CCI

   2010年 6月号 No.743

変わらぬスタイルで伝え続けたい
伝統の食文化「納豆」の魅力

西條 純一さん
有限会社 増屋納豆店






 信州は、知る人ぞ知る納豆産地。品質、味ともにレベルの高い納豆を生産する企業が点在し、全国納豆鑑評会の高順位にしばしば名を連ねています。その最優秀賞である農林水産大臣賞に、日本で初めて親子二代で輝いたのが増屋納豆店です。シンプルながら、はかり知れない奥深さを秘めた食品、納豆。製造販売の業務にも奥深さがうかがえます。

親子二代で受賞の快挙


▲第6回(2001年)、第14回(2009年)全国納豆鑑評会 農林水産大臣賞の盾。親子二代での受賞は全国初。

 食品店の納豆売場で、大判のパッケージがひときわ目を引く『川中島納豆』。フタを開けると、今度は大豆の粒の大きさに圧倒されます。製造販売元の増屋納豆店は、篠ノ井布施高田に三代続く家族経営の納豆専門店です。
 『川中島納豆』を開発したのは、現社長・西條純一さんのお父さん。創業以来、生産を続けてきた中粒の『たまご納豆』に続くブランドとして、20年ほど前に世に送り出しました。それが平成13年、全国から百数十社が出品して品質や食感・風味を競う全国納豆鑑評会で最優秀賞である農林水産大臣賞を受賞したのを機に、全国に知られる存在に。先代亡き後は、純一さんが社長、弟の笠井良夫さんが工場長として、先代のこだわりとノウハウを引き継ぎ、実直な製品づくりにいそしんできました。そして昨年、再び最優秀賞の栄誉に輝き、親子二代にわたる初受賞が各方面で賞賛されたのです。



シンプルゆえに真摯に、正直に


▲インパクトのある大粒仕立てが『川中島納豆』の特徴。大豆品種特有の淡泊な風味と、ふっくら柔らかな歯ごたえにはファンが多く、遠方からの注文もしばしば。

 納豆は、ゆでた大豆に納豆菌を加えて発酵させるだけの、いたってシンプルな食品です。 それだけに素材の質や、製造へのこだわりが商品にストレートに反映され、個性につながる奥深さを持っています。
 『川中島納豆』の場合、大豆は松本平など限られた地域でしか生産されない「ツブホマレ」という品種を使います。ふっくらとした仕上がりの決め手は、大豆を煮る温度と時間。納豆菌も独自にブレンドした最適なものを使います。また季節による水温の差に配慮して、大豆を浸漬する時間を微調整するといった、こまやかな加減も怠りません。こうしてほぼ3日をかけ、大豆としては比較的淡泊とされるツブホマレ特有の風味がみごとに生かされ、ふっくら、ほどよい歯ごたえと糸引きがご飯と絶妙の相性をかもし出す『川中島納豆』が完成します。
 「昨今は小粒品種の大豆で製造し、添付する多彩なタレの味で食べさせる納豆が主流となっていますが、うちはあくまでも大豆の味で勝負したいと考えています」と、西條さん。品質の維持・向上にも、常に厳しい目を注いでいます。



規模の小ささをむしろ武器として

 西條さんが三代目を継いで約5年。受賞などをきっかけに販路は大きな広がりを見せていますが、西條さんは経営や生産の規模を拡大しようとは、あえて考えないと言い切ります。「大手さんとの競争は考えません。うちはあくまでも小さい工場ならではの小回りを大事にしたいと思うのです。細部まで目を行き届かせ、良質な商品を正直に作り続けて、確実にお客様にお届けしたいですね」。
 その姿勢は、どうやら先代譲り。「父は納豆店主としてだけじゃなく、地域のことにも一所懸命取り組んだようです。『お父さんに本当によくしてもらった』と、周囲の皆さんが機会があるごとにおっしゃるんです。尊敬しないわけにはいきません」。
 先代に少しでも近づこうと、公私に奮戦する三代目。受賞の輝きのみならず、地域発展の明るい光も垣間見えるようでした。

企業名:有限会社 増屋納豆店
創業:創業/昭和20年代 会社組織化/昭和34(1959)年
所在地:長野市篠ノ井布施高田650
TEL:026-292-0360

納豆の製造販売を手がける増屋納豆店の三代目経営者。工場長として製造を担当する弟さんと二人三脚で、独自ブランド『川中島納豆』をはじめとする良質な納豆を地域に送り出している。



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