2020年11月号

人きらっとひかる

長野をヘーゼルナッツの産地に
100年後の長野の農業を変える

 

株式会社 フル里農産加工 代表取締役社長

岡田 浩史さん

 

 チョコレートやクッキーなどのお菓子に加工されるヘーゼルナッツは、アーモンドやカシューナッツと並ぶ「世界三大ナッツ」のひとつ。このヘーゼルナッツを長野で栽培し、国内初の六次産業化に取り組んでいるのが、岡田浩史さんです。「100年後の長野の農業を変えたい」と挑戦を続ける岡田さんには、コロナ後のビジネスモデルとしても大きな期待がかけられています。

ヘーゼルナッツを
りんごに代わる特産品に

 取材でうかがった9月上旬。平日にもかかわらず、10時の開店とともに次から次とお客様が訪れ、その人気ぶりがありありと実感できます。長野市の古里地区にある生アイスの店「ふるフル」。外のベンチでは、ヘーゼルナッツの畑を見ながら、つくりたての生アイスを味わうことができます。
 「ヘーゼルナッツは、栗のように自然に落下した実を拾うだけなので、子供たちの収穫体験にもぴったりなんですよ。僕の小さな孫も喜んで手伝ってくれます」と説明してくれたのは、「ふるフル」を経営する岡田浩史さんです。
 岡田さんが、日本初の国産化と六次産業化を目指してヘーゼルナッツの試験栽培を始めたのは2013年のこと。一度も農業経験がない岡田さんが、なぜヘーゼルナッツの栽培に取り組むことになったのか。それには、前職の輸入商社時代に遭遇したイタリア・ピエモンテ州の風景がありました。

一度も冷凍しない
生アイスは鮮度が命

 
徹底して生にこだわる。日本で初めて〝生アイス〟というジャンルを確立したのも岡田さんだ

 輸入商社の営業マンとして、イタリアへ出張した岡田さんは、山あいの雪の中ですっくと立つヘーゼルナッツを見て、〝これは、長野の風景そのものだ。気候や風土が似ている長野でも、ヘーゼルナッツを栽培できるかもしれない〟と考えます。というのも、地球温暖化の影響で北海道でも高品質のりんごが栽培され始め、りんご生産地・長野に生まれ育った者として危機感を持っていたからでした。りんごに代わる新たな特産品としてヘーゼルナッツに可能性を見いだした岡田さんは、世界一おいしいといわれるピエモンテ州の「トンダ・ジェンティーレ・デッレ・ランゲ」の苗木を輸入。ただ栽培するだけでなく、お菓子などの加工品として付加価値を付けて販売できる六次産業化を推進していきます。
 最初に植えた100本の苗木は3年ほどしてだんだんに実を結び始め、年を追うごとに収穫量は倍増。ヘーゼルナッツは一次加工でペーストや粉末に、二次加工でチョコレートなどに製造されます。現在、主力商品は生アイスです。冷凍は一切せず、地方発送もしていません。ヘーゼルナッツはもちろん、使われる果物などの素材はできる限り古里地区で生産された農産物を使用しているそうです。

六次産業化のビジネスモデル

 現在、岡田さんの苗木を育てている方は185名。収穫できた実は、すべて㈱フル里農産加工で買い取っていきます。
 「この辺の農家さんはチャレンジ精神が旺盛で新しいものにも意欲的です。皆さんには、私のように生産だけでなく、ゆくゆくは加工や販売まで携わる六次産業化を目指していただきたいと思っています」。
 若者が希望を持って農業を志せるように、またコロナ禍の時代、新しい事業を模索している人のために、安定した収入を確保しビジネスモデルとして手本になりたいと語る岡田さん。農業だけでなく、加工・製造にともなう機械産業の掘り起こしや古里地区の観光振興など、ヘーゼルナッツを中心とした関連事業の新規展開にも着目しています。起業して掲げた社是は、“100年後の長野の農業を変える”。
 「今は、長野県というとりんごのイメージが強いですが、100年後にはヘーゼルナッツが信州の代名詞になっている。そんな姿を思い浮かべながら、仕事をしているんです」。
 岡田さんの描く未来には、信州の美しい山並みと寄り添うようにヘーゼルナッツ畑がどこまでも続く、緑豊かな風景が広がっています。
 

企  業  名 株式会社 フル里農産加工
創        立 2014年2月17日
業務内容 農産物加工・製造販売
所 在 地 長野市上駒沢920
定 休 日 火曜日(祝日の場合は営業、翌日休)
URL http://www.furusato-nagano.co.jp

長野市出身。アイスクリーム店やパン屋の勤務を経て、食品加工機械の輸入商社に転職。出張先のイタリア・ピエモンテ州で見たヘーゼルナッツ畑に長野での栽培の可能性を見いだし、脱サラしてヘーゼルナッツの栽培を始める。現在、生アイスの店「ふるフル」を運営。ヘーゼルナッツの栽培から加工まで六次産業化を指南するコンサルタント業も行っている。

 

 


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