナウイルス感染拡大が幅広い産業に打撃を与えています。とりわけ飲食、旅館、イベント会社、バスやタクシー等旅客運送業の方々は、行政による自粛要請もあって、目の前にいたはずのお客様が突然いなくなり、本来得るべき利益が蒸発したことで大きな痛手を受けています。
 信用保証協会は公的な保証機関として、中小企業と金融機関を結びつける「かけ橋」の役割を担っています。早い段階から県内の中小企業、特に小規模事業者に対する支援を進めてきました。なかでも力を入れてきたのが、資金繰りへの支援です。現在の事業を継続し、将来に向かって雇用を維持する強い意志を持った前向きな経営者の皆様に対しては、地元金融機関と一緒になって県や市町村の制度を活用し、あるいは国とも連携し、必要とされる資金をスピード感を持ってお届けすることに努めてきました。
 支援規模は3600億円を超え、既に昨年1年間で支援した金額の倍以上となり、信用保証協会70年の歴史で最大となりました。また、残高も6500億円でこちらも過去最高です。今後はこうして供給したお金が中小企業の方々にとって、より生きる形に変えていくことを考えています。

今後は経営支援でも
経営者をサポート

── 信用保証協会による支援の形はどのように変わっていくのでしょうか。

石原
 Go Toトラベル事業等により、国内における移動が増えてきました。こうした状況の変化に応じて、今後は経営支援を踏まえた資金支援に力を入れていきます。
 新型コロナによって傷つけられた市場が、規模として以前の状態に戻るには2〜3年かかり、またその様相は以前よりかなり変容しているはずです。例えばリモートやソーシャルディスタンスを加味したサービスなり商品でないとなかなか認められなくなり、経営者は従来のビジネスのやり方を変える必要に迫られるでしょう。実際、長野市内の飲食店経営者の中には、ランチメニューの構成や価格設定、提供数を工夫して、お客様と従業員の感染リスクを抑えながら利益を確保する努力をしている店もあります。
 こうした新しいサービスや商品を創出するための経営改善は、経営者自身の力で可能な場合もありますが、多くの方は自社のどこに問題があるか分からずに困っているのではないでしょうか。信用保証協会には様々な業務がありますが、3年前の法改正により経営支援が大きな柱の一つに加わりました。中小企業診断システム、信州経営サポートミーティング、経営安定化支援、経営改善計画策定の費用補助などがそれです。こうした事業をしっかり行いながら、意欲を持って新しい経営のあり方を模索する経営者を力強くサポートします。

商工会議所経営指導員に
期待される役割

── 信用保証協会と商工会議所との関わりについてどうお考えですか。

石原
 今申し上げた経営支援は、信用保証協会だけの力ではできません。長野県内には7万社を超える中小企業があり、当協会のお客様はその46%にあたる3万3千社ほどです。私どもの限られたスタッフで県内すべての中小企業に対し、経営支援を手厚く行うことは不可能です。
 そこで、中小企業の経営者の一番身近にいる商工会議所、商工会の経営指導員のお力をぜひお借りしたいと思うのです。指導員さんの中には、経営支援に高い専門性が求められることに躊躇してしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、専門性の高い機関は外部に整っています。経営指導員の皆さんにはスピーディーにそこへつないでいただくハブのような役割を担っていただけたらありがたいのです。もし私どもへつないでいただけたら、ご紹介いただいた中小企業の皆様へ一番有利なメニューをご提示します。
 今は、体力のない小規模事業者への支援に力を入れるべき時です。特に観光に関わる産業は、売上が10%減少しただけで事業継続が厳しくなります。長野経済にとってものづくりも大切ですが、観光業も大切な産業です。コロナ禍で先が見えない状況において、観光に携わる小規模事業者の皆様の中には、周りの人に迷惑をかけないうちに商売を畳もうと考える方もいらっしゃいます。しかし、例えば善光寺周辺のお土産屋さんなども、複数の店舗が集まって商売をすることで、一体のホスピタリティを生んでおり、一店舗が欠けることは地域全体の財産を失うことになりかねません。そこをなんとか食い止めるため、商工会議所のお力もお借りして、長野県の観光業をチームとして支えていく態勢ができたらと思っています。

中小企業を育て、
個性豊かで力強い地域を

── 中小企業が活力を維持し発展していくことは、当会議所の願いでもあります。

石原
 中小企業の存在は、地域経済にとどまらず日本経済全体にとっても重要です。中小企業がなければ大企業は仕事ができませんし、その大企業とて初めから大企業だったわけではなく、中小から次第に大きくなったわけです。中小企業とはつまり、企業としての成長点です。それをいかに育て上げていくかが大切で、そのことが結果として、グローバル時代にも埋没しない個性豊かで力強い地域をつくることになると私は信じます。
 とはいえ、かつてのようにすべての企業の底上げを一気に行うことは難しい時代です。やる気のある企業の将来モデルになりうるビジネスに、集中的に投資をして成功事例をつくり、これを多くの方に知っていただくことで、同じような課題、同じような思いを抱える経営者の背中を押してあげることが、最も実際的な手法だと考えます。
 長野は東京から新幹線で2時間足らずで来られ、ライフワークバランスを実現するうえでも魅力的な土地です。アフターコロナの時代にも長野地域は伸びる可能性を持っています。また、今後もグローバル化は避けては通れません。そのためにも、地元企業や地元産業を大切にする個性豊かな地域循環型経済づくりの視点や、環境対策の視点も一層重要になると感じています。信用保証協会はこれからも地元金融機関と一緒になって、中小企業の皆様をしっかりサポートしていきます。

 

石原 秀樹さんの横顔
コロナ禍で家にいる時間が増え、台所に立つ楽しみを感じている。かつて山仲間の料理番として培った腕を愛用の鉄鍋に注いでいる。家族からは、焼きめしやオムライス、ナポリタンの評判がいい。本格料理にも挑戦中。


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