CCI

   2010年10月号 No.747




両角 良昭
(社)信州・長野県観光協会 専務理事

昭和27年茅野市生まれ。50年日本国有鉄道入社。JR東日本旅客鉄道竃{社営業部、同長野支社営業部長、長野駅長などを歴任。本社営業部では、各地域と新幹線が連携した地域観光開発に取り組む。平成21年7月より現職。
  

  


明日の長野県観光の発展のために
信州の未知を掘り起こし
地域をあげておもてなししましょう


 前号に続き、信州デスティネーションキャンペーン特集をお送りします。今回は(社)信州・長野県観光協会の両角良昭専務理事にお聞きしました。
 キャンペーンは、新しい長野県観光のかたちを探るスタート地点です。宝は足もとにあります。これを機に、活気ある信州を県民こぞってつくりあげていきましょう。

地域が一体となった
観光振興が課題


―― 県では信州デスティネーションキャンペーン(以下信州DC)をどう意義づけ、どんな取り組みをされていきますか。

両角  長野県に限らず全国的に観光産業は大変な時期にあります。今回のキャンペーンを機に、地域全体で一体感のある観光振興を進めたいと考えます。これまで観光といえば、旅館・ホテル、飲食店、土産店など直接観光業に関わる方々だけの問題と認識されてきました。しかし、
今はお客様を地域全体でお迎えすること、農業も工業も商業も街じゅうが一体となって観光の仕組みを作り上げていくことが重要です。今回信州DCを機に、地域をあげて観光振興に取り組む機運を高めていけたらと思います。
 また、地域滞在型観光の定着も課題です。信州にはたくさんのお客様がお見えになりますが、有名なお寺などの歴史文化遺産や豊かな自然、景勝地などを「見るだけ」の観光形態が多く、地域にじっくり滞在し、地域のよさを味わっていただくことが少なかったようです。今後、地域の人と交流し、地域の食を味わい、地域ならではのお土産を買うといった地域滞在型の旅行スタイルを信州に根づかせたいと思います。
 今回の信州DCは「未知を歩こう。信州」がテーマです。
信州には、地域の方々だけが知っている、魅力的な観光素材がまだまだたくさんあります。その未知なる宝を歩いて楽しんでいただくことが狙いです。信州観光の7割以上を占めるマイカー利用のお客様に、ぜひ地域で車を止め、そこに滞在し、歩いて土地の魅力を感じていただきたい。もちろん電車やバスをご利用のお客様にも、気軽に歩いていただける仕組みづくりも必要です。
 長野市には、長野駅から善光寺までのまち歩きを楽しむさまざまな企画がありますし、松代でも松代イヤーが展開され、各地でボランティアガイドが地域を歩いて巡るお手伝いをされています。信州DCでは、こうした地域の方々の努力によるまち歩きの魅力とともに、街道や古道、宿場歩きの楽しさも積極的にPRします。


「さわやかにもてなそう」
県民運動


― 地域あげての観光を盛り上げるには、何が必要になってきますか。

両角  何よりも私たちは、
住んでいる地域に誇りを持つこと、そして、お客様がいらしたら「おもてなし」の心で接することが必要だと思います。
 長野県観光に関するアンケートで、お客様満足度は38・7%(平成21年)でした。これをキャンペーン期間中には、75%にすることを目標にしています。目標達成に向け、現在「さわやかにもてなそう」県民運動と題し、心に残るおもてなし活動を推進しています。同運動では「観光おもてなし宣言」という活動を実施します。この「観光おもてなし宣言」とは、観光旅行者に対して行う「おもてなし」の取組みを登録していただき、そのおもてなしを実践していただくものです。7月末現在で、学校、お店、会社、町内会、個人など、1、441件54、000人の方に登録いただきました。こうした取り組みを通じて全県でおもてなしの輪を広げ、
お客様にもう一度長野に行ってみたいと思っていただくことが大切だと思います。
 おもてなしを堅苦しく考える必要はなく、できることから始めればいいと思います。木曽や宮田村の小中学生は、社会科の授業で自分たちの郷土について勉強し、東京・上野駅や修学旅行に行った関西でふるさとをPRしています。上田市では、お客様に頼まれたら気持ちよく写真を撮ってあげようと「シャッターマン」ボランティアが盛んです。長野市の中央通りや松代町には、まち歩きをする人に無料休憩所を提供するお店があります。このように県内各地では様々なおもてなしの取組みが始まっています。
 その他に、信州の食もこの機会にもっとアピールします。信州のご当地グルメを一堂に集めるイベントを開催します。また、旅館、ホテル、飲食などのお店でも食を通じて未知の信州の魅力を感じていただけるように、信州らしい郷土食を楽しんでいただこうと様々な取組みが行われています。


長野県観光の将来のための
土台づくりに


― キャンペーンのおかげで、信州観光に新たな兆しが出ているのではないですか。

両角 はい。例えば、地域の人が普段何気なく見ている景色も大変な財産ですね。池田町では、同町から大町市山岳博物館まで、カメラやスケッチブックを片手に北アルプスを眺めながら歩くコース「北アルプス眺望の道」を設けました。これは、山に登るのではなく眺望を楽しみながら歩きたいという需要に応えています。
 また、飯田市遠山郷の旧木沢小学校では、昔ながらの木造校舎を利用して写真展などを開催し、密やかな人気を呼んでいます。従来、観光資源とは認識されなかった地域の宝を掘り起こした好例です。
 さらに、諏訪広域6市町村が取り組む「ズーラ」では、地域の魅力を楽しんでもらうさまざまなプログラムを地元の方が自ら企画・発信し、地域に密着するお客様の増加を目指しています。
 戸倉上山田温泉では、夕食後の時間をもてあます女性客のために、地元の床屋さんで顔剃りサービスをしたり、バス会社が姨捨からの夜景を楽しむナイトツアーを企画しています。山ノ内町でも、旅館の女将さんがバスガイドになって、地域の魅力をお客様に伝えていますね。
 一方で、高速交通網の発達等で、観光の広域化が進み、お客様の流れを行政区域で仕切ることができなくなっています。今回信州DCでは県内の各市町村をはじめ、各エリアが一体となって誘客に取り組むほか、新潟県妙高市や十日町市、岐阜県中津川市にも参加いただきました。「中山道ウォーク」のように、軽井沢から木曽そして中津川まで、より広範囲の市町村が連携したプログラムもあります。また、信州DCャンペーン実行委員会や長野県観光協会では、広域の周遊観光を支援するために、携帯電話を利用したポイントラリー「信州ぐるっと“ケータイ”キャンペーン2010」「信州ぐるっと食の祭典」「信州ウォーキングラリー」などを実施します。
 信州DCの目的は、開催期間中の観光客増加にとどまりません。
信州の未知なる魅力の発掘やまち歩きなど、地域が発信する旅の仕組みづくり、おもてなしの向上など、将来に向けて長野県観光を飛躍させる土台づくりと位置付けています。県外の方はもとより、長野県内の皆さんもこの機会にぜひ県内を広く回って、信州の魅力を体感していただきたいと願っています。


両角 良昭さんの横顔
休日は奥様と一緒に、志賀高原や白馬などでウォーキングを楽しむ。歩いて巡ると、普段気付かない魅力を発見するとか。

  




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