伝えよう、信州の食 達人が語る郷土食の魅力 そば

戸隠そば商組合長 Togakushi Soba Noodle Promotion Board, President/戸隠そば祭り実行委員長 Togakushi Soba Noodle Festival Committee, Chairperson /横川幸喜さん(仁王門屋)Kohki Yokokawa (Ni-oh-mon-ya)

修験者を支えたそば

和食出身のご主人、横川さんが考案するそばを使った料理はどれも表現力豊かだ
和食出身のご主人、横川さんが
考案するそばを使った料理は
どれも表現力豊かだ

 戸隠の地はかつて「戸隠三千坊(「坊」とは修行者の宿泊施設)」といわれるほど山岳信仰で隆盛を極め、多くの修験者が集まりました。五穀断ちして修行に励む修験者を支えたのは、火を使わずに水で練って食べられたそばでした。戸隠とそばは、古くから特別のかかわりあいを持ってきました。その歴史があるからこそ、私自身も仁王門屋の二代目としてしっかり伝え継がなくてはという思いで毎日そばを打っています。

戸隠ならではの「ぼっち盛り」

 特産の根曲がり竹で編んだ丸ざるに、馬蹄型に5つ(6つの場合もある)に盛り分ける「ぼっち盛り」が戸隠そばの大きな特徴です。そばは、戸隠の天然水できゅっと締めてから水を切らずに盛り付けます。そうすることでみずみずしく引き締まったそばが味わえるんですよ。もうひとつ意外と知られていないことですが、戸隠そばのざるそばには海苔をかけないのも特徴です。
 

バードラインの開通で進んだ観光化

 私が生まれた翌年(昭和38年)に長野市から戸隠へと続くバードラインが開通しました。それに続いて戸隠スキー場もオープンしたことで観光客も増えていったようです。昭和40年ごろ、仁王門屋は母とその友人などで始めましたが、当時そば屋として店を出していたのは数軒でした。今のようにそば屋が多くなったのは、昭和45年以降で、今では30軒ほどのそば屋があります。
 

そば打ちスタイルの変化

昭和40年代の仁王門屋の様子。かつては座ったままそば打ちをしていた
昭和40年代の仁王門屋の様子。
かつては座ったままそば打ちをしていた
 母が店を始めたころは、そば打ちは正座をして行っていました。家族の分だけ打つそばであればこのスタイルでも良かったのでしょうが、店として多くの人に食べてもらうようになると、この座るスタイルは腕や腰などに負担が多くかかります。そんなある日、そば打ちしていた床をくり抜いて、床を台にして立ってそば打ちをするようになりました。確かではありませんが、戸隠エリアで立ってそば打ちを始めたのは仁王門屋が最初だったように記憶しています。
 

全国初のそばソフトクリーム

戸隠そば祭りの新そば献納祭。毎年全国から多くの人が訪れる
戸隠そば祭りの新そば献納祭。
毎年全国から多くの人が訪れる
 店を継いでから、伝統を大切にしながらも何か新しい事をしていきたいと常に考えてきました。そこで15年前に友人が経営していたジェラート店に協力してもらって、全国初となる「そばソフトクリーム」を始めました。以来好評で、そばソフトクリームだけ購入する人もいるほどです。また戸隠そば商組合が中心となって毎年秋に開催する「戸隠そば祭り」で、今年度の実行委員長も務めています。全国各地から戸隠そばファンがたくさん訪れるのですが、その人たちに伝統的な面を知ってもらいつつ、楽しんで美味しいそばを食べてもらうために何をしようかと、今から試行錯誤しています。
 

戸隠そば商組合

現在は20軒以上のそば屋、宿、製粉会社が加盟する組合で、毎年秋に行われる戸隠そば祭りを主催している。
戸隠そば商組合HP  http://www.asahi-net.or.jp/~hk2h-imi/sobasyou/sobasyou.html
 

Togakushi and Soba noodles have an inseparable historical bond. Togakushi, situated in Northwestern Nagano city, used to be very popular for those who worship the mountain and also a Mecca for Shu-gen-ja or buddhist priests who trained themselves by enduring ascetic practices by not eating any grain. Soba played a very significant role to support them nutritiously because it didn't need heat to cook. Just water and kneading would do.
What's so different between Togakushi soba noodle and others? Well, it's our specialty, called "Botchi-mori", to put soba noodles on a bamboo woven plate in bite-size chunks like a horseshoe shape. It's woven with a local bamboo called Ne-magarida-ke, which literally means a bamboo with twisted roots. Its fresh and elastic texture can only be made from the natural water of Togakushi.
It was the day after Mr. Yukiyoshi Yokokawa, the owner of "Ni-oh-mon-ya" Togakushi soba restaurant, was born in 1963 that a new motorway called the "Bird Line" was built between Nagano city and Togakushi. Then, a ski resort opened so that more and more tourists could visit Togakushi throughout the year. In the mid-60s, his mother and her friends opened "Ni-oh-mon-ya", but there were few soba restaurants.
Every autumn, Mr. Yokokawa plays an important role in the "Togakushi Soba Noodle Festival Committee" as the chairperson. He's anticipating loads of Togakushi soba lovers this year also. His challenge will be what moves he should make for visitors to enjoy eating soba as well as its tradition and history.

伝えよう、信州の食 インタビュー

 
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