2014年7月号

View Point

香山 篤美(かやま あつみ)
長野商工会議所中小企業政策委員長
香山繊維株式会社代表取締役社長
昭和23年長野市松代町生まれ。50年に香山繊維株式会社入社。平成3年6月より現職。現在、長野商工会議所松代支部副支部長、松代中心市街地活性化協議会長のほか、松代町の活性化のために立ち上げたNPO法人夢空間松代のまちと心を育てる会で理事長を務める。

 

中小零細企業の武器である
小回りの良さを活かすためにも
積極的にIT化に取り組むべき

 新幹線延伸後も、宿泊を伴う観光を推進するには、松代など周辺地域のコンテンツの有効活用が鍵となります。そこで中小 企業政策委員会では、松代のまち歩きをコンセプトとした、スマートフォン向けアプリを制作しました。観光にも商売にも、当たり前のようにITが活用される 時代です。地方の中小企業ももっと積極的にネットビジネスに取り組んでいくべきだと思います。

中小企業も果敢に
ネットビジネスに取り組むべき

── 香山様が委員長をお務めの中小企業政策委員会では、どんな事業に取り組まれていますか。

香山 地域のなかで小規模事業者の活力を上げていくために、中小企業向けのさまざまな支援事業をしています。本年度の主な事業としては、消費増税への対応、IT化の推進、新幹線延伸に伴う地域活性化の3つがあります。
 消費増税への対応では、事業者が消費税をきちんと転嫁できる環境をつくることが狙いです。駆け込み需要の反動もありましたが、金額表示の仕方に内税式と 外税式が並列していることが、消費者を戸惑わせ、4月以降の買い控えにつながったと感じています。適正な利益は確保すべきで、増税分を転嫁できずに事業者 が被るようなことがあってはなりません。そのためにも、お客様の理解をきちんと得ていくことが大切です。
 ここ2~3カ月は事業者も消費者も様子見の状況のようです。事業者側は、お買い求めになり易い値段をどこに設定するか等、価格政策の難しさもあり、今後 お客様の反応を見ながら落としどころを探っていくことになると思います。7月以降には一連の混乱も収拾していると予想します。
 次にIT化支援についてです。商環境がますます激戦化するなか、従来型の商売の仕方では、今後中小零細企業は戦えなくなります。全国平均で申し上げる と、現在ホームページを持っている中小零細企業の割合が3割、さらにネット販売まで実施しているのが8%程です。長野商工会議所の会員企業の場合もその比 率は同程度でしょう。
 すでにシニア層もネットを活用し、ネット通販さえ苦にならない方が増えているご時世です。地方の中小企業も積極的にITを取り入れ、ネット販売にも果敢に参入すべきだと考えます。IT化推進は、北村会頭が掲げるテーマの一つでもあり、委員会としても、セミナーの開催などを通じて、会員企業を支援していきます。

宿泊を伴う観光推進の鍵は
周辺地域の魅力発信

── もう一つの事業の柱が、新幹線延伸に伴う地域活性化でした。

香山 はい。当委員会では、伝統文化を活かしたまちづくりを進めています。このテーマに取り組むにあたり、松代をモデル地域として、2012年にスマートフォン対応のアプリケーション「信州松代まち歩きNavi」を制作しました。同アプリは昨年のリニューアルにより、観光マップや施設一覧から詳細情報が見られたり、新着情報で今の松代の様子が分かったり、GPS機能等によりナビゲートもできるようになりました。
 新幹線延伸後も、宿泊を伴う観光を推進するため、松代や戸隠など有能な観光資源を抱える地域をアピールすることが必要で、ゆえに価値を持つ地域のコンテンツを、住民、行政、商工会議所等が一体となって活かしていくことが求められます。
 松代の場合、ポイントは「まち歩き」です。松代は1キロ四方に歴史や文化の資産が凝縮しています。これらを歩いて巡りながら、お店にも寄っていただく と、まちも元気になります。今後も、まち歩きを楽しむ人の利便性が高まるよう、アプリの拡充を図ります。来年春には善光寺御開帳もあり、松代から回向柱も 奉納されます。こうした情報も随時発信しながら、松代へ誘客を図るツールとして積極的に活用していきます。
 かつて長野市では、松代や篠ノ井も含めた市内3カ所で中心市街地活性化基本計画を策定し実施してきました。ところが国の方針転換により、その適用が1市 につき1カ所に絞られたため、松代、篠ノ井では同計画に基づく支援が得られなくなったのです。市町村合併が大規模に進められたなかで、同じような問題は全 国で見られます。
 地域を支えているのは、ローカルな地域密着型の商店街です。地域の生活を支えるインフラ として、コミュニティを構成する基盤として、重要な意義を持つ商店街が弱体化すると、災害などの折も困りますし、地域生活が崩壊する可能性も出てきます。 特に少子高齢化が進むなか、車社会ありきの大型店でなく、徒歩や自転車利用者に便利な商店街を再構築することがとても大切です。
 今私は、日本商工会議所の中小企業政策委員会へ委員として参加し、毎月国の行政幹部へ意見具申する機会をいただいています。そうした場でも、地域密着型 の商店街に対し、継続的な支援をしてほしいとお願いしています。長野市においても、同様の提案を今後していくつもりです。

お客様の困りごとを見つけ
解決することが使命

── ご商売の話に移ります。香山繊維様の事業について教えてください。

香山 当社は明治41年(1908)に創業し、足袋の製造販売を手がけ、戦争中は軍服も作りました。既製服の販売は戦 後からで、総合衣料品店として発展してきました。近年は、少子高齢化等時代の要請に応じながら、重点的に商品を絞り込むことで、当社ならではの強みを打ち 出しています。
 たとえば、保育園に通うお子さん用のお昼寝布団を8年ほど前からネットで販売しています。当社スタッフがブログで発信した情報をきっかけにして、初めてネット販売に参入した事例です。
 事業の柱をもう一つ立てるべく、4年前からはシニアに特化したファッションのネットショップを始めました。今ではさらにニーズを絞り込み、腰の曲がった方用のズボンやブラウス、介護・リハビリ用の衣料の販売に力を入れています。
 実店舗でもネット販売でも、注文を一つ一つ受けるなかで、「お客様は今こんなものを求めているんだ」と気づき、これを深化させ、需要を掘り起こすことを 大切にしています。その後もお客様の反応に耳を傾けていると、徐々に手応えがつかめてきます。次第にリピーターが増えれば、より高度な要望が出てきますか ら、さらに次の商品開発等につなげていく。一つの商品からヒントがどんどん膨らんでいくのです。お昼寝布団も腰の曲がった方用のブラウスも、そんなふうに メーカーさんと当社が共同開発してきた商品です。
 一般的な商品では満足できない方が必ずいます。なすべきは、お客様の困りごとを見つけ、それを解決することに尽きます。ニーズを見つけ、これに見合った商品を探し出し、あるいは新たに作り出して提案していく。大手にはできない小回りの利く対応こそ中小零細企業の武器であり、手間暇は掛かりますが、そこに商業者の使命があります。
 ニーズを丹念に拾い上げるには、お客様と直接向き合う従業員、とりわけ女性スタッフの活用が鍵でした。また、実店舗とネットを統合したいわゆるオムニチャンネルの時代には、ソーシャルメディアの重要性が増しますから、その活用にも今積極的に取り組んでいるところです。

香山 篤美さんの横顔
松代中心市街地活性化協議会会長として、街なみの環境整備に取り組むほか、児童養護施設等を運営する社会福祉法人湖会の理事長も務める。

 


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