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2011年9月号 No.758 |
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環境の変化に対し、しっかりレスポンスし、
失敗を糧とし実践知を積重ねていった先に
新しいビジネスモデルがある。
バブル崩壊後、失われた10年はすでに20年になり、経済は閉塞感に包まれています。もはや20世紀の成長モデルが通用しなくなった今、日本は新しい先進国モデルを描くべきで、個々のビジネスに目を向ければ、時代環境の変化に合った事業モデルを構築すべきです。しかし、そのモデルは、誰かが用意してくれるわけではありません。発想を変え、自ら行動を変え、小さな工夫を日々積重ねていく先にあると思います。
新しい経済モデルが
描けない日本
― 中村副頭取は、先の総会で副会頭に選出されました。地域の産業振興・観光振興について、思うところをお聞かせください。
中村 副会頭としては日も浅く、個々の事業活動についてまだいろいろ申し上げる立場にはございませんが申し上げられるのは、地域における役割は、商工会議所も、私ども銀行も同じだということです。いちばんの目的は、地域社会の発展に寄与すること、地域を元気にすることです。そのために、ビジネスマッチング、経営相談・指導等の活動をしていることは両者とも変わりません。
強いて相違点を挙げれば、こうした事業を銀行は金融機能を通じて行う点と、銀行は健全経営が求められる私企業であるということ、一方、商工会議所は連携や提言を通じ行政との関わりが密な点でしょう。
さて、日本経済とりわけ地域経済に元気がないと言われて久しく、事業者は皆あがいています。一番の理由は、21世紀にふさわしい新しい経済モデルが構築できないでいることにあります。大量生産・大量消費を前提とした20世紀型の経済成長モデルは限界に来ているにも関わらず、新しい経済モデルを我々が描けないでいることが、すべての要因だと考えます。
私たちに、もう昔のような時代は来ません。なのに過去の成功体験にすがって、途上国モデルで挽回しようとしても何ら問題の解決にはならず、ただジリ貧を待つだけです。個々の経営においても同じです。商売の仕方を変え、時代環境の変化に合った事業モデルを構築しなくてはなりません。そして商工会議所や銀行はそれをサポートするのが務めだと思います。
みんなが発想を変え、新しい価値観をもつことが求められています。たとえば企業の成長や元気さを計るにも売上高や営業利益のみでなく、顧客の精神的な充足度、環境や人に対するやさしさ度等を示す物差しも要るでしょう。ネットワーク社会の進化にともない、商売におけるコミュニケーションももっと工夫を凝らさねばなりません。
自ら問い、工夫し、
努力を継続すること
― 新しいモデルづくりのために、個々の事業主や商工会議所ができることは何でしょうか?
中村 仕事柄各地の商工会議所の活動を見てきました。手前味噌になりますが、長野商工会議所は、かなりいろいろな施策を考え実施しています。ですが、やはり地域全体が輝くには、個々が光らなければならないと思います。一人ひとりの事業者が社会の変化に対応し、自らの商売の仕方を変える、自らその一歩を踏み出すことです。そうしてその変わる努力をサポートするのが商工会議所の役割です。実際、長野には小粒でもキラリと光る特徴ある企業が最近増えています。こうしたところを、もっともっとPRすることも必要でしょう。
もちろん、商工会議所においても意識改革は必要です。グローバリゼーション・国際分業化が進み、長野にいても海外との関係抜きに商売が成り立たない時代です。製造業は規模・業種を問わず、企業活動の戦略を地球規模で練り、適地生産・適地販売を実践しています。内需産業といえども国際的視点が求められます。長野市というエリアの中だけで考えても、成功の最適解は導けないでしょう。たとえばビジネスマッチングの視野も、もっと広げなくてはならないでしょう。
英国の歴史学者アーノルド・トインビーは、その著『歴史の研究』で、社会が衰退していくときに共通して現れる現象として、@国民の心にエゴイズムが生じる、A国民が自立心を失う、B指導者が大衆迎合を始める、C大人が若者の指導を怠る、D幸せを「金」や「物」の量だけで計ると分析(残念ながら今の日本はぴったり)したうえで、「歴史は、チャレンジ・アンド・レスポンスによってつくられる」と書いています。環境の変化に対し、しっかりレスポンスし、チャレンジできる組織は進化し発展するというのです。他人が変わるのを待つのでなく、我々一人ひとりが自分の行動を変えていかなくてはなりません。
閉塞感の強い日本ですが、北海道旭川の旭山動物園、霞ヶ浦の「アサザプロジェクト」、徳島県勝浦郡上勝町の「つまものビジネス」など好事例はあります。彼らはなぜ成功したのでしょうか。自らのビジネスの本来の目的を徹底して追求し、目的を実現するためにあらゆる手段を考え、ときに失敗しても徹底してやり抜いたからだと思います。こうして仮説、検証、修正を繰り返し、実践知を重ねていった先に成功があったと思います。新しいビジネスモデルとは、誰かが用意してくれるものではなく、一人一人が、ちょっとした工夫を毎日繰り返し、失敗を糧とし実践知を積重ねていった先に、手にすることができるものです。
「知的体育会系」の人材が
増える組織に
― 一企業の役員として、ご自身が属する組織に何を求めますか。
中村 今日の話の繰り返しになりますが、まず職員一人ひとりが、自分の頭で考え、変革にチャレンジしていく、そんな集団でありたい。評論家は要りません。求められるのは、一にも二にも実行力です。
そして、やるべきことを愚直にやり続けること、当たり前のことを当たり前にやり通すことができる組織です。成功する企業とうまくいかない企業の差も、実はそこにあると思います。どんな業種であっても、うまくいっているところは、何事も徹底し、しかもやり続けています。
次にお客様が何を望んでいるかを常に掴もうと努力するそんな職員を育てることです。
現場での実践を重視し、経験を積み上げて知恵・ノウハウを蓄積する、そしてそれを組織内で共有・展開できるよう概念化し、さらに現場で新たな経験を積んでいく、そんな「知的体育会系」の人材が一人でも二人でも増えていくことです。
普段から私は、「窮すれば通ず」という言葉を大切にしています。どんなに困っても、考え抜けば必ず打開策はあるものです。また、どんな道を選んでも、行く手には壁が立ちはだかるでしょう。しかし、眼の前の壁を自らの力で乗り越えるところに人間としての成長があります。乗り越えた壁の数だけ、人間は大きくなります。世に一流と言われる人は、そうして黙々と壁を乗り越えてきた人たちではないでしょうか。
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