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2011年3月号 No.752 |
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商工会議所に加入する利点を
有効に活用しながら、
地域と企業がともに発展する事業を
今、食品業界を取り巻く環境には、貿易自由化や食料自給率、表示問題などさまざまの課題があります。長野商工会議所の食品商工業部会では、これらの調査・研究とともに、関係機関への提言活動などを実施していきます。そして、地産地消の推進など、地域全体の活性化にも、関係企業の業績向上にもつながる事業のモデルを、私たちは大切に育てていきたいと考えています。
TPPと食料自給率問題に
強い関心
―― 柄木田社長は昨年の9月に食品商工業部会長に就任されました。食品業界には現在どのような課題がありますか。また、食品商工業部会は、今後どんな活動をされていくのでしょうか。
柄木田 顕在化している課題のなかで、私がとりわけ重要だと考えるのは、TPP(環太平洋経済連携協定)問題、食料自給率問題、食品の表示問題の3つです。これらについて、部会員の間で現状の具体的な問題点を把握し、意識を共有したうえで、必要に応じて関係機関に意見・要望活動を実施していくとともに、講演会やセミナー、勉強会を実施し、部会員に加えて消費者の皆さんとも情報交換を図っていきたいと思います。
まずTPPについてですが、これは自由化レベルが非常に高い包括的な貿易協定で、物品の関税は例外なく10年以内に100%撤廃するのが原則です。アジア太平洋地域の新たな経済統合の枠組みとなる可能性もあり、政府は参加する方針ですが、国内農林水産業への影響を懸念して、強い反対の声も上がっています。
食の安全・安心については、我々の業界は大きな責任を負っており、食料自給率を向上させ、また地域の農業を守るためにも、TPPには非常に強い関心を持っています。もちろん業界として意見・要望活動を行っていきますが、商工会議所に食品商工業部会があることで、私たちは業界の枠を超えてこの地域の経済界に発言の場を与えられ、さらに商工会議所の名で効果的に行政へ提言ができます。その意義はたいへん大きなものです。
次に食料自給率についてです。日本の自給率は、カロリーベースで40%と、他の先進国に比べてたいへん低い状況です。さらにTPPに参加して関税が撤廃されれば、その数字は13%程度にまで下がるとも言われています。
大きな影響を受ける作物の一つに小麦があります。現在、国の助成に支えられ、国内で80万トン(自給率13%程度)、県内でも約8、000トンの生産があるものの、完全自由化となれば、もはや小麦を作る人はいないでしょう。
安く輸入できることは、消費者にとってメリットです。一方、食のグローバル化・均一化の大きな波に、黙っていたら埋もれてしまう個性ある作物、生産者の顔が見える安全・安心な作物を守っていくことも大切です。農家の皆さんが丹精込めたそうした作物を、消費者の皆さんへ確かに届けることに、我々のような中小の業者の存在意義があります。その自負をもって、現状と課題を正確に把握・分析していきたいと思います。TPP参加についても、この国のあるべき姿を見据え、慎重かつ丹念な議論が必要ではないでしょうか。
表示問題は、
勉強会・セミナーを有効に活用
― もう1つの課題は表示問題でした。
柄木田 はい。賞味期限や消費期限、また原材料、割合などについて、消費者の皆さんと我々業者との間で、認識にずれがあるように思います。
たとえば、ここに賞味期限が1年で、製造から1ヵ月経過している食品があるとします。期限まで11ヵ月を残していますが、その商品を卸業者が買ってくれないケースがあります。古いものはよくないとの消費者の皆さんのお考えが、流通に反映しているものと思われます。期限内の商品ですから、召し上がっていただいて問題ないのに売れないのです。こうした状況は、消費者の皆さんにとっても、我々業者にとっても不幸なことです。そして経済にもムダを生んでいます。
原因の1つに、表示の基準に関する国の説明が分かりにくいこと、さらに、我々自身も勉強不足な部分があり、業界のなかでも考え方に違いが出てしまっていることが挙げられます。
ですから食品商工業部会では、講演会やセミナー、勉強会などを通じて、部会員が学習し、情報を共有するとともに、主婦の方々をはじめ消費者の皆さんにも、広く参加いただける場も設けて、安全・安心な食生活に向けて、互いに意見交換できたらと考えています。
先ほども申し上げましたが、商工会議所にこうした専門部会があって、勉強会などを実施できることはとても意義深いことです。同業者であるという理由で普段は見学できない会社の生産現場にも、会議所の活動として行うことで、実際に足を運んで勉強させていただくこともできます。こうした事業を通して、地元にある成功事例を共有していくことが、地域の経済全体を盛り上げていく契機となると思います。非常に喜ばしいことではないでしょうか。
地域にもいい、
会社にもいい事業を
― 柄木田社長のお話は、今後この地域で地産地消をどう推進していくかにも大きく関わってくると思います。
柄木田 その通りです。現在当社では、更埴の農家の皆さんに県農業試験場が開発した小麦「ユメセイキ」を栽培していただき、これを買取り、石臼で製粉して販売しています。ユメセイキは、でんぷん成分のアミロースが他の小麦より少ないのですが、代わりにもち性のでんぷん比率が高く、もちもちつるつるした食感が特徴です。うどんにするとたいへんおいしいため、ご当地うどん「信州の夢うどん」の名で扱う店舗も増えてきました。また、更埴地域のほかに、長野市ではユメセイキの栽培に助成金が出るようになり、徐々に作付も広がっています。
とはいえ県全体の収穫量も1、000トン前後ですから、まだ十分な量ではありません。パン用粉についても、北海道産品種の長野県への導入が始まったものの、思うように面積が広がりません。農家の皆さんは、十分な助成がないとなかなか栽培に踏み切れないというのが実情なのです。
しかし、地産地消が進むことは、農家の皆さんをはじめ地域の活性化にもなるし、我々食品業界にとってもありがたいことです。食はさまざまな地域産業に、よい効果を生むサイクルを創り出す可能性を持っています。ユメセイキはまだ小さなモデルですが、今後商工会議所の活動のなかでも、部会員の間で情報交換をしながら、また新たなモデルの芽を育てていきたいものです。当社のような中小企業は、「地域のお役に立てて、会社にもいい」そんな事業を継続していくことに、活路を見出していくべきではないでしょうか。
私は父が急死した後を受けて当社の代表者となりました。企業のトップに就いて初めて、父の苦労、親の恩を知りました。同時に、自分は人に生かされている存在だと気づかされました。自分の力だけでやってきたものなどないのです。
この地域があるから、地域にすばらしい仲間がいるから、今の自分たちがあるわけです。経営者はそのことを忘れてはならないと、私自身肝に銘じ、当社の社是「和進」の精神をこれからも大切にしていきます。
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