伝えよう、信州の食 達人が語る郷土食の魅力 ひんのべ

長野市信里地域の伝統料理を伝える女性 Ladies who have been sharing and preserving recipes of the traditional foods in Nobusato area,Nagano city 酒井ゆき子さん 小池豊子さん 酒井勝子さん(元直売所たんぽぽ勤務)Yukiko Sakai,Toyoko Koike,Katsuko Sakai(Former employees Chokubai-jo TANPOPO farmers market)

お母さん達が住む信里地域の話

松代あんず狩り
自分たちで栽培した野菜が、ひんのべ、

漬け物、おから、煮物などさまざまな料理となる

 長野市篠ノ井にある信里地域は中心市街地からは約30分ほどの場所にあり、りんご畑などが多いのどかな場所です。「私たちが若いころ、信里はみな農家で会社員として働いている人なんてほとんどいなかったねぇ」。
 そう話すのは、昨年まで信里地域の農産物と加工品を販売する直売所「たんぽぽ」に勤めていた小池豊子さん、酒井勝子さん、酒井ゆき子さんの3人です。かつてこの地域の人たちは農業で生計を立てていました。桑、たばこ、米、麦、野菜など何でも栽培できたといい、食卓には米も主食としてあがっていました。それでも米は貴重な収入源として販売にあてられることが多く、小麦など粉もの料理が日常的に食べられていました。
 

生地をひっぱって延ばすからひんのべ

あんずジャム
加工体験
「ひんのべ」は適当な大きさにちぎって

野菜たっぷりの鍋に放り込むだけ。

作り方は簡単だ

 冬に登場回数が増える郷土食が「ひんのべ」です。すいとんとほぼ同じで、すいとんが生地をやわらかめにしてスプーンで入れるのに対し、ひんのべは生地を薄くひっぱって延ばしてから入れます。そうすることで、よりつるっとした食感が楽しめ、味も染み込みやすくなります。大根、長ネギなどその時ある食材を食べやすい大きさに切り、鍋に入れていきます。「野菜はまだ必要かい?」とひとりが確認すると、「なから(大体)でいいから」と信州の方言が飛び交ううちに鍋が煮え始めました。それに合わせて用意した生地を薄く延ばしては鍋に放り込みます。「作業はこれだけ。簡単でしょ?」。
定年関係なく元気に働く
 3人は、農家もしつつ直売所「たんぽぽ」に勤めていました。忙しい毎日ではありましたが、自分たちが栽培した野菜をおいしいといわれることが励みになったといいます。昨年「たんぽぽ」は大根収穫と大根漬け体験を行いました。のどかな信里の自然は、都会では味わえない気持ち良さだと好評でした。
 

料理を作ることで家族の絆を深める

加工体験
左から、直売所「たんぽぽ」小池峰子社長、

酒井勝子さん、小池豊子さん、酒井ゆき子さん

 「うちは冬になると保存している野菜でひんのべはよく作るね。野菜がたっぷりで栄養バランスも良いし、とにかく体が温まる」と話す豊子さん。一方、勝子さんは「昔は豆腐屋さんに自分ちで作った大豆を預けて豆腐を作ってもらったんだけど、何キロ出したかによって引換券をもらって、それと豆腐を交換したの。その時に出たおからはよく食卓に並んだねぇ」。やり取りを聞いていたゆき子さんは、「春に収穫した山菜や竹の子を水煮にして保管しておけば、秋冬の煮物に使えたりさ。昔は今のように豊富に食材なんてなかったから、限られた食材をいかに上手に調理するかよく考えたもんだよ」。
 今では「郷土食」と呼ばれる料理も、彼女たちには当たり前の家庭料理。自ら栽培した野菜をいかに美味しく調理するか工夫をしていった結果、ひんのべや煮物、おからなど地域を反映した食べ物が生まれてきました。彼女たちの郷土食の話には家族の団らんの風景が見えてきます。家族を思うお母さんの愛情がたっぷりつまった料理が郷土食なのかもしれません。
 

長野市地産地消推進協議会直売所「たんぽぽ」

長野市篠ノ井山布施8831-19
TEL:026-229-2948

It takes about 30 minutes to come to Nobusato area, where you can enjoy peaceful rural scenery full of apple orchards. "When we were young, we were all farmers and we had no one who was working for a company in Nobusato".
Toyoko Koike, Katsuko Sakai, and Yukiko Sakai who are former employees of Chokubai-jo TANPOPO farmers market. People around this area farmed to make their living. They grew mulberries, tobacco, rice, wheat, vegetables and more.
This is a popular soup, especially in winter, called "Hin-no-be". We put thin and oval pieces of dough, which is made of wheat flour powder and pressed with the bottom of a spoon. Chop Japanese daikon radish, Japanese leeks and any vegetables of the season into a size of your choice and put them into a pot. "Need more vegetable?" One woman asked. "Nakara (It's almost good, an okay level)," another answered in the Nagano dialect. As they fostered their dialogue, the pot started to boil. They put the prepared pieces of dough into the pot. "That's it. Easy, huh?" The first woman said.
"I usually cook hin-no-be soup by using vegetables stored at home almost every winter. It becomes nutritiously balanced if you put inlots of vegetables, as well as it keeps your body warm." Toyoko-san said.
Now we call them local foods, but for them it's just their daily cooking at home. They created dishes such as, Hin-no-be and stew style dishes and okara tofu byproduct, by thinking about how they can use their garden-fresh vegetables most efficiently in their cooking and how they can make each dish as delicious as possible.These local foods must be full of a mother's love in care of her family.

伝えよう、信州の食 インタビュー

 
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