CCI

   2011年6月号 No.755




竹村 國彦
株式会社竹村製作所代表取締役社長

長野商工会議所常議員、工業部会部会長

昭和26年長野市生まれ。早稲田大学理工学部卒後、昭和51年丸一鋼販株式会社入社。昭和54年株式会社竹村製作所入社、製造部に所属。昭和59年同社社長室室長、昭和62年取締役副社長、平成元年代表取締役社長に就任、現在に至る。役職は他に、社団法人発明協会幹事、社団法人長野法人会常任理事 など。
  

  


工業界の持続的発展に向けて
人づくりを着実に進めながら
成長産業へチャレンジします


 急激な円高や、加速するグローバル競争に加え、東日本大震災の影響もあり、長野市の工業界は厳しい状況にあります。長野商工会議所の工業部会では、長野市のものづくり振興のため、さまざまな事業を計画していますが、持続的な発展を図るには、ものづくりの基本である人材育成をきちんとして、環境や農業など成長分野に向けて付加価値の高い製品を送り出すことが鍵になってきます。今回は長野市の工業界について工業部会の竹村國彦部会長にお話をお聞きします。

被災地の商工会議所と連携して
企業支援を


― 長野市の工業界には現在どのような課題がありますか。

竹村 商工会議所の工業部会に所属している皆さんは、規模も業種も実に幅広く、経営環境が異なれば、各々が抱えている課題も違ってきます。ただ、我々のような中小零細企業は、グローバル化する競争や急激な円高により、基本的に厳しい状況にあるということは言えます。
 また、世界同時不況から日本経済が回復の兆しを見せかけた折、東日本大震災に見舞われたことは、何より東北地方の製造業にたいへん大きなダメージを与えましたし、長野市の工業界にとっても少なからぬ影響がありました。自分たちのお客様は被災地になくとも、東北地方から部品が調達できないために、お客様が稼働率を下げたことで、結果として受注減になったという声も聞きます。不凍栓・水抜栓等を扱う当社にとっても東北地方はとても大きな市場です。お客様の多くが今回の地震・津波で被害を受け、また営業活動も当初かなり制限されました。
 被災された皆様には、心よりお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復興を願うばかりです。震災を機に、国内でのものづくりのリスクを回避し、あるいは被災地の復興を待てずに、ものづくりの拠点がますます海外に出て、新たなサプライチェーンが構築されてしまったら、我々を取り巻く環境はさらに厳しくなるでしょう。
 つまり、東北地方に早急に立ち直っていただくことが、長野市も含め日本の工業界全体の業績回復につながるのです。個人として義援金を出すことは、それ自体とても意義あることです。あわせて、被災地企業の立て直しを図ることに大きな意味があります。義援金に加えて、就業が叶い、この先家族を支えていく目途が立てば、被災地の皆さんは大いに勇気づきます。地域で雇用を確保することで、人は地元へとどまり、復興も早く実現するはずです。
 そこで重要になってくるのが、商工会議所の役割です。そもそも
商工会議所とは、その地域に商工業があって初めて成り立つものです。企業の復興に積極的に取り組むことは、商工会議所の当然の務めでしょう。被災地の商工会議所と長野商工会議所が連携すれば、個人や個々の企業ではできない支援も可能です。そうして、東北の商工業が復興することで、巡り巡って長野市の商工業も盛り上げることになると私は思います。

環境、医療・介護、農業など
成長分野にチャレンジ


― 工業部会では今年度どんな活動を計画されていますか。

竹村 企業の新規参入や事業強化のための研究・交流・情報提供・人材育成を進めながら、長野市のものづくり産業の振興を図っていきます。
 たとえば、長野市やその周辺の市町村・関係機関と交流しながら、広域的な業界発展に努めるよう、業界の課題や要望等の意見を集約し、必要に応じて行政等へ具申していきます。
 長野市ものづくり支援センター(UFO)は、我々中小零細企業にとって非常に頼りになる存在です。講演会・情報交換会等を通じて、大学の研究成果を企業経営のヒントにしたり、他企業との交流により取引向上を図ったりなど、有意義に活用させていただいています。
 今後成長が見込まれる産業分野については、工業振興委員会と協力しながら、調査・研究・視察研修等を実施していきます。さらに、長野法人会主催の産業フェアin善光寺平2011への協力、商工会議所ホームページを活用した情報発信も積極的にしていきます。
 とりわけ、
成長産業にいかにチャレンジしていくか、人材育成にどう取り組んでいくかは、我々が共有すべき大きなテーマです。
 まず、成長産業へのチャレンジについてお話しします。
環境、医療・介護、農業といった、いわゆるライフ・イノベーション分野を狙って、中小零細企業の工業技術を活かし、付加価値の高い製品づくりを推進します。将来、長野ブランドを世界に発信することになればすばらしいですね。現段階で、最も参入しやすいのは環境分野でしょう。社会の関心も高く、市場の規模も今後ますます大きくなるはずです。
 農業も可能性に満ちた面白い分野です。設備化も含め、製造業が農業に寄与できる部分は大きいはずです。当社でも試験的に工場でイチゴ栽培をしていますが、このチャレンジも、私どもが不凍栓総合メーカーとして、バルブに関する技術、水を扱う技術に長年携わってきた延長線上にあります。
 当社では「使う人の身になって」を社是とし、創業以来、寒冷地の水と人々の暮らしを見つめてきました。お客様との間にどうやって信頼を築いていくかに知恵を絞り、そのための技術を磨き、お客様の立場に立った製品をつくり、提供し続けること、それが当社の使命です。そのことはまた、我々が農業に携わる場合でも同じだと思うのです。
 そして、
ものづくりで培った技術・ノウハウ、経営の手法を農業に持ち込むことで、国内外の市場で高く評価されるような農作物づくりができるのではないでしょうか。今後、農業と工業の垣根はどんどんなくなり、両者の交流が盛んになると私は予想しています。
 なお、医療分野については、薬事法、承認審査など規制もあり、簡単には参入できないかもしれませんが、チャンスをつかむための勉強はしていくべきでしょう。


ものづくりの発展は、
ひとづくりから


― 成長産業へのチャレンジとともに、大きなテーマとして挙げられたのが人材育成でした。

竹村 やはり、
ものづくりは、人をつくらなければ何も始まりません。どんなに機械が優れていても、どんなに情報化を進めても、あるいは先進的な経営を実践しても、最終的には人が決め手です。たとえば、ミクロン単位の加工が可能な機械を導入したとします。しかし、設備投資だけでたちまちミクロンオーダーの製品ができるわけではありません。機械をスムーズに扱うことのできる人間がいて、初めて要求される精度が実現できます。ものづくりを続けるためには、人材を育成し続けることです。今ある技術・技能をきちんと伝承し、新しい商品づくりのための人を育ててこそ、工業の発展があります。
 もちろん、人材育成は、個々の企業の力だけではやりきれないこともありますので、UFOにおける交流や勉強の場を積極的に活用し、また長野市や県工業総合センター、信州大学、長野高専との間でも、人材育成を主要課題として連携していきます。先ほど触れたライフ・イノベーションの分野で、長野ブランドを発信できるような人材を育てる、新たな教育機関や仕組みづくりができたらと期待しています。


竹村 國彦さんの横顔
趣味は読書。ジャンルに関係なく月に5〜10冊読むとか。「電子書籍が普及しても、紙媒体が持っている力を私は信じています」と一言。

  




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