2020年4月号

人きらっとひかる

共助、共生で地域住民とつくる
新しい長沼に期待してください

 

長野市長沼地区住民自治協議会
長沼地区復興対策企画委員会 委員長

柳見澤 宏さん

 

 今も記憶に新しい令和元年台風19号により、長野市は長沼地区を中心に甚大な被害に見舞われました。現在、復旧復興に向けて陣頭指揮を執るのが、「長沼地区住民自治協議会」の会長であり、災害を機に新たに設置された「長沼地区復興対策企画委員会」委員長の柳見澤宏さんです。地区コミュニティの維持が懸念されるなか、柳見澤さんが心強く感じたのは、地域住民の共助の精神、そして復興に向けて立ち向かう若者や商店主らの地元へ寄せる思いでした。

(※記事は、今年2月の取材に基づいています)

地域住民の人口流出にともなう
コミュニティの危機を乗り越え

会議では、さまざまな意見が噴出。長沼地区の将来を真剣に考える姿勢はみんな同じだ。復興対策企画委員会は、国や県、市などと協働して住民のおもいを実現していく。
 2019年10月12日から13日にかけて起きた、令和元年台風19号。浸水被害が出た長野市の6地区のうち、千曲川堤防の決壊により、長沼地区は大半の住宅が全半壊。その被害は想像を絶するものでした。赤沼地区に暮らす柳見澤さんも、被災された1人です。自宅1階は土砂に埋まり、絶望感を感じる情景でした。特に、堤防決壊による激流が直撃した穂保・津野地区は、まるで津波に襲われた後のようで、東日本大震災を思い出したといいます。
 長沼地区は、大町地区、穂保地区、津野地区、赤沼地区の4地区の集合体です。被災前の人口は2318人でしたが、仮設住宅への転居や2月から始まった公費解体等で、状況はどんどん変化しています。
 「一番懸念したことは、隣近所の仲間がいなくなるという不安とともに、地域コミュニティの崩壊でした」と、奔走された当時のことを振り返ります。それが杞憂だったことを知るのは、被災後に行われた2回の住民集会でした。
 「4地区それぞれに被害状況が違うものですから、どれだけの人が集まってくれるのか心配でした。でも、2回とも約400人もの方が参加してくれて。地区がバラバラになるのではなく、1つのまとまりとして考えていただいているのがありがたかったです」。

堤防道路に災害の
シンボルとなる施設を

 住民集会では、国や県、市の行政に、堤防の決壊の原因の究明や強化を要望しました。また今後は、かねてから地元住民が要請していた堤防道路の県道化とともにアップルライン(国道18号線)と堤防道路を結ぶ7m道路の整備も求めていくそうです。
 被災によって離れた住民の方々に、また長沼で暮らしたいと思ってもらうためには、安心・安全な暮らしづくりが第一です。さらに、委員会としては、長沼の新しい魅力を創出し、地区外からの移住者を増やそうとも考えています。そのきっかけとなったのは、新潟県三条市の防災ステーションへの視察でした。三条防災ステーションは、2度の洪水被害にあった三条市に造られた交流拠点施設で、災害学習の場として活用されるほか、エリア一帯は市民が気軽に利用できる交流広場となっています。
 「新しく造成された堤防道路に、道の駅のような商業・休憩施設を組み合わせた複合防災ステーションを造れればと考えています。そういった施設を活用して、長沼地区の活性化を図っていきたい」と、長沼の将来を見据えています。

商売を継続することこそ
地域への貢献

 今回、災害ボランティアの活動が地元住民の大きな支えとなりました。昨年11月の3連休には、1日2000人以上のボランティアが住宅やりんご畑に堆積した泥の撤去や片付けを手伝ってくれました。その時の活動が、地元にどれだけの希望と勇気を与えてくれたかわからない、と思われます。また、SNSで発信して援助を募るなど、若者が真剣に長沼のことを考え、自主的に行動してくれたことも心強く嬉しかったそうです。
 地域の方々にとって毎日の暮らしと同じように、今まであるのが当然だと思っていたのが、各商店の存在でした。
 「あの頃、飲食店や会社が立ち並んでいたアップルラインは、道路照明灯以外の灯が消えていました。でも2週間もすると、まず最初にコンビニエンスストアが再開してくれたんです。その時に、商いを継続すること自体が、地域にとっての宝物なんだと改めて感じました」。
 一店舗の灯りが地域を照らす灯りとなり、それが継続することでまちが明るく活性化する。新しい長沼地区の第一歩となるはずです。
 
組  織  名 長野市長沼地区住民自治協議会 長沼地区復興対策企画委員会
創        立 2009(平成21)年3月
業務内容 「自助、共助、公助」の補完性の原理をもとに、市と協働しながら地域の特性を生かしたまちづくりを進めるための住民主体の自治組織。
所  在  地 長野市大字穂保941番地 TEL 026-296-9712(長沼支所内)

1951年、長野市生まれ。福島大学卒業後、長野県内の小中学校の教員、三陽中学校・西部中学校の校長、長野県教育委員会学校教育係長、長野県スポーツ課派遣指導主事などを経て現職。(公財)日本中体連の評議員、NPO法人長野スポーツコミュニティクラブ東北の理事長も務め、子どもたちに最後までやり通すことの大切さを教えている。

 

 


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