2017年10月号

人きらっとひかる

長野市近郊の中山間地は素材の宝庫
もちもち生地のクレープを召し上がれ!

西田 靖さん
信州 長野 クレープ移動販売 森のくまさん 代表

 最近、イベントやお祭りなどの会場でピンクのキッチンカーを見たことがありませんか? 西田靖さんが運営するクレープの移動販売車です。店名の「森のくまさん」そのままの雰囲気の西田さんがその場で焼き上げる生地で、地元素材を生かした具を包むクレープは、食感と味のよさが自慢。おいしさとともに楽しさも持ち帰ることができる店として人気を集めています。

住みたい場所でやりたい仕事を

 今年4月、長野市内の催事への出店を皮切りに営業をスタートしたクレープ移動販売店「森のくまさん」。オーナー西田靖さんは、鬼無里の地域おこし協力隊員の任務を3月に終え、長野市への定住を決めて、この事業を始めました。
 「50歳を過ぎたら好きな場所に住み、やりたい仕事をしよう」。夫婦でそう決めていた西田さんは、2014(平成26)年、2人そろって長野市の地域おこし協力隊員に採用されたのを機に、岐阜から鬼無里へ移住しました。鬼無里では6次産業化の推進に尽力。合同会社「裾花ていばん家」を立ち上げ、地域住民と共に味噌漬けなどの地場産品の製造販売と地域のアピールに取り組んできました。
 その経験を自身の創業に生かし、協力隊OBとなった後も合同会社をサポートしていこうと、当会議所が主催する「長野地域創業スクール」を受講。創業の考え方や経営実務などを学び、この事業に乗り出しました。「おやきの国でクレープに打って出るのは、正直、勇気の要ることでした。でも、クレープ生地は“魔法の紙”。何でも包める点に限りない可能性を感じたんです。だって鬼無里をはじめ長野市近郊の中山間地は豊かな素材の宝庫じゃないですか」。

あえて手間をかけ
独自性で勝負する

キッチンカーの中で焼き上げるクレープは、もちもちの食感が好評。味わいプラス楽しい思い出を持ち帰ってもらうことが西田さんの願い
 西田さんのクレープの最大の魅力は、驚くほどもちもちした食感です。生地粉に加える水にこだわり、卵、牛乳の配合や鉄板の温度をその日の気温や湿度に応じて加減し、絶妙の食感を生み出します。
 また、チョコバナナ、キャラメルバナナなどの定番具材に加え、長野市産のりんごのコンポート、信濃町のルバーブジャム、須坂産のいちごのコンポート、上田産の桑の実ジャムなど出店する地域限定のメニューも考案。オリジナリティの高い商品を販売して他との差別化を図りながら、出店する地域の産品のアピールになるよう意識しています。
 同じ催事に複数のキッチンカーが並ぶことも多い移動販売は、ともすれば価格勝負になりがちです。しかし西田さんは他にマネのできない商品の力で勝負し、過当競争に巻き込まれることなく独自のブランドを築きつつあります。個人事業ならではのフレキシブルさをフルに発揮し、出店の場やタイミング、客層に応じて値段やメニューを変え、訪れる人が「欲しい」と感じる商品の提供に努めているのです。
 そんな努力が功を奏し、出店場所は1年目から多彩な広がりを見せ、出店すれば完売する流れも確立しました。「人に喜んでもらうために自分に何ができるかを優先して考え取り組むことで、不思議にいいご縁が広がりました」と、笑顔を見せます。

県外への進出も視野に
マーケティングの機会を逃さずに

人気定番メニューの1つ、チョコバナナ
 キッチンカーのデザインやフレンドリーな店名、そして西田さん自身が「森のくまさん」を思わせる雰囲気を持っていることも、好調を後押ししています。クレープを食べたことがなくても車に関心を持って立ち寄ってくれる人、「本当にくまさんみたい〜」と大喜びする親子連れ、かわいらしいお店の様子をSNSで発信してくれる若者たち。西田さんは、そうしたお客様たちと積極的に言葉を交わし、「次に自分ができること」を模索します。「出店の1回1回、お客様と交わす言葉の1つ1つがマーケティングだと感じます」。
 そこで得た感触や分析を基に、西田さんは県外への進出も検討しています。「県外では“長野産”をより強く発信するつもりです。それが店の個性になると同時に、長野県内の中山間地の振興にも貢献できると思うんです」。地域おこし協力隊のOBの働き方の1つとしてビジネスモデルを確立することも目標の1つに、西田さんは進化を続けています。
 

組 織 名 森のくまさん
設  立 2017(平成29)年4月
業務内容 主に長野県産素材を材料とするクレープの移動販売を展開。長野市をはじめ長野県全域や長野県外のイベント、祭礼などに出店し、着々とファンを増やしている。
所 在 地 長野市川中島町936-28 TEL 080-3415-0121

1965(昭和40)年愛知県出身、岐阜県育ち。岐阜県出身の妻と2人、かねて計画していた「50歳を過ぎたら好きな場所でやりたいことを仕事に」を実行。長野市の地域おこし協力隊員に夫妻で採用されたのを機に2014(平成26)年鬼無里へ移住。鬼無里の人々と共に6次産業の事業化に成功。2015年度の創業スクール(長野商工会議所主催)で学び、協力隊の任期が終了した今年4月、「森のくまさん」の営業をスタートした。


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