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2010年6月号 No.743 |
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まちづくりも、企業経営も
社会が求めるオンリーワンを築く
長期的視点を持ちたいものです
長今地域に求められるのは、自発型の産業づくり、まちづくりです。その際、長野市全体の問題としてここにどんなオンリーワンを築くのか、長期的視点に立ったビジョンと実現のためのロードマップ、そして眼前のテーマを着実に実施する忍耐強さが必要です。これは経営にも言えることで、時代を先読みし、社会が求めるオンリーワンを提供できたもののみが勝ち残ります。
デザインの発信地となる
まちづくりを
―― 若林社長は、商工会議所の経済活性化委員長でいらっしゃいます。長野のまちづくりについてお考えのことをお聞かせください。
若林 日本全体が産業構造の大変革期に入っています。これまで地方は、中央集権型「あなた任せ」型の経済構造に乗っかってきましたが、頼りにしていた大企業は今、海外に生産拠点や市場を求めています。だからこれからは、地域で自発型の産業づくり、まちづくりをしっかり進めないといけません。
私のビジョンは、デザインの発信地となるまちづくりです。例えばイタリアのように、世界に通用するブランドを手掛ける中小企業が育ち、コストではなくプライスで商売できる産業が育っているまちになればと願います。
どんな産業でも、振興の決め手となるのはそこに住む人材の価値の総量です。ゆえに優秀な人材をいかに確保するかが問われます。そこで、経済特区ならぬ芸術特区をつくってはどうでしょう。長野がアーティストのインキュベーター(孵卵器)として、発表の場や工房、アーティスト同士の交流の場を設けるのです。そこには創造性の高い人たちが集まり、まちづくりのきっかけになります。
工業デザイナーのケン・オクヤマ氏(奥山清行氏。GMやポルシェを経て、ピニンファリーナのデザインディレクターとして日本人で初めてフェラーリを手掛けた)が、出身地の山形に戻り、県産物のデザインを引き受けたことで、メイド・イン・ヤマガタが注目されています。そんな動きを長野でも起こすのです。まちの賑わいを高め、優秀な人材を吸収し、新しい時代にふさわしいデザインを中心としたメイド・イン・ナガノのプロダクトを発信する。その過程で、食や住まいの質、文化の質、共同体の質など、毎日に精神の豊かさが感じられるまちづくりも果たします。
日本は今一度ロードマップを
作り直すべき
― 若林社長は、財団法人信州国際音楽村を設立され、すでに上田においてそのモデルとなる取り組みをされていますね。
若林 ありがたいことに、ここで学んで世界であるいは全国で活躍するアーティストも増え、それに伴い地域も音楽のまちとして注目されるようになりました。
当財団の目的は、知識欲がいっぱいの子どもたちが、豊かな自然環境の中で人間性を高める教育が受けられるふるさとづくりです。子育て世代の母親が、住む場所を選択する上で最も重要視するのが、子どもの教育環境です。続いて、質の高い文化芸術に触れられる機会があるか等、日々の生活の充実感が挙げられます。
子どもを育てる環境やまちの文化度、それらを維持できる産業の振興、その産業を支える意欲溢れた有能な人材、さらに彼らが住みたくなる魅力的な地域の建設、これらをうまく循環させることで、まちは豊かになります。実は、上田地域におけるテクノポリス計画やマルチメディア事業の誘致も、そうした構想のもとにあります。
もちろん経済は大事です。経済的に豊かでなければ、文化は育ちませんから。しかし、経済はあくまでプロセスです。最終目的は、文化・芸術への理解・包容力のある情緒豊かな人間を育てることにあります。これが、国際舞台で活躍できる人材の育成へと、ひいては世界における日本の存在価値向上へとつながります。
社会が昨今の閉塞状況から抜け切れていない今、即効性の活性化策を求める人が多いことは分かります。しかし、日本は今一度ここでロードマップを作り直すべきではないでしょうか。
地域経済についても同様です。中央商店街の活性化も空き店舗をどうするかというミクロな問題の積み重ねではなく、長野全体として、ここにどんなオンリーワンを創造するのか、都市デザインと呼ぶべき大きな視点が必要です。まちのあるべき姿を描き、ビジョンのためのテーマをつくり、これとじっくり向き合って次のステージへと地道に歩む、そんな長期的視点で活動すべきです。実は長野商工会議所こそ、こうした動きを担える数少ない組織だと私は考えています。
顧客目線の
オンリーワン企業を目指す
― 会社経営についても同様に長期的視点が求められますか。
若林 もちろんです。例えば今注目されている技術にスマートグリッドがあります。情報通信技術を利用して、発電・送電・配電・電力利用を最適化する電力網のことで、米オバマ大統領がグリーンニューディール政策の柱として打ち出し、日本でも開発が進んでいます。その実現には電力会社のみならず、電機、IT関連等幅広い技術の融合が必要なために、さまざまな産業分野で新ビジネスを創出すると期待されます。一方、異業種が入り混じった壮絶なビジネスチャンス争奪戦では、勝負の明暗がはっきりします。先見性があり、未知の分野にも積極的に先行投資できる企業だけが生き残り、状況を見ながら追随した者にはチャンスはありません。長期視点で投資し、たとえ現時点の経営が厳しくともなんとか我慢してノウハウを蓄積した者だけが、やがてチャンスが花開いたときに先行者の利益を享受できます。
私は経営者としてとても臆病です。明日も同じ生活ができるか常に不安です。だから、環境に適応して生き抜こうと考えます。かつて巨大な恐竜が滅んだとき、命をつないだ小動物がいた。彼らはその時代の環境に対応できたのです。これはまさに自然の摂理でしょう。経済界を見渡しても、巨大なGMが破綻しました。今後もこうした傾向は加速するでしょう。
つまり企業の規模など関係ないのです。社会が必要とするビジネスは何かを考え、組織を変え、人材を育成し、ノウハウを蓄え、常に対応する力をもつことです。外圧がかかってから動きだすようでは遅すぎます。その道の経営のプロとして、時代をしっかり読み込み、他に先んじた者だけが勝機を掴めます。迎合型経営はもはや通用しません。
これからの時代、経営の優先順位は、オンリーワンになることにあります。顧客視点のオンリーワンです。その会社でしか持ち得ないノウハウ、人材、知識を駆使して、お客様へ価値ある提案ができる企業、プレゼンテーション能力に優れた企業が、必ず強さを発揮します。
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