2017年7月号

View Point

小川 亮夫(おがわ あきお)

長野商工会議所工業振興委員長
株式会社TOSYS代表取締役社長
川中島建設株式会社代表取締役社長

昭和27年生まれ。信州大学工学部精密工学科卒業。昭和51年 日本電信電話公社入社(現 日本電信電話株式会社)、平成15年 東日本電信電話株式会社 設備部 エンジニアリングセンタ所長、平成23年 日本コムシス株式会社 取締役専務執行役員NTT事業本部長、平成25年 株式会社TOSYS 代表取締役社長、現在に至る。

会員企業の皆さんの技術や製品を
  新たな付加価値につなげる
    交流やマッチングの場を提供します

 グローバル化の進展、技術の進歩により、付加価値の高い新たな製品やサービスが次々生まれようとしています。この流れを長野地域の製造業の皆さんが掴むための支援として、工業振興委員会では今年、産業フェアin信州の開催、UFO長野ものづくりサロンの活性化、先進企業の視察などを通して、業種の枠を越えた交流や、マッチングの場を提供していきます。

工業振興に向けた
今年度の3つのテーマ

── 小川社長は、長野商工会議所工業振興委員長に就任されました。抱負をお聞かせください。

小川
 長野商工会議所にお世話になって3年目の私が、こんな大役を仰せつかるとは思ってもおらず、今回のことはまさに晴天の霹靂でした。これまで当委員会の副委員長を務めていたとはいえ、名ばかりでしたし、他にふさわしい方々がいらっしゃいますので、ただただ驚くばかりです。何ができるか分かりませんが、一生懸命やってみるつもりです。
 委員長としての初仕事は、昨年のえびす講煙火大会になりました。当日は寒風吹きすさぶ非常に寒い一日、翌日は降雪と厳しい天候の下、準備から後片づけまで、委員会の皆様、商工会議所職員のご尽力、協賛いただいた皆様・各企業の皆様、そして足を運んでくださったお客様のご協力により、無事に開催できたことに感謝申し上げます。
 えびす講煙火大会は、非常に伝統のある花火大会でありますし、初冬の花火は全国でも珍しく、県内外をはじめ外国の方にもお越しいただいています。今年は112回目を迎えるわけですが、昨年までと同様、協賛企業の皆様をはじめ、多くの方々のご協力をいただきながら、回を重ねるごとに盛大になっていけばと思います。

 

高齢者向けビジネスの
モデルづくりが課題

── 長野地域の商業について、どんな点に課題があると思われますか。

小川
 製造業を取り巻く環境は、技術の進歩により大きく変化しています。後ほど詳しくお話ししますが、こうした環境変化に伴い、ここ長野地域でもさまざまな課題が生じています。長野商工会議所では、北村会頭、伊藤副会頭が地域経済・産業について、非常に高い見識をお持ちですので、地域の工業振興に向けても、お二人の方針をしっかり理解したうえで、着実に実現することが私の務めと考えています。
 具体的なテーマとして、まず 10月の「産業フェアin信州」があります。同フェアは昨年まで長野法人会が中心となり開催し、参加企業も中身も充実してきました。今回より当会議所が主体となりますが、これまでご尽力いただいた法人会はじめ各団体、行政の協力を得て、何としても成功させます。
 たとえば、昨年まで善光寺平に限っていた参加企業を北信エリア全体に拡大し、さらに北陸新幹線延伸を好機として、北陸の企業とも交流できるイベントに発展させます。また、参加企業が手がける技術や製品の紹介にとどまらず、より付加価値の高い製品やサービスを創り出すための企業マッチングの場にすることを意識します。もう1つ、住民や学生にも参加いただくことで、地域の産業に対する関心を高め、地元への就職にもつながるようなイベントにできたらと考えます。
 2つ目のテーマは、UFO長野ものづくりサロンの活性化です。産学官交流の場であるこのサロンは、工業振興委員会が世話人を務め、12年続いてきました。急激に進む技術進歩のなか、長野地域に多い部品や素材を手がける中小・中堅企業が、自社の枠を越えて新しい価値を生み出すため、同サロンの役割はますます重要になります。この機能を活用して、同業種ばかりか異業種間の交流を促進させたいですし、産業誘致や起業が活発になるような環境づくりを進めます。
 3つ目は、会員の要望も多い企業視察を充実させることです。普段はオープンにされない先端技術に関する部分も、商工会議所の立場でお願いすると、視察に協力いただけることがあります。長野地域や北信の先進企業の視察に加え、北陸エリアの企業へも伺う予定で、今年度は富山の企業にお願いをしています。北村会頭も北陸地方の商工会議所と連携を深めていますし、先ほどお話しした産業フェアにも北陸の企業のご参加をいただくなど、交流の機運が高まるなか、積極的に足を運び、ただ見学するだけでなく、しっかり意見交換もしていきたいと考えています。

 

新しい価値を生む
マッチングの場が必要

── 長野地域の工業について、どんな点に課題があると思われますか。

小川
 まず地域の課題という以前に、製造業自体が変化しています。グローバル化で世界が相対的に狭くなり、市場にアクセスしやすくなりました。また、IoT、AI、ロボットなどがどんどん進化して、世の中をもっと便利で豊かにするための新たな製品、サービス、産業が生まれる可能性が芽生えています。ただこうした流れや可能性はよく分かるものの、大企業ならともかく地方の中小・中堅が、どんな技術を身につけるべきか、あるいは自分たちが既に持っている技術をどう生かすべきか、皆さん思い悩んでいるようです。
 長野地域には、部品や素材など要素技術に優れた企業がたくさんあります。一方で、自分たちの技術や製品を業種の枠を越えてオープンにし、新しい価値を生み出すマーケティング活動へは、なかなか手が回らないのではないでしょうか。だからこそマッチングの場が必要になってくるのです。
 また、少子高齢化や就労人口の減少が進む今、個々の企業にとっては、人手不足、担い手の確保も大きな課題です。
製造業に夢を持って働いてくれる人をどうやったら招き入れられるか、今盛んに言われている働き方改革にどう取り組むか、こうした問題を乗り越えていくことも課題として挙げられます。
 この地域は、自然環境も含め働く環境としては優れており、もっと魅力あるエリアになれる可能性を持っています。そのために当会議所としてできる支援が、先ほどお話しした産業フェアや、ものづくりサロン、企業間交流といった事業です。新ビジネスや新サービスの創出、企業誘致・起業の盛り上げ、就業支援、働き方改革、女性参画をはじめとするダイバーシティー促進といったさまざまな課題があるなか、当委員会で取り組む事業の他にも、当会議所の各部会で取り組む活動もありますし、県や市にも積極的な支援策があります。今後個々のプロジェクトをもっと有機的にネットワークさせることで、企業の皆さんにとってそれぞれの取り組みがより有益になると信じます。

 

我々の仕事は、
人と人の命をつなぐこと

── TOSYSさんは、通信インフラの建設というとても重要な仕事に携わっています。御社の地域における役割についてどうお考えですか。

小川
 当社は、情報通信エンジニアリングの総合会社として、NTTはじめ情報通信事業者が提供するインフラの建設、保守、運用に携わっています。事業の基本は、個々のお客様にご満足していただける電気通信設備や情報通信システムを、人と技術の高度な融合によってトータルにご提供することです。そのため、光ファイバーケーブルの敷設、無線基地局の建設、エネルギー供給のための電気設備、通信土木など、電気通信のあらゆる専門分野を有し、また情報通信の分野では業務用ソフト開発を含め、ネットワークシステムの企画から設計、施工まで全体をサポートしています。
 社員は屋外での作業が多く、厳しい気象条件のなかで、あるいは災害時など一刻も早い復旧が求められる状況で仕事をしています。だから会社では常々、「我々の仕事は、単なる1本の線をつなぐことを超えて、人と人の命をつなぐことにあると思って仕事をしてくれ」と話しています。
 近年の通信技術の高度化は目覚ましく、銅線が光ケーブルに変わり、あるいはモバイル通信も当たり前になり、やりとりできる情報量も圧倒的に増加して、情報通信を利用した新しいサービスが次々生まれています。社会のあらゆる機能が、情報通信を基盤に動く時代となり、私たちの身の回りと世界は大きく様変わりしました。今後、IoTが進めばこの状況はなおさら顕著になるでしょう。裏返せば、万一通信が麻痺してしまったら、社会の機能も企業の生産活動も停滞を招くことになります。私たちの役割は一層重要になっていると認識し、これからも地域の皆様に安心・安全に使っていただける通信環境の整備に努めていきます。

小川 亮夫さんの横顔
趣味はスポーツ観戦と映画鑑賞。スポーツ観戦では社会人野球日本選手権出場を目指す信越硬式野球クラブ(TOSYSからも3名が所属)の応援に熱が入る。


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