2017年9月号

View Point

小山 紀雄(こやま のりお)

長野商工会議所食品商工業部会長
日穀製粉株式会社代表取締役社長

昭和29年小諸市生まれ。昭和51年日本大学文理学部卒業。昭和60年日穀製粉㈱入社。平成9年取締役就任。平成22年代表取締役社長就任。現在に至る。

長野の食品業界は自らの強みを
 首都圏など都会へ積極的に発信すべき
  長野商工会議所はその橋渡し役に

 今後も長野で食品業界が「活き」続けるには、都会にモノを売っていく必要があり、そのための情報発信が欠かせません。長野には優れた食品が多く、交通アクセスも便利で、長寿県であることも食品のイメージに味方します。個々の事業者は、安全・安心をはじめとする消費者の要望に確実に応えること、長野商工会議所は長野の業者と都会の消費者の橋渡し役になることが求められています。

都会で売るためもっと
長野の食品を発信すべき

── 小山社長は、長野商工会議所食品商工業部会長に就任されました。抱負をお聞かせください。

小山
 お叱りを受けますが、なかなか実感が湧かないというのが正直なところで、どこまでお役に立てるか自信がありませんが、職責を全うしたいと思います。
 ただ、当社も含め食品業界は今後も長野で「活きて」いかねばなりません。あえて「活」の字を使うのは、惰性で生き長らえるのではなく、活力をもって事業継続したいとの想いからです。そして「活きる」ためには、長野での食品の流通を活発にすることと併せて、人口が増えている首都圏など都会にモノを売っていくことが大事です。
 つまり、長野市内、長野県内に収まることなく、ここから外へ発信すべきです。少子高齢化が進む日本で総摂取カロリーは昔に比べ落ち、おいしくて身体にいいものを少量ずつ摂る傾向が強まっています。長野県には、農産物しかり麹由来の発酵食品しかり、全国トップレベルシェアをもつ良品が結構あるわけですから、昨今のこうした市場動向に対応できる食品加工業、販売業を強くしていくことが必要かと思います。

 

会議所は業界と消費者の
橋渡し役に

── 長野地域の食品商工業の大きな課題の1つは、外への発信力ということですか。

小山
 そうですね。地産地消も大事ですが、商品をここから都会へ出すことに活路を見出し、そのために効果的な発信をすることです。誤解を招くかもしれませんが、「住むのは長野、商売は東京」というのが我々が向き合うべき現実ではないでしょうか?人口が少ないところでどれだけ頑張ってみても今後事業は伸びません。
 当社の従業員もそうですが、長野で暮らすのが心地よいと分かっている人は多いです。ただし雇用を守り、その良さをこれからも享受してもらうには、長野市や県内だけの商売ではかなり厳しいです。だから東京へ発信して、東京へモノを売っていく必要があるわけです。
 たとえば農産物の話になりますが、100gあたり、1、000円から1、500円するプレミアム和牛が、県内でどれほど売れるでしょう。売るんだったら都会です。また高級食品に限らず、都会で売れる信州の食品はたくさんあります。
 交通アクセスも以前に比べて格段によくなりました。高速道路を使えば、首都圏へも新潟方面へも中京圏へも、何のストレスもなく出て行けます。しかも各目的地へ行くルートも1つだけでなく、状況により使い分けることさえ可能です。
 当会議所にできることとしたら、長野の食品業者と都会の買い手との橋渡し役です。たとえば、都会で長野の食品の展示会や商談会を企画することもその1つです。また、お客様側を長野にお呼びしてセミナーなどを開き、中央の情報を長野にもたらすことも考えられます。さらに、都会の消費者に長野県の食文化を知ってもらうための、いいきっかけになるかもしれません。資金などがネックになり個々の企業ではやりきれないことも、当会議所ならできると思うのです。

 

安全の確保、
簡便性や加工度への対応

── 一方で、個々の事業者にできることはありますか。

小山
 やっぱり今の消費者の要望に応えることでしょう。第一に安全・安心です。安心・安全ではないことに注意してください。我々が届けるべきは安全であり、その結果として消費者に安心を抱いてもらうのが本来の姿です。そのために、衛生管理、原材料の履歴管理を徹底し、消費期限は根拠を示し、その期限を遵守することです。これらを満たさないと、食品業者は商売の土俵に上がれません。
第二に簡便性への対応です。少量・小ロットであることもその要素で、使いやすい、食べきれる、調理しやすい、ゴミが出ないなどがポイントになります。カット野菜がよい例ですが、その普及には実は消毒技術の向上が背景にありました。こうした新しい技術を事業者へ紹介する役割については、当会議所にできるかもしれません。
 第三に加工度です。食品の簡便性については、家庭用のみならず業務用でも要望が高まっています。人手不足により厨房で働くスタッフの確保が難しい店舗で、たとえばシニアや調理経験の浅い人も積極的に雇用しようと考えた場合、加工度の高い食品がありがたがられるでしょう。そんなところにも、我々のチャンスがあるかもしれません。
 さらに、長野=長寿県というのは、食品業界にとって大きな発信ポイントです。先人たちが遺してくれたこのプレミアムを有効活用するには、今お話しした3点に留意し、伝統食品の上に今の消費者にも受け容れられるプラスαのおいしさなど、新しい価値を築けるかが問われます。

 

「夢を描いて、
夢をゲットしろ」

── 御社は地域のなかでどんな役割を果たしていきたいとお考えですか。もう1つ、会社経営のうえで大切にされていることは何ですか。

小山
 まず、先人がつくってくれた信州そばというブランドを全国に発信していきたいです。これまでお話ししてきた通り、目指すところは「地産他消」で、農業法人と契約して質の高い県内産そば粉の確保に努めています。また、小麦に関しては学校給食での利用を促進してもらうなど、地産地消に取り組んでいますし、米粉については小麦粉の置き換えではなく、素材に適した新商品の開発を進めています。
 こうして、伝統食品を礎にしながらあらゆる可能性にチャレンジし、夢ある新商品を開発することで、消費者の要望の多様化に応えることが、当社が目指すものの1つです。そしてもう1つ、家族のあり方や一家団らんの形が変化していくなかで、当社の商品を通じて家族の気持ちが通じ合うような食のシーンを提供することも日穀の務めであると考えます。
 もう1つの質問には、当社のフィロソフィー「夢・努力・そして感謝!」でお答えします。グループ全社員が「自己実現」のため「夢」を持ち、その実現に向け怠ることのない「努力」を続け、そしてまわりの人々によって活かされていることに「感謝」の心を持つこと、これを経営の基本に置いています。したがって、社員には常々「夢を描いてゲットしろ」と言っています。自分で掲げ自ら掴みとろうと努力する確固たる夢があるから、今年何をやるか定まります。今年1年の目標が定まれば、今日どうするか決まります。今取り組むべきことに本気になれるのです。
 ちなみに私の夢は、あと28年で創業100年となるこの会社が、確かに100周年を迎えることです。そのとき私自身はこの会社にいませんが、夢に向かって今できることに努めていきたいと思っています。

小山 紀雄さんの横顔
趣味は身体を動かすことと旅行。信州の高原地帯を夫婦で歩く。食べ歩きを兼ねて旅行も好き。夫婦で海外旅行に年に1〜2度出かける。座右の銘は、「小人閑居して不全を為す」


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