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2010年4月号 No.741 |
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自分たちにとって価値あるものを
地域のなかで日常的に磨くことが
明日の資産となると思います
地域交通には難しい課題が山積していますが、未来のあるべき姿を模索するには、まず現状を可視化することが大切です。一方で、長野のまちとしての総合力を高めていくことが必要でしょう。文化でも食でも景観でも、地元民にとっての価値を見直し、資産として磨いていくのです。住民が生き生きと暮らすまちになれば、インフラとしての地域交通の整備も自ずと進むと思います。
まず地域交通の現状把握に
努めること
―― 笠原社長は、商工会議所の地域交通対策委員長でいらっしゃいます。今後の地域交通についてどうお考えですか。
笠原 地域の皆様が今最も気にされているのは、長野新幹線が金沢まで延伸したら地域へのお客様の流れはどうなるのか、それは地域の観光そして地域交通にどんな影響を与えるのかといった点かと思います。私たちの委員会でも、あるいは長野市との専門委員会でも、さまざまな議論が交わされていますが、今後のあるべき姿を探るにはまず現状を把握することです。
長野新幹線ができるとき、新幹線がくることで地方都市はどう変わるのか、私たちは東北新幹線を例に仙台や盛岡、福島などを視察しました。そこで予測されたのは、長野新幹線の完成により一定の経済効果はあるものの、ストロー現象が起きるのではないか、つまり長野から東京へ人の流れが吸い取られるのではないかということでした。
一方、これから長野市が直面するのは、新幹線の通過地となった地方都市はどう変わるかという問題です。新幹線を一次交通としたとき、二次交通として位置づけられる地域交通のあり方について、ここでも他の新幹線の例を検証することです。そのうえで、長野市はもとより、より広域的な視野をもって、既存の鉄道、バスにはどんな路線があり、その利用状況はどうなのかつぶさに分析して、現状の地域交通を可視化することが急がれます。
昨年から高速道路の休日割引が始まりました。さらにこの先無料化が実現すれば、公共交通は新幹線も含めて少なからぬ影響を受けます。地域交通の今後は、マイカー、新幹線、飛行機などあらゆる交通手段の利用可能性を勘案しながら、さまざまなパターンをシミュレートし、路線ごとに費用対効果、運行費補助などで税金を投入する妥当性、駅やバス停までのアクセスの在り方など検討していくべきと考えます。
長野電鉄屋代線でも、沿線3市や弊社などでつくる長野電鉄活性化協議会により、この4月から実証実験が行われます。地域路線は、住民の皆様に恒常的にご利用いただいてこそ存続意義がありますので、地域沿線の方はこの機会だけといわずぜひご乗車いただきたいと念じています。
地元民が利用し育てたものが
観光資産になる
― これからの観光は、長野市を起点にいかに周遊してもらうかが課題だと言われます。周遊観光にとって二次交通の役割は大きいのではないですか。
笠原 私も周遊観光の重要性は認識しています。訪ねてみたいところと交通の便利さかげんは重要なことだとは思います。しかし、お客様の心理として、ぜひ訪ねてみたい場所があることと、そこへ至る交通機関が便利であることに、強い関連はないと思います。交通の便が良くなくても、行きたいところには行くというのが実際ではないですか。それによって行く人が増えれば交通の利便性がおのずとついてきます。
私どもが経営にかかわっている野猿公苑が良い例です。海外でもスノーモンキーが広く知られるようになり、冬場交通が不便であるにもかかわらずたくさんのお客様がお見えになります。戸倉上山田温泉の旅館の若旦那で、長野インバウンドサミットの仕掛け人でもあるタイラー・リンチさんのお話によると、長野県を訪れる外国人の95%以上が野猿公苑を訪れるそうです。しかも、湯田中駅から徒歩で行かれる方も少なくないと聞きます。そこで、野猿公苑に行く方を対象に山ノ内町からの補助金も出て、冬期間「スノーモンキーホリデー観にバス」が運行されるようになりました。必ずしも交通の利便性の問題ではないのです。また、我々が思う観光名所と、お客様が訪ねたい場所は違う可能性があることも認識すべきかと思います。
交通網が地域活性化の前提と考えるのではなく、地元を元気にすることが交通インフラの充実につながると考えたらどうでしょう。まちの文化度や食や景観、あらゆる産業の活気などさまざまな要素の総合力を高めることが着実な道です。これは前回このコーナーで岩本弘さんが提言されたことにも通じます。私が強調したいのは、この総合力を形成する資産は、地元の人が常日頃利用することで育まれ、根づくということです。
例えば、御開帳や灯明まつりのとき、善光寺の宿坊などでいただける精進料理がクローズアップされました。しかし、長野に暮らす私たちが、普段からもっと精進料理に慣れ親しむようになれば、これを提供する店がまちなかにも増えて、もっと名物になります。
旅に出て、土地の味覚をいただくのに、地元の人が食べている店に行きたいのは人情ですよね。地元の人がうまいと思うものを観光客も食べたいわけです。食でもそれ以外の文化でも、地元民にとっての価値が第一であり、その点で揺るがなければ、観光客増も地域交通整備も自ずと進む気がします。
介護に次ぐ事業の柱の
構築が課題
― 御社は「快適生活サポート企業グループ」をキャッチフレーズに事業展開されています。御社の事業展望についてお聞かせください。
笠原 平成22年度は新事業の基盤固めの年と位置づけています。私どものグループは、輸送、生活関連、不動産、おもてなし事業で構成されます。各分野が相乗効果を発揮して、新しい事業の芽をつくることが課題です。
当社の歴史を振り返ると、まず鉄道を敷設し、この二次交通としてバスやタクシーを走らせ、湯田中の観光開発をはじめとするレジャー産業に取り組み、あるいはガソリン販売などのサービス産業も派生してきました。また、鉄道ができ、駅ができたことで、長野市ではイトーヨーカドーさん、須坂市ではジャスコさんといった有力商業施設と協力した企画を打ち出せることが強みでした。
ただし、基幹事業である鉄道バス等はすでに成熟期を迎えています。また、鉄道は一度敷設したら容易に動かし難く、利用環境が変わった場合、利便性において自動車やバスに後れをとります。さらに当社の事業には、右肩上がりの事業は少なく、それだけに今後の投資に見合う利益を上げる工夫が必要とされます。
そこで新しい事業の柱とすべく、沿線の土地建物を有効に利用するかたちで、平成16年からデイサービスセンターや高齢者専用賃貸住宅など介護福祉事業を始めました。おかげさまで一定の成果を上げています。しかしこれとて、20年先30年先にお年寄り人口が減少することを考えると今が旬です。だからこそ今から次の柱となる事業を創造していきたいですね。
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