2019年1月号

View Point

加藤 久雄(かとう ひさお)

長野市長

北村 正博(きたむら まさひろ)

長野商工会議所会頭

行政と経済界の連携を密にし、
 長期的広域的視点で地域の問題解決を

  少子高齢化や東京への一極集中は、人手不足、地域間格差の拡大などさまざまな課題を生み、その解決には、長期的広域的視点をもったアイデアと、官民を越えた連携、スピーディな施策や事業の実施が求められています。
 そこで、平成最後の年を迎えるにあたり、加藤長野市長と北村当会議所会頭にご対談いただきました。

 

時代に合わせた組織で
改革のスピードをアップ

── 加藤市長は、昨年1年を含め平成という時代をどう振り返りますか。

加藤
 平成は、私にとりまして長野商工会議所会頭に就任、また、長野市長に就任ということで、大きな時代でありました。一方、日本の社会は少子高齢化が一層進み、東京への一極集中が止まりません。所得格差や地域間格差も拡大しています。社会保障費の上昇、気候変動により多発する災害への対処など喫緊の課題が山積しています。
 長野市が置かれた状況を、私は「下りのエスカレーターに反対向きに乗っているようなものだ」と例えます。昨日と同じことを同じようにやっていれば、下がっていく一方です。アイデアを出し、スピードを上げて、課題解決に取り組まねばなりません。そこでまず私は、時代の変化に合わせた組織再編に取り組みました。具体的には、女性活躍社会に向けて子どもに関する相談を1箇所に集約したこども未来部、まちづくりや健康づくりをスポーツで盛り上げる文化スポーツ振興部などです。
 ほかにも、いのしか対策課、人口増推進課、マリッジサポート課など、時代の要請に合わせて組織を整えてきました。昨年は、縦割り行政に横串を入れるべく、市長公室を設け、各部の調整役を担わせています。
 9月には菅谷松本市長とお話しし、75歳以上を高齢者と呼ぼうと提言しました。高齢者の皆さんには、支えられる側に留まるのではなく、支える側としての意識を持っていただくように、元気なシニアにエールを送るのが目的です。
 高度成長期に整備し、すでに老朽化したインフラの改修についても、次代に先送りすべきでなく、今後思い切った計画を立てて断行するつもりです。
 今、各自治体が医療費や保育料を無料にするなど、都市間競争が非常に激しくなっています。しかし、隣り合う市町村で人口の奪い合いをしていても仕方ありません。活性化策を広く北信地域で考え、観光面も含めて地域全体の魅力を高めるべく、長野市は地域の長男役を務めていきたいと考えます

 

産業フェアでの広域連携と
地域人材育成で成果

── 北村会頭にとって、この1年はいかがでしたでしょうか。

北村
  当会議所の会頭職に就いて5年になりました。これまで先輩方が長野経済発展にご尽力いただき、今につながるいろいろな事業を遺してくださったことを大変ありがたく思います。一方、少子高齢化が加速し、その影響で事業承継が困難となり、規模を縮小したり商売を畳んだり、なかには倒産された企業もありました。当会議所の会員増強も一朝一夕にはまいりません。
 昨年は、事業の棚卸しをしました。例えば、40年以上続いたゴミゼロ運動をエコ活動推進運動に刷新しました。まず、ゴミを出さないことに意識を向けることが目的です。事業所でもペーパーレス化を進めるなど、企業におけるゴミ削減の方策も探ります。食品ロス問題については、加藤市長が会頭時代にはじめられ、今や全県での活動となった、30・ 10運動にもっと力を入れ、今後フードドライブの実施も視野に入れていきます。
 昨年は、当会議所が主催して2回目となる「産業フェアin信州」が開催されました。信州と銘打ったのは、より広域な産業交流、企業交流、人的交流を促し、長野を核に地域経済の発展を遂げたいとの想いからです。今回、中野、飯山、上越、富山、高岡にも輪が広がりました。今後さらに点を面に広げるよう、ビジネスマッチングの拡大、東信の皆さんとの合同開催も考えていきます。
 また、子どもたちの感性、思考力、想像力を醸成するため、長野市教育委員会にもご協力いただき、「U‐ 15長野プログラミングコンテスト」を実施しました。信州大学工学部や長野高専、長野工業高校の学生が先生役になり、子どもたちにプログラミングを教えたことで、双方が育つとても良い学びの機会となりました。来年度以降、より内容を充実させていきます。なお、善光寺東庭園のホタルの復活事業は、自然発生の兆しが見えず、開始10年をもって取りやめとしました。

 

県外在住の社会人の採用で
人手不足解消を

── 人口構造の変化は、人手不足にも大きく影響しています。どのような対策をお考えですか。

加藤
 まず、高齢者の雇用が非常に大切です。先ほどもお話ししたように、74歳までは生産年齢人口に入っていただきたい。また、女性が働きやすい環境づくりには、こども未来部等における取り組みのほか、各企業での環境整備も必要です。どちらも経済界のご協力をお願いしたいところです。
 県外の大学に進学した学生に地元で就職してもらうため、彼らに長野県の企業情報をもっと届ける施策も実施します。また、市では平成28年度採用から、民間企業等で3年以上の職務経験を有する県外在住の方を対象に職員の社会人採用を募集したところ、さまざまな職種から非常に優れた人材が集まってくれました。こうした人材に地元企業にも来ていただこうと、UJIターン就職促進事業「いいよね!おしごとながの」も進めます。今後鍵となるのは、ワークライフバランスの実現、待遇の充実など、地域企業のレベルアップです。
北村
 高齢者雇用や女性の働きやすい環境づくりは、産業界にとっても重要な課題です。一方、新卒採用について、長野市が市報を使い就職を控えた子どもの親御さんへUターンを呼びかけてくださることは、大変ありがたく思います。昨年暮れの企画には、我々も便乗させていただきました。また、社会人採用について、長野に来たいという優秀な人材がそれほど多いのでしたら、こちらも便乗させていただきたいと思います。
加藤
 中途採用をするとき、同じ地域の中で人材を集めることは容易ではありません。その点、首都圏には良い人材が多く、彼らは長野に移りたいと強く思っています。この需要にうまくマッチングさせれば、人手不足解消の一助になります。
北村
 そうですね。地域の企業同士や官民で、人材を取り合うのは愚かなことですから。
 ほかにも地域の明るい材料として、昨年長野県立大学ができ、清泉女学院大学看護学部も新設されます。また、川中島には長野保健医療大学もあります。信州大学や長野高専も含め、これらがうまく交流しながら、地域のなかで女性の力が盛り上がることを期待しています。

 

まちづくりと、
それを支えるひとづくり

── まちづくりやそのほかの課題についてはいかがですか。

北村
 中心市街地といえどもなかなか人が歩きません。昨年の暮れ、善光寺表参道イルミネーションがありましたが、こうしたイベントを商店の皆さんにはぜひ活かして欲しいのです。例えば、表参道のお店なら、買い物をしないお客さんでも気軽にお茶を飲んでいけるような、人が寄るところになればと思います。また、権堂の再開発が遅々として進まないことは残念に思いますが、その権堂でも週末にイベントをやっているのに、商売っ気がない店舗が目立ち、非常に残念です。やる気のある事業者さんには、当会議所も支援を惜しみません。
加藤
 その点、近年若い人たちが善光寺界隈に面白い店を出しています。彼らが長野の商店を変えていく可能性もあると思います。空き店舗問題も心配ですし、特に中央通りなどは空き店舗のままにせず、意欲的な人にお店を貸していただくことも大事だと思っています。
北村
 まちづくりのあり方も、人口減少時代に合わせてコンパクトシティを目指すべきかもしれません。また、買い物難民を出さないために、生鮮3品だけでも歩いて買える範囲でまかなえるよう、中山間地も市街地も、地域のお店は地域で守っていくことが望ましいと思います。
加藤
 まちづくりには、ひとづくりも欠かせません。先ほどプログラミングコンテストのお話が出ましたが、長野市では大規模な工場誘致が難しく、今後はIT産業の育成が大きな力になります。プログラミングコンテストは、将来に向けて大変意義がありました。
北村
 はい。小さいうちから教育に取り組むのは、これに限りません。えびす講煙火大会では毎年、歩道に捨てられたゴミの多さに情けない思いをします。人の迷惑になることはすべきでないと、子どもは家庭や学校で教えられているのでしょうか。童話や童謡を通して道徳を学び、感性を磨く機会も失われているような気がします。
加藤
 若者の結婚を促すためには、例えば子どもに赤ちゃんを抱っこさせ、命の重み、子どもを持つ喜びを知ってもらい、結婚観、家庭観を涵養することも大切です。また、将来地元に帰ってきてもらうためには、郷土愛を育む教育も必要です。すでに長野商工会議所ではNAGANO検定ジュニアを実施していますが、市でも小学校4年生を対象に長野を知ってもらうため、本市の歴史、生活文化、産業、自然などの情報を掲載したリーフレットを配っています。
北村
 NAGANO検定ジュニアに関しては、昨年、実際に現地を巡る親子ツアーを組み、バス2台を出すほどの盛況でした。今年もこの取り組みをもっと定着させていきます。

 

御開帳をはじめ、官民連携して
課題解決を図る

── 2021年は善光寺御開帳の年です。

北村
 当会議所では今年、善光寺に請願をいたします。
加藤
 市の事業も今、御開帳に向けていろいろな準備が進んでいます。前回「日本一の門前町大縁日」で賑わったセントラルスクゥエアは、オリンピックレガシーを活かしながら公園として整備します。また、県庁緑町線も御開帳までに完成することで、人の流れも変わってくると思います。
北村
 善光寺周辺も、長野県が信濃美術館を建て替え、市でも城山公園を再整備されますしね。
加藤
 あの一帯の回遊性を良くすると、信濃美術館にもっと多くの人が足を運びます。今後公園全体の魅力も増すでしょう。ほかには、国道18号の慢性的な渋滞を解消するため、長野東バイパスも御開帳までに開通するよう国に働きかけます。
 御開帳の成功に限らず、長野市も長野商工会議所も目標は同じです。長野市が均衡ある発展を遂げなければ、行政も企業も立ち行かなくなります。さまざまな課題について、ざっくばらんにお話しさせていただき、連携しながら解決の道を探っていきましょう。その際、長野市だけで物事を考えるのではなく、北信全体を見渡す大きな視点を持つことが大切ですね。北村会頭もアイデアがあったらどんどん言ってください。
北村
 はい。我々もお願いすべきことはお願いして、相互にうまく連携をとりながらやっていけたらと思います。加藤市長は、当会議所の会頭も市長も両方経験されていますから心強い限りです。

 

加藤久雄氏プロフィール
昭和17年、長野市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部卒業後、昭和42年に株式会社本久入社。平成21年6月株式会社本久ホールディングス代表取締役会長兼社長に就任。平成19年11月より長野商工会議所会頭、長野県商工会議所連合会会長を務め、平成25年11月、長野市長に就任。平成29年11月に再選を果たし、2期目を務める。
 趣味はゴルフ、健康。好きな言葉は、「ピンチはチャンス」「自分の力は友達の力」。
北村正博氏プロフィール
 昭和22年、長野市生まれ。長野工業高等学校電気科卒業後、市内電子メーカーを経て、昭和45年に長野ソフトウェアサービス株式会社を設立。昭和47年に社名を株式会社システムリース、平成2年に株式会社システックスとし現在に至る。平成25年11月より長野商工会議所会頭。平成26年には株式会社信州フードラボを設立。
 今も昔も仕事が趣味で、「知恵のない者は汗をかけ」が信条。


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