2020年6月号

View Point

大田 吉宝(おおた よしとみ)

長野商工会議所技能サービス部会長
大宝労務安全研究所所長

1969年、国立長野高専機械工学科卒業。1988年、大宝労務安全研究所・大宝ビジネスサービス㈲を設立、社会保険労務士・行政書士・労働安全コンサルタントの業務を行う。長野県社会保険労務士会 北信支部長・県会副会長 歴任。

 

高度化し、複雑化するニーズを敏感に捉え
 部会員間の連携を強化しながら
  クライアント企業の発展に寄与します

 技能サービス部会では本年度の事業として、改正民法の要点を解説するセミナー、社会保険労務士による無料相談会、長野商工会議所だよりを通じての部会員のPRなどを計画しています。士業等専門家に求められるニーズが、より高度化、複雑化する中で、そのニーズを敏感に捉え、クライアント企業の発展に寄与してまいります。

この部会に属した意義を
感じてもらえる事業を

── 長野商工会議所技能サービス部会長に就任されての抱負をお聞かせください。

大田
 技能サービス部会は当会議所にあって一種独特な存在です。他の部会は工業なり建設業なり特定業種の皆さまの集まりですが、当部会の会員は、国家資格またはそれに準じた資格を有する皆さまで、たとえば弁護士、社労士、税理士、DPO(データ保護オフィサー)、学校法人や医療法人の方などが、おのおの広範囲で活躍しています。しかも、近年の部会員数増加が示すように、新しい専門職が次々と生まれています。部会として皆で一つの方針を出し、これに取り組むことは難しい部分がありますが、せっかく商工会議所の会員となり、この部会に属されているわけですから、部会員であることの意義を感じていただけるよう努めます。
 本年度は、次の3つを柱に事業に取り組みます。まず部会員である専門職が講師を務めるセミナーをいくつか予定しています。特に本年4月には120年ぶりとなる改正民法が施行されましたので、改正の主要事項について当部会員の弁護士が講師として皆さまに説明いたします。他にも、さまざまな分野で講師としてお話しいただける専門家が当部会に所属しています。昨年度は、働き方改革の要点と進め方および税法の改正点などについてのセミナーを開催しました。その時々のニーズに従い、ノウハウ豊富な専門家が会員の皆さまに役立つ情報を提供します。
 2つ目に、この会報誌の「専門家あれこれ知識」のコーナーで、当部会員を積極的にPRしていきます。長野市には事業展開が多岐にわたる専門家が大勢いることを広く知っていただき、「今困っているこのことは、この人に聞いてみたら良いかもしれない」など、このコーナーが会員企業の皆さまと私たちの接点になればと願っています。
 もう一つ、長野県社会保険労務士会北信支部の皆さまにお願いして、会員事業所向けの無料相談会を月に一度実施しています。働き方改革が始まり、労働条件が多種多様に変化している今、事業主の皆さまにはお困りのことも多いかと思います。ぜひお気軽にご活用ください。

部会員の連携を強化し、
ニーズの変化に対応

── いわゆる士業に対して、敷居の高さを感じている方がいるとお感じになりませんか。

大田
 敷居が高いというより、士業に携わる人に何を相談すべきか、実のところ判断が付かない方が多いのではないかと思います。士業に限らず当部会員はおのおのに専門を持ち、社会の中で果たすべき役割について認識しているつもりです。ただ、世の中のニーズは刻々と変化しています。我々としてはその変化を敏感に捉え、皆さまに何を提供できるのか問い続けることで、クライアント企業の発展、地域経済の発展に寄与すべきです。
 ニーズの変化について具体例を挙げてお話しすると、10年ほど前まで社労士に求められていたのは、会社の社会保険や労働保険などを取り扱う事務代行でした。今はこうした業務をPCソフトで行う企業が増え、昨今はそれよりも人事制度や労働問題に関する指導を求める声が高まっています。以前はごく狭い範囲で自分の専門業種を把握していれば良かったのですが、今はその専門性がより高まると同時に、カバーすべき範囲も広くなっている気がします。頂点が高く裾野が広い、ちょうど富士山のような業務形態が要求されています。これは社労士に限らず、どんな士業でも同じです。
 ですから、部会員は各自のクライアントのニーズの把握と、それに合致した業務の提供に努めるとともに、より高度化し、かつ複雑化するニーズに最適な専門職があたれるよう、部会員同士の連携を強めていくことも必要でしょう。そのことがひいては、部会員の業務拡大や資質向上にもつながると感じています。

働き方改革の本質は
日本の労働生産性向上

── 現在の長野経済や中小企業の状況について、どうご覧になっていますか。

大田
 昨年の台風19号、そして新型コロナウイルス感染症の拡大により、休業に追い込まれている業種もあります。国も雇用調整助成金、持続化給付金などで支援を進め、融資も昔に比べて容易に受けられるようになっていますが、現状を補いきれていません。今最も気がかりなことは、経済活動が落ち込んだ状態がこのまま2〜3ヶ月続くと、特定業種に限らず、長野だけでなく日本経済全体が停滞してしまうことです。
 長野市に所在する事業所数は昔に比べ減少し、少子高齢化で働く人の数が少なくなっている状況を見ても、この先従来と同じ形で事業展開をしていくことは難しいでしょう。経営の外部環境が思わしくない今だから、事業展開の仕方をがらりと変えていくことが求められていると思います。非常事態を理由に導入されているテレワークや、事業のAI化も、今後通常の業務形態として定着していけば、仕事の効率・付加価値を高め、労働生産性を向上させることにもつながります。
 働き方改革では、日本経済を維持すべく高齢者や女性、外国人など多様な人材を適性に応じて積極的に採用せよ、と言われますが、その本質は日本の労働生産性を高めることです。とかく重視されがちな労働時間の短縮も、あくまで労働生産性を高めた結果なのです。労働生産性を高めるには、まず雇用主も労働者も、労働時間に比例して売上が大きくなり賃金も上がる、という意識を変えなくてはなりません。高度経済成長期のように、労働生産人口の増加に支えられて経済がのび広がる時代ではありません。経営者は、いかに効率よく仕事を動かし、付加価値を高め、その分配として従業員に給料を支給することを考える。従業員は、自分が会社に提供した付加価値の大きさで自分がもらうべき賃金を測る。
 つまり給料とは労働付加価値の分配ですが、その分配にあたっては、公正で的確な人事評価制度も必要でしょう。年功序列の賃金体系を大きく変えることは労使双方に怖さがあり、会社の規模や業態、あるいはひとつの社内でも職種の違いなどから、付加価値への貢献度を測るのは簡単ではありません。一時に仕組みを変えてしまうことは難しくても、少しずつ意識を変えることはできます。それぞれの会社の業務の実態などを踏まえ、あるべき評価制度、賃金制度に移行すべきと考えます。
 特に中小企業は人の力に頼るところが大きいため、今後業績を伸ばすためには、従業員一人ひとりの能力を最大限発揮できる環境整備、組織づくりが欠かせません。我々技能サービス部会としても、各企業が何に取り組むことで、従業員のやりがいを引き出し、労働生産性を高めることができるか、クライアントごと具体的かつ適切な支援をしていくことに努めてまいります。お悩みのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

大田 吉宝さんの横顔
小川村の生家があった場所に改めて庭をしつらえ、週に一度は赴いて木々の手入れや花の世話に勤しむ。


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