CCI

   2009年 11月号 No.736

一瞬の光にたくさんの人々が
笑顔になる…
夢のある仕事なんだって、
うれしくなります
千葉 いつかさん

信州煙火工業株式会社 煙火師
火薬類取扱保安責任者






 高校時代からのあこがれを胸に、迷うことなく煙火の世界に飛び込んで7年目。千葉いつかさんは、全国でも数少ない女性煙火師(花火師)のひとりとなり、製造や打ち上げの現場で活躍するに至っています。あでやかな煙火の輝きの裏方として、地味な作業の一つひとつにコツコツと真剣に打ち込む姿は、煙火に負けないくらい輝いています。


煙火の”作り手“にあこがれて

 千葉いつかさんが煙火師をめざしたきっかけは、テレビ画面に映し出された大曲(秋田県)の花火大会でした。夜空を埋め尽くす大輪の光の花は、高校生だった千葉さんを魅了します。花火を作る職人をはじめ裏方の姿はひとりとして映りませんでしたが、千葉さんは、そこに”作り手“の存在を強く感じ、仕事として意識したといいます。
 当時、千葉さんは高校卒業を間近に控えながら、目標が見つからず、進路を決めかねていました。が、その瞬間、まるで花火が夜空で咲くように煙火師になろうと決意。迷うことなく信州煙火工業の門を叩き、次の春を社員として迎えたのです。


常に真剣、常に慎重
危険と隣り合わせの毎日



▲完成した煙火の玉を並べ天日干しする様子は昔ながら。各玉には検印が押され、名称が手書きされています
  最初の1年は、煙火の玉に幾重にも紙を貼る「玉貼り」の作業をひたすら繰り返す日々でした。煙火製造の最終工程にあたるシンプルですが大事な作業です。その合間に先輩たちの仕事を見て製造や打ち上げの流れを知り、必要な資格や免許を取得しました。
 2年目からは先輩の指導の下、火薬の配合や「星」を玉に詰める方法など、本格的な作り手のわざを覚えます。見て、メモして、聞いて、実際に作業する、その繰り返しで、知識と感覚を身につけていきました。
 伝統的に”男の職場“という空気が漂う職人の世界。まして大量の火薬を扱い、危険と隣り合わせの緊張感に満ちた日々の仕事。自分が女性ゆえに先輩たちの足を引っ張ることがないよう、最初は「がんばろう」という思いばかりが空回りしていたと、千葉さんは当時を振り返ります。
 「でも、どんなにがんばっても体力や腕力などはおよびません。いつしか、できないことは素直にお願いし、自分にできることを精一杯やるようになっていました」。性別に関係なく、一人ひとりの思いや取り組みが仕事の結果につながることを、千葉さんはこの7年、身をもって実感してきたようです。
 「本当は煙火師と呼んでいただくのは恥ずかしいんです。技術面でも精神面でも、まだ遠くおよびません」とうつむく千葉さんですが、全国競技会での優勝など確かな実績もあげ、今や信州煙火工業を担う若手戦力のひとりとして貴重な存在です。


どんな小さな一発にも
精一杯の心をこめて



▲全国的な知名度が高まっている「長野えびす講煙火大会」。
晩秋の夜を鮮やかに彩る信州煙火工業のミュージックスターマイン
 「数発打ち上げるだけの小さなお祭りでも、一発一発の花火を大勢の人が見上げ、笑顔で喜んでくれます。いい仕事だなぁって、心から思います」と、微笑む千葉さん。玉の大小を問わず、またイベントの規模を問わず、手がける作業の一つひとつをていねいに、慢心なく、心を込めて取り組みたいと語る表情には、職人の気概がにじんでいました。
 今年も間もなく長野えびす講。彼女の花火が長野の夜空に舞う瞬間が近づいています。

企業名:信州煙火工業
連絡先:
本社/長野市問御所1302 
TEL 026(232)3782
工場/長野市茂菅338-3 
TEL 026(235)3479

長野県を代表する煙火メーカーのひとつとして、全国の花火大会やイベントなどで信頼に応える仕事を展開している信州煙火工業。千葉さんはその社員として、企画・製造から打ち上げまで、煙火のすべてに携わることができる存在。伝統ある地場の祭礼から国際的な大イベントまで活躍の場は年々広がり、昨年は山ノ内町で開催された全国煙火競技大会で、みごと優勝を果たしました。



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