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2010年7月号 No.744 |
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活気あるまちづくりも、良好な社会も
一人ひとりがエゴを離れ気持ちや理念を
共有することが出発点です
おかげさまで善光寺は、大衆のお寺として地域をはじめ全国の皆様から親しまれています。これまで培われてきた信仰を財産としながら、今後より広く善光寺を理解していただけるよう努めてまいります。さらに、長野市民の皆さんとの接点を密にし、両者が想いを共有し、一体感をもってまちづくり、社会づくりに取り組んでいけたらと考えています。
柔軟な発想を取り入れ、
発信する善光寺に
―― 和田ご住職は4月に善光寺寺務総長に就任されました。今後の善光寺について、地域との関わりも含めどんな想いをお持ちですか。
和田 善光寺の舵取りに関わることとなり、まず責任の重大さを感じます。
そもそも善光寺は大衆のお寺です。宗派や老若男女の別なくどなたでも受け入れるというのが善光寺如来の考え方で、だからこそ全国津々浦々から「善光寺さん」の愛称で親しまれ、信仰を集めてきました。こうしたお寺は全国でも稀有だと思います。
一方で、善光寺も地域も既存の考え方だけでは、今後やっていけない状況になると感じています。平成26年には長野新幹線が金沢まで延伸します。長野が終着駅ではなく通過点となると、人の流れは当然多様化します。その動きをどう捉え、いかに長野市に観光客を、そして善光寺参拝客を留めるか、私どもも真剣に考えなくてはなりません。
これまで私たちは、各地から来られる方々をお迎えすることが主で、いわば受け身の姿勢でした。今後は善光寺をより一層理解していただくために、私たちの方から行動を起こすことが必要です。もともと御開帳は出開帳から始まったものですし、例えば長野まで足を運べない皆様のために、物産展などを通じて回向するなど、できる工夫はあると思うのです。
善光寺は今、変革期、世代交代期にあり、長い歴史の中で培われてきた信仰に新しい力を注入することで、善光寺をより広く見ていただこうという機運も高まっています。善光寺内外の新しく柔軟な考え方を、私たちも真剣に聞いて、できることから協力してやっていきたいと考えています。
最近では、本堂再建300年を機に平成19年より始まった善光寺お盆縁日が、ご好評をいただいています。また、閑散期だった2月には、長野灯明まつりが冬の風物詩としてすっかり定着しました。さらに善光寺界隈では、若い方々が空き家の活用や西之門市などに取り組まれ、まちに活気が出てきました。
市民と善光寺が一体となって
まちづくりを
― 昨年から商工会議所が中心になり、善光寺境内にホタルを復活させようという活動も始まりました。
和田 すばらしい活動だと思います。子どもたちが実際に生き物と関わりながら、自然の大切さ、生命に対する畏怖の念を学べることは、たいへん意義あることです。
宮崎県の口蹄疫問題では、発症していない牛まで殺されています。感染を抑えるために仕方のない処置とはいえ、殺処分という言葉に人間のエゴはないでしょうか。私たちは命をいただいて生かされています。これを失念しているとしたら、たいへん不幸なことだと思います。
エゴが強くなると、人は排他的になります。視野が狭まり、最終的には惨い事件などにつながりかねません。そうならないためには、他人の立場に立ってみる、相手の気持ちを共有しようと心の橋を架ける努力が大切です。
また、お盆縁日やホタルの活動は、さらに長野市民の皆さんと善光寺との距離を縮める上でも意義があります。「善光寺さん」と親しまれながら、これまで善光寺と市民の皆さんとの接点は希薄でした。毎朝御数珠頂戴にお見えになる方がいらっしゃる一方で、近くだからいつでも行けるからと、なかなか足を運ばれない方も多いと思います。
善光寺としても、もっと広く市民の方に理解いただく場を設ける必要があります。お寺と聞くと、お葬式や先祖の供養が主な役割のように思われがちですが、本来は地域の方々の憩いの場でした。かつてお寺の境内には、子どもたちが集まって遊び、小さな子をあやす母親の姿もありました。お寺がもう一度原点に立ち返って、一般の人たちが心を癒されるような場を提供したいものです。
もちろん市民の皆さんからも、善光寺を利用した企画をどんどんご提案いただきたく思います。善光寺と市民の接点が多くなれば、そこに一体感が生まれ、両者が融合して地域発展の大きな力になります。そして、そうしたまちづくりが、点から線へさらに面へと広がりを見せれば、外からお見えのお客様も「長野市は変わったね」「生き生きしているね」と評価くださるはずです。
善光寺を世界遺産へというありがたい動きもあります。後世に残す価値ある善光寺やまちづくりとは何か、市民の皆さんとともに考え、皆さんと一緒に実践できたらと思います。
この社会を明るく前向きに
生きるために
― ところで、6月にはダライ・ラマ法王14世を招いて特別記念講演が行われますね。
和田 はい。「善き光に導かれて―今、伝えたい心―」と題してお話をいただきます。法王はああいうお立場にいらっしゃいますから、難しい問題をさまざま抱えておられますが、善光寺としては、今回お招きしたことに政治的な意図はありません。ノーベル平和賞を受賞された方の平和に対する生身の声を、直にお聞きする場をつくりたいと思い企画しました。今回、ダライ・ラマ法王との一期一会に立ち会われた人が、何を受け取られるかはその方のご自由でいいのです。それぞれの方が、法王のお話を聞くことを契機に、平和について自分自身の問題として考えていただければ幸いです。
また、経済的にも社会的にも不安材料が多く、混迷する世の中にあって、私たちがそれでも前を向いて明るく生きるためには、何かきっかけが必要です。この講演も含めて、お寺がお役に立てることはあると思います。
今、自分の人生や将来について一人で悩み、ストレスを抱える人が増えています。そうした方々は、具体的なアドバイスが欲しいというより、自分の気持ちを分かってほしいと願っています。楽しいとき、うれしいときばかりでなく、苦しいとき、悲しいときにも、自分は一人で生きているわけではないという実感が欲しいわけです。「人は共生して生きている」そう感じられると、その想いに背中を押され、前を向いて一歩を踏み出すことができます。
先ほどもお話しした気持ちの共有です。良好な社会づくりも、活気あるまちづくりも根は一緒で、一人ひとりがエゴを離れて、気持ちや理念を共有できるかが課題ではないでしょうか。
(インタビューは5月19日に収録したものです) |
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