CCI

   2010年 9月号 No.746

インターナショナルな人気の秘訣は
古きよき和の味わいと“自然体”

清水 翔太郎さん
勝代さん
ご夫妻

中央館 清水屋旅館 オーナー






 善光寺門前に、年間1、500人もの外国人旅行者を受け入れている宿があるのをご存知でしょうか。清水翔太郎さん・勝代さんご夫妻が切り盛りする、昔ながらの和風旅館「中央館 清水屋旅館」です。日本の生活文化に親しみを持つ外国人ばかりでなく、都会に住む若い人々をも「泊まってみたい」気にさせる魅力を探ってみました。

「ファンタスティック!」
日本の古さが共感を呼ぶ

 由緒を感じさせる銘板をくぐった館内には、磨き込まれた木造りの太鼓橋。さらに進むと、古い邦画か近代小説の舞台に紛れ込んだ気分になるレトロな空間。
 長野市街地の一画、清水屋旅館に今も残る昔ながらの意匠は懐かしくも美しく、平成の今にあっては、むしろ新鮮な感動を、見る人の心に呼び起こします。初めて泊まりに来た外国人観光客が、館内を案内されながら「ファンタスティック!」を連発するというのも、うなづけます。



「変わらない」という選択の末に


▲昨年、外観を大幅にリニューアルし、和の風情が増したエントランス。

 現在、中央通り沿いで営業する旅館形態の宿は、清水屋旅館ただ一軒。古いものを守り残すのがなにかと困難な時代の中で、あえて「昔ながら」を貫いてきました。
 当主の翔太郎さんが東京での旅館修業を終えて戻った昭和40年代、世の中は高度成長時代を背景に大きな変化の時代を迎えていました。その波は長野の宿泊業にも押し寄せ、老舗旅館がこぞって新築や改築を断行。多くがビジネス対応のホテルビルに変わっていったのです。
 「波に乗りたい気持ちは、そりゃあ、ありましたが、莫大な借財を作ってまで投資することはできなかった。歯がゆい思いで周囲の変化を見守ったものですよ」
 しかし清水さんは60畳の大広間を区切って少人数で宿泊できる部屋割りに変えたり、襖の仕切りを壁やドアに変えたりするこまめなリニューアルを繰り返し、時代に対応することは怠りませんでした。
 そして長野冬季オリンピックを機に、再び大波が押し寄せます。新築ホテル急増の影響を受け、中小規模の宿が続々と業態転換や店閉まいを始めたのです。
 「うちにも余波はありましたが、建て替えをしていなかったのが幸いしました。昔ながらの宿のおかげで、合宿や研修など数週間から1ヶ月の長期滞在をなさる常連の皆さんが変わらずに通ってくださった。今も当館を支える大切なお客様です」
 古さがほどよい味わいに醸成したたたずまいと、リーズナブルで親しみやすい宿泊対応は、外国人旅行者にも注目されるようになりました。数年前に海外の旅行案内書『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』や『ロンリープラネットガイドブック』に紹介され、いまや善光寺門前の“長野名物”のひとつとして、全国、海外の人々に知られる存在です。



「構んどく」
自然体のおもてなし


▲レトロな風情が漂う洗面所。明治・大正期の小説のワンシーンに迷い込んだような気分を味わえる場所が、館内のいたるところに。
 日本人からも、外国人からも愛される日本の宿、清水屋旅館。その秘訣を聞くと、女将さんの勝代さんは「構んどく(構わないでおく)ことかしらねぇ」と、にっこり。
 「ゆっくり休んでもらって、お帰りになる時の気分が上々なら、それが一番です。だから無理に気張ることはせずに、お客様も私どもも、お互いに自然体で接し合えればいいのかなって……」
 日本の人に日本語で話すように、英語圏のお客様には身振り手振りを交えても英語で声をかける、そんなやさしさが、おふたりの自然体。掃除の行き届いた館内にも、玄関前の青々と元気な植栽にも、そして何よりご夫妻のあたたかな笑顔に、訪れる人の気持ちをなごませずにはおかない“自然体”が満ちていました。


企業名:中央館 清水屋旅館(清水商事有限会社)
創業:江戸時代後期(清水屋開業/明治17(1884)年)
所在地:長野市大門町49
TEL:026-232-2580
*客室:和室18室
*隣接のうどんと甘味の店「きたみせ」は11:00〜16:00営業(主に火曜休)

中央通りで営業する唯一の純和風旅館。建物は明治建築の面影を伝え、ご主人と女将さんの自然体のもてなしが好評。善光寺参詣の観光客をはじめ、スポーツ大会や合宿で連泊する学生たち、ビジネス客などの定宿として愛され、歴史を刻んできた。数年前に「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」に掲載されて以降、海外からの宿泊客が増加している。



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