2014年10月号

 人きらっとひかる

「“びんずる”を踊りに長野へ帰ろう」
そんな祭り、そんな踊りを目指して

小池 輝光さん
長野市民踊舞踊連盟会長
日本舞踊 華村流 家元

 長野市で活動する民踊・舞踏団体の中心として、また日本舞踊の師匠として、和の伝統文化の普及、発展に尽 力する小池輝光さん。この夏の「びんずる踊り」振り付け改正に携わり、改めて地域の祭りとしての「長野びんずる」を見つめ直しました。楽しく、美しく、そ して真剣に踊る喜びを多くの人に伝えるため、舞踊家としての自らの修練にも余念がありません。

誰もが踊れて、安全で美しい「びんずる踊り」

▲お弟子さんに舞踊の稽古をつける小池さん。家元として、厳しくも親しみを感じさせる指導で、幅広い年代層のお弟子さんを導く
▲お弟子さんに舞踊の稽古をつける小池さん。家元として、厳しくも親しみを感じさせる指導で、幅広い年代層のお弟子さんを導く

 この夏、「長野びんずる祭り」のメーンをなす「びんずる踊り」は、20年ぶりに振り付けが改正され、新たな一歩を踏み出しました。
 その中心となって、新しい振り付けの考案や各連の指導にあたったのが、流派を越えて集まる長野市民踊舞踊連盟(民舞連)の皆さんです。会長の小池輝光さ んは、祭りぎりぎりまで各連の振り付け指導に飛び回るばかりか、当日も、生演奏のお囃子衆の横で状況を把握しながら、連全体のスムーズな運行をサポートす るという縦横無尽の大活躍でした。

 「びんずる踊り」の振り付けは、歌舞伎役者で舞踊家の十代目岩井半四郎氏の原案を、民舞連が再検討。44年の間に、時代に合わせながら微妙な改変を加 え、今に至っています。今回の改正のポイントは「回転しない」ことと、斜め前方へ道を横切りながら「ギザギザを描いて進行する」こと。参加者がぶつかった り、転んだりするリスクを回避すると同時に、連が滞りなく流れていくことに主眼を置きました。
 「びんずる祭りは、『阿波踊り』や『おわら風の盆』のように、踊りそのものが観光資源となるタイプの祭りではありません。参加して踊ることが祭りの楽しみです。高齢者も海外からのゲストも、誰もが楽しく安全に踊れて、しかも踊った達成感を得られるよう配慮したのです」

生演奏で踊るだいご味を実感しながら

▲生演奏に合わせ、華麗に踊りながら連が進んだ今年の長野びんずる祭り。「こういう踊りが見たかった」という声が聞かれた
▲生演奏に合わせ、華麗に踊りながら連が進んだ今年の長野びんずる祭り。「こういう踊りが見たかった」という声が聞かれた

びんずる祭りの踊り手は約1万3千人。これほど大規模な集団が、和楽器の生演奏で長時間にわたって踊り続ける祭りは、全国でも類をみないといわれます。連が滞りなく進んでいくよう、音と踊りがしっかりと合うように気を配るのも、小池さんの重要な役割です。
 祭りを前に、小池さんを筆頭に13名の指導者が140余りの連に出向き、振り付けと合わせ“音を聞きながら踊る”ことを指導。行く先々で、真剣に踊ろうとする皆さんの姿勢を頼もしく感じたといいます。
 「“びんずるを踊りに、夏は長野へ帰ろうよ”と、全国の長野出身者が帰省してくれるような祭りにしていきたいですね。そんな踊りを目指しています」

「満足」というゴールがない舞踊
一生の追究かもしれない

 小池さんは日本舞踊の流派の一つ華村流の宗家に生まれ育ち、現在、家元・華村信利として後進の指導にあたっています。
 中学から大学まで舞踊の稽古は欠かさなかったものの、決められた道を歩むことに抵抗を感じた小池さんは、卒業後、あえて舞踊から離れた職に就きました。 先代家元であったお母様が病に倒れ、家元を引き継ぐために改めて舞踊と向き合ったとき、踊りが大好きな自分自身と再会。多くのお弟子さんが熱心に稽古を続 ける姿にも感銘を受け、この道で生きていく決心がついたといいます。
 現在は、指導の合間に月2回、東京の師に教えを仰ぎ、修練を続けています。
 「映像などで自分の踊りを見ると反省ばかり。この世界には満足というゴールがありませんね。一生、追究し続けるものなのかもしれません」
 民踊・舞踊という伝統文化を生かした地域の振興と、自らの技術や表現力の向上に、小池さんは全力で取り組み続けます。

map 団体名:長野市民踊舞踊連盟
設  立:1967(昭和42)年
事業内容:長野市内で活動する約80の民踊・舞踊団体を、流派を越えてとりまとめ、伝統文化の継承と発展に貢献。会員300人以上を擁し、「長野びんずる祭り」「善光寺お盆縁日」など、さまざまなイベントで活動するとともに、日本各地に伝承される民踊の研究に努めている。
所在地:長野市若里1-27-28
TEL:026-228-3875(小池会長)
日本舞踊 華村流:
古典的な日本舞踊、民踊の継承に努めるとともに、歌謡曲や現代の曲で表現する新舞踊を指導。長野市を中心に北信各地で教室を展開。

長野市出身。舞踊家。祖母が開祖の「華村流」日本舞踊を中学生時代より学び、病院職員、舞台設営などの職業を経て、平成15(2003)年、先代(母)の 後を継いで家元に。100人の名取をはじめ多くの弟子の指導にあたる。平成22(2010)年より長野市民踊舞踊連盟の会長に就任。今年の「長野びんずる 祭り」では「正調踊り」の振り付けを20年ぶりに改正。参加連から出張講習の要請を受け、祭り直前まで指導にあたるとともに、当日、踊りの中心となって祭 りをサポートした。


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