2020年1月号

View Point

加藤 久雄(かとう ひさお)

長野市長

北村 正博(きたむら まさひろ)

長野商工会議所会頭

 

民も官も互いにやるべきことに努め、補い合い
力強い長野経済をつくっていく契機に

 昨年10月の台風19号による豪雨は長野市に大きな被害をもたらし、一刻も早い復旧復興を目指しています。一方で、2021年には善光寺御開帳が控えるなど、地域を盛り上げていくチャンスも我々は手にしています。
 年頭にあたり、長野に元気をもたらすための課題や方策について、加藤長野市長と北村当会議所会頭に対談いただきました。

 

企業の復興なくして
長野の復興なし

── お二人は昨年1年をどう振り返りますか。

加藤
 重要課題である人口減少、少子高齢化対策などの重点施策を進めてまいりましたが、台風19号による豪雨により昨年10月13日に甚大な被害が発生して以降は、被災地の復旧、被災者支援を第一に取り組んできました。昨年12月1日には復興局を設置し、災害に絶対負けず必ずここから立ち上がることを目標に、復興に向け全力を挙げて取り組んでいます。
北村
 元号が令和に変わり、明るい一年を迎えると思っていたところ、台風19号により千曲川が決壊し、市内で大きな被害が出ました。被災事業所を支援すべく、当会議所ではグループ補助金のための調査を行い、それを行政に上げていくことが大きな役割であると考えています。また、被災者の相談窓口をつくり、いろいろな方面からの相談を承ることで一刻も早い復興につなげていきます。
加藤
 企業が元気でなければ、長野市も元気になりません。今回は北部工業団地をはじめ、多くの企業が大きな被害を受けました。国の中小企業等グループ補助金という支援パッケージでは、被害を受けた中小企業がグループを作って復興事業計画を策定し、県の認定を受けた場合に、施設や設備の復旧費用に対する支援が受けられます。長野市では、多くの皆さまにできるだけ手厚い支援が行き渡るよう国や県へ要請するとともに、長野商工会議所とも連携して、この災害で事業を畳まれることがないように努めます。
北村
 私どもは事業所にとって一番身近な存在として、会員企業、非会員企業を問わず、被災されたすべての方の相談に乗ります。大変な状況にありますが、ぜひ元気を出してもらえるよう応援していきます。景気が下降線を辿っているところへ、追い打ちをかけるように今回の災害があり、企業の経営状況は余計悪くなっています。こんな時だからこそ、当会議所がやれること、やるべきことに力を尽くしていきます。

 

広域で連携して
地域経済の活性化を目指す

── 昨年はえびす講煙火大会も中止になりました。次回への想いをお聞かせください。

北村
  来年は過去にも勝る煙火大会として、たくさんの観客の皆さまにお越しいただけるよう魅力あるものにいたします。
加藤
 煙火大会の中止は、さまざまな事情の中でやむを得なかったと思います。ただ、すべてのイベントが中止になると、経済もマインドも一層冷えてしまいます。新年には意識を変え、災害からの復旧・復興をてこに経済を発展させる意気込みが欲しいです。例えば、長野市の復旧・復興を祈念して特別な花火を上げる試みも面白いかもしれません。表参道イルミネーションが開催されていますが、善光寺と一体化した形を再度考え、また長野灯明まつりも含め、一気に盛り上げられたら素晴らしいです。また、今後のえびす講も青年会議所をはじめ他の団体や周辺市町村と連携し、被災した千曲川沿いの地域全体を勢い付ける取り組みにすることも大事かなと考えています。
北村
 来災害から立ち上がり、今まで築き上げたものを取り戻すには相当のパワーが必要です。もし休業中に取引を失ってしまったら、営業を一からやり直し取り戻さなくてはいけません。その背中を押すのが当会議所の務めです。東日本大震災の折に当時当会議所の会頭だった加藤市長が、「被災地を応援することは大事だが、応援すべき側も自粛ばかりしていたら、日本全部が沈没してしまう」と警鐘を鳴らされました。今回は地元の災害ではありますが、市長のおっしゃるような盛り上げづくりを当会議所としても呼びかけていきます。
加藤
 一つの市町村で、できることは限られています。広く地域を見渡し、各々の場所の特徴や役割を確認しながら、地域全体の魅力を高め、総体として浮上する施策が大事だと思っています。
北村
 産業フェアin信州でも、新幹線沿線の商工会議所、中野市や飯山市など周辺自治体からもお力添えをいただく体制を整えていきました。2021年の善光寺御開帳に向けたキャラバンでも、長野市への誘客とともに、産業活性化へ向けた連携について、北陸地方や広く全国に訴えていくつもりです。
加藤
 産業フェアでの連携は好事例ですね。一方、市の産業界を見渡すと、近年IT企業の多さが目立ち、個々の企業でも長野商工会議所でも、今は子供たちへのプログラミング教育に力を入れています。
北村
 プログラミングコンテストは、須坂市、中野市からも問い合わせがあり、関心の高さが窺えます。こうした取り組みが広がれば、将来IT産業を担う人材の育成にもつながります。IT産業は立地するのに広大な土地が必要でなく、付加価値創造型の産業集積地をつくりやすいですし、起業資金も少なく済みます。これからの長野経済の発展にとって、きっと鍵となる産業でしょう。

 

善光寺と城山公園の一体感は
格好のPR材料

── 2021年の善光寺御開帳について、どんな取り組みをしていきますか。

加藤
 市では国や県とも連携して、ハード面の整備を進めてきました。県庁緑町線の道路整備とセントラルスクゥエアの広場整備は、令和2年春の供用開始を予定しています。また、交通渋滞緩和を図るための国道18号長野東バイパス、高田若槻線や北部幹線なども順次開通していきます。さらに信濃美術館のリニューアルに合わせ城山公園の整備も進んでおり、今回の善光寺御開帳では人の流れが変わると期待しています。
北村
 おっしゃるように城山公園周辺の一連の整備により、善光寺との距離感が縮まり一体感が増しています。善光寺へお参りした後、文化芸術に触れ合うプランは、今回の善光寺御開帳で格好のPR材料です。あとは、観光客が周遊するための案内の充実、前回好評だった回向柱のライトアップなど宿泊客増加を図る取り組みなどについて、善光寺さんとスクラムを組んでやっていきます。さらに、せっかく来ていただいたお客様にまた来たいという気持ちが湧き起こるようなおもてなしをすべく、関係業界団体にも協力を求めていきます。
加藤
 観光客の動きを考えたとき、長野駅と善光寺の真ん中にある権堂も重要な位置を占めます。さらに人が集まるような場所にするため、今後道路整備、電線類地中化などを進める用意もあります。
北村
 善光寺の参道も電柱が地中化されたことで景観が良くなりました。バスで訪れた観光客にも参道を歩いて参拝していただく取り組みもうまくいきました。加藤市長が先導された「日本一の門前町大縁日」も大いに盛り上がりました。今回も同様にできればありがたいと願っています。
加藤
 善光寺花回廊のハンギングバスケットは非常に評判が良かったので、今回もぜひ、街中を花で彩り、お客様を歓迎できたらいいですね。

 

今こそ地域コミュニティの
再構築を

── 長野商工会議所は今年120周年を迎えます。会頭はどんな思いでいらっしゃいますか。

北村
 創立記念日の5月 15日には記念式典を開催いたします。今日に至る先輩の皆さまの功績を称え感謝しながら、これから130周年、さらに150周年に向けて会員が結束する機会になればと思っています。
加藤
 企業数が減少傾向にあり、今後長野商工会議所が継続して存在意義を示すことは大変なことだと思います。例えば、近年、市内で活気を見せている空き家をリノベーションした個性的な店舗を営む若者や市外出身者のビジネスを支援しながら、既存商店街ともつながりを持たせ、この先空き店舗が生じた時には、スムーズに起業できる環境整備等も必要かと思います。
北村
 思えば昔は人と人との関係が密でした。お店同士の交流、お客さんとの交流も豊かだったから、商売が次へ次へとつながった側面もあります。企業は自分だけの力では何もできないことを改めて皆さまに知っていただきたいです。
加藤
 住民同士の関係も昔に比べて弱くなり、今回のような災害に遭った際、地域社会をどうやって守っていくかが大きな課題です。一方、今回の災害では、避難所で一緒に生活したことで住民の間に団結が生まれた場所もあります。こうした芽をうまく育てていけば、きっと新たな地域コミュニティを構築できます。
北村
 地域には昔のようにお節介をする人がいなくなりましたし、旅へ出たら隣近所にお土産を買っていく人も減りました。もう一度原点に返ってコミュニティを再構築すべきなのかもしれません。
加藤
 高齢化が進み、誰しも誰かに頼らなければ生きていけない時代に、人と人とのつながりを大事にした地域コミュニティを育て維持できれば、次の時代も明るくなってくると思うのです。
北村
 災害からの復旧作業では、ボランティアの活躍も目立ちました。市内外を問わず長野を愛する方が結構いらっしゃるのは心強いことでした。
加藤
 ボランティアの皆さんと我々が、今後どうつながっていくかも、長野の将来の発展にとって大切なテーマです。いろいろな人が関わることによって、まちへの愛着もより広い方々の間でさらに深まっていくのではないでしょうか。

 

長野の将来に向け
子どもをどう育てるか

── これまでお話に出なかったことで、お二人が今年力を入れていくことはございますか。

加藤
 中山間地域が市の面積の75%を占める長野市では、都市部との均衡ある発展のほか、山林の機能と景観の維持、鳥獣被害対策、新しい産業の創出といった課題があります。また、長野市の魅力を子どもたちに伝え、将来彼らに地域に残ってもらうための施策も引き続き行っていきます。
北村
 子どもに対しては、マナー教育の必要性も感じています。環境に対するマナー、感謝の気持ち、人をいたわる心、挨拶の習慣などは小さいうちに身に付けるべきです。それは今お話に出た、コミュニティの再構築にとっても欠かせないことです。
加藤
 大人でも自らの権利のみ主張し、すべて行政に頼ればいいと考える風潮があることを懸念しています。市は市民に寄り添い、企業に寄り添う姿勢を貫きますが、行政のやるべきこと、民間がやるべきことを互いが自覚して、ともに高めながら長野市を発展させられたら良いと考えます。
北村
 行政と民間の連携も、今お話にあったように、我々がやるべきことをしっかりやることが前提です。互いの役割についてしっかり情報交換し、ともに補い合いながら、力強い地域経済をつくっていけたらと思います。
加藤
 災害のつらい経験を、むしろ糧として長野市が一つにまとまるチャンスになればと思います。

 

加藤久雄氏プロフィール
 昭和17年、長野市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部卒業後、昭和42年に株式会社本久入社。平成21年6月株式会社本久ホールディングス代表取締役会長兼社長に就任。平成19年11月より長野商工会議所会頭、長野県商工会議所連合会会長を務め、平成25年11月、長野市長に就任。平成29年11月に再選を果たし、2期目を務める。趣味はゴルフ、健康。好きな言葉は、「ピンチはチャンス」「自分の力は友達の力」。
北村正博氏プロフィール
 昭和22年、長野市生まれ。長野工業高等学校電気科卒業後、市内電子メーカーを経て、昭和45年に長野ソフトウェアサービス株式会社を設立。昭和47年に社名を株式会社システムリース、平成2年に株式会社システックスとし現在に至る。平成25年11月より長野商工会議所会頭、長野県商工会議所連合会会長。
 今も昔も仕事が趣味で、「知恵のない者は汗をかけ」が信条。


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