2022年2月号

人きらっとひかる

自然の風景から着想を得て
色鉛筆の特性を生かした独自の表現を追究

 

美術家

津金 多朗さん

 

 今年1月から1年間、本誌の表紙を飾るイラストを担当する津金多朗さんは、茅野市在住の美術家です。原画の制作には色鉛筆が使われています。グランプリの受賞を受けて、今後は原画展も開催したいと、さらに夢はふくらみます。

画材としての色鉛筆の
可能性に着目

津金さんが愛用している「ホルベイン アーティスト色鉛筆」
 当会議所では、毎年「芸術家発掘コンテスト」を実施しています。このコンテストは、若手芸術家の育成、支援を通じて長野の文化向上に寄与すると同時に、彼らの芸術表現により長野のブランドイメージを発信し、観光振興につなげていく取り組みです。グランプリに選ばれた方には、1年間(12回)本誌の表紙を飾るイラストを担当していただきます。
 13回目を迎えた昨年、見事グランプリに輝いたのは、茅野市出身で美術家として活動する津金多朗さんです。多摩美術大学でやきものを素材とした造形表現を学んできた津金さんは、立体造形を中心に作品を発表してきており、絵画のような平面造形の作品の発表は決して多くはなかったそうです。
 今回コンテストに応募する際に挑戦したのは、あるきっかけで画材としての魅力を発見した「色鉛筆」での表現技法でした。2歳と4歳のお子さんを持つ津金さんは、お子さんと一緒に色鉛筆で絵遊びをするうちに、「色鉛筆で描く感覚は、どこか陶造形に似ている」と気づいたそうです。
 「色鉛筆は、顔料を画用紙にこすりつけて発色させます。その顔料の細かな粒子の表情は、やきものの素地のようで、それだけでも非常に魅力を感じます。また、使い方を工夫すると工芸の技法のような面白い効果が得られます。たとえば画用紙に白い色鉛筆を塗って、そこに違う色を重ね、そこを手でこすると、下から最初に塗った白色が浮かび上がってくる。腕を動かして手で塗る作業や発色の技法は、やきものを創るのにあまりに似ていて驚かされました。それまで私の中では、色鉛筆は油絵具のような画材に比べてインパクトが弱いという固定概念があったんですが、油絵具などにも負けない魅力的な画材だなと改めて考えるようになったのです」。

新たな発表の場を求めて

1月と2月の表紙を飾るイラスト。 12作品をまとめて展覧できる「原画展」も開催したいとのこと
 立体造形の感覚に似た色鉛筆に惹かれた津金さんは、新たな表現方法として色鉛筆を用いることに力を入れていきます。そんな時に目に留まったのが、「芸術家発掘コンテスト」の作品募集でした。
 新型コロナウイルスの影響で、予定されていた展覧会が思うように開けないなか、それに代わる発表の場を探していた矢先、このコンテストを知り、挑戦したいという意欲が湧いてきたといいます。本誌は、毎月5800部を発行しています。自分の描いた作品が毎月表紙を飾り、本誌を手に取る多く方々の目を楽しませられたらとの思いも強くなっていきました。
 応募した1月号の作品は、縁起の良い松がモチーフ。新しい一年の始まりにあたり、清々しく風に向かって立つ赤松を具象的なシルエットと抽象的な直線で表現しました。2月号の作品は、長野の山あいの風景から着想。冬枯れの寂しい雰囲気の中に太陽の光が差し込み、春の予感を感じさせる、気持ちが前向きになる作品です。色鉛筆を用い、具象的な表現と抽象的な表現を組み合わせることで、独自の表現を生み出しています。
 グランプリの受賞を聞いた時は、どうでしたかとお聞きすると、
 「自分にしかできない等身大の表現を追い求めて、今まで積み重ねてきたことが高く評価されたようで、感慨深いものがありました。今回応募した作品には、私の物事に対する価値観が色濃く反映されています。作品を通して、この価値観に共感してくれた人がいたことは、とても嬉しいことです」。

美術で胸ときめく日常

 この受賞を機に、「陶造形」と「絵画」の二本柱で取り組む意欲を新たにした津金さん。1年分の12作品が完成したあかつきには、原画展を開催したいと、さらなる夢がふくらみます。
 「美術品や絵画を鑑賞する、さらには購入するって、普段の生活の中ではなかなか馴染みのないことだと思います。でも、好きな映画を見たり、好みの音楽を探して聴いたりするのと同じような感覚で、美術にも触れてもらうと、きっともっと心弾む、新鮮なときめきのある日常が待っているのではないかと思います。作品づくりを通して、躍動する社会のギア(歯車)になりたいと思っています」。
 
制作内容 絵画、陶造形
E-mail tarotsugane@ezweb.ne.jp
URL https://www.n-bunka.jp/next/artist/entry/2571.php

1984年生まれ、茅野市出身。2008年、多摩美術大学美術学部工芸学科陶専攻卒業。2010年、多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程工芸専攻陶研究領域修了。2022年現在、茅野市在住。長野商工会議所主催の「第13回芸術家発掘コンテスト」(2021年10月に実施)でグランプリを受賞し、2022年1月~12月の1年間、本誌の表紙イラストを担当。
〔受賞歴〕瑞浪陶土フェスタグランプリ受賞


2022年2月号 CONTENTS

View Point
荻原 健司 長野市長
私のお店・私の会社
長谷川智徳税理士事務所/ロクシキ経営㈱
人きらっとひかる
津金 多朗さん 美術家
ページ: 1 2 3