| |
2010年1月号 No.738 |
|
─新春特別対談─
行政と経済団体の信頼関係を強化し
より効果的な地域振興を
デフレ、円高と日本経済の懸念材料は増すばかりに思える。しかし、一方で会議所や長野市は昨年善光寺御開帳を成功させ、その過程で地域や組織を越えた連携という大きな財産を得た。
1月1日に信州新町や中条村と合併して新長野市も誕生し、長野経済も新たな時代を迎えようとしている。そこで今後の地域発展の在り方などについて、鷲澤正一長野市長と加藤久雄長野商工会議所会頭に語っていただいた。
鷲澤市長が自らに課す
5つの原則
―― まず、これまでお二人がどんな事業に力を入れてこられたのかお聞きしたいと思います。鷲澤市長いかがでしょうか。
鷲澤 事業というわけではありませんが、8年前に市長に就いて以来、私が自らに課している5つの原則があります。
第1に「入りを量りて、出ずるを為す」。つまりストックに頼らず、フローによる市政運営を行って財政の健全化を果たすこと。
第2に「市民とのパートナーシップ」。行政がすべてをやることは不可能な時代ですから、市民の皆さんの意見に耳を傾け、皆さんと一緒に考えて一緒に汗をかいてゆくこと。
第3に「簡素で分かりやすい市政運営」。すなわち、行政と市民の皆さんとの間に壁をなくし、市政運営の透明度を増すこと。
第4に「民間活力の導入」。行政をスリムにして、民間経営のノウハウを活用すること。
第5に「無私・利他の精神」。私自身はもとより市職員全員が私情を捨て、長野のために日本のために事にあたるということ。
この基本姿勢に立ったうえで、初当選当初に最重要テーマと考えたのが、中心市街地の活性化です。現在徐々に街に人通りが戻ってきており、一定の効果はあったと考えています。
また、長野市は合併して大きくなった市ですから、地域ごとの特徴を活かしたまちづくりを進めることも同様に重要な課題です。善光寺一極集中ではなく、それぞれの地域で自分たちの宝を見出して活性化に取り組み、その結果市内のあらゆる地域が元気に輝いてくれれば素晴らしい。こちらについては、エコール・ド・まつしろやイヤーキャンペーンに代表されるような取り組みが根づいてきました。
加藤 鷲澤市長は、企業経営の第一線を長年経験されているので決断が早く実行力もあり、この8年間で市政にスピード感が出たように思います。
善光寺御開帳で生まれた
連携と共感を財産に
― 一方、加藤会頭はどんな事業に特に力を注いでこられましたか。
加藤 平成19年11月に会頭になって、私は「行動し、発信し、結果を出す商工会議所」をスローガンとしました。これまで会議所のような団体は、結果を出すことを求められませんでした。しかし、右肩上がりの時代が終焉を迎えた今、私たちは自ら結果を求めて行動すべきであり、会頭も名誉職としてあるだけでなく、すすんで先頭に立ち、事業の牽引役を務めなくてはならないと考えます。
この間の事業としては、私どもが奉賛会会長を務める善光寺御開帳が最大のイベントでした。今回、広報連絡協議会を設け、情報交換、情報共有がスムーズにできたことが成功の最大要因であり、その結果、県観光課、観光協会、JR、長野市、松本市等との連携も非常にうまくいきました。この経験を生かし、次の御開帳のための仕組みづくりもしていきます。
鷲澤 さまざまな組織との連携がスムーズにできたことはほんとうに大きかったですね。
加藤 ええ。市長にもご足労いただいた長野市と松本市の政経懇談会が、松本空港を利用した善光寺参詣など広域連携につながりました。善光寺御開帳の大きな副産物のひとつです。今後、松本空港存続やリニア新幹線の問題についても、行政や経済4団体と足並みを合わせ、長野商工会議所は物心両面で支援していくつもりです。
また今回の善光寺御開帳では、篠ノ井地区から1、800人の皆さんが、大獅子とともに初めて本格的に参加くださいました。御開帳を身近に感じていただき、長野市民としての一体感も増し、たいへん大きな収穫となりました。
もうひとつ、御開帳奉賛会では御開帳行事すべてに紋付袴、そろいの菅笠姿で参加しました。衣装も含め、その行事にふさわしい形式を整えることが、行事の価値を高めることになると改めて認識しました。
御開帳以外では、私どもの仕事を中小零細企業のためのサービス業と位置付け、相談時間を延長するなど、厳しい経済情勢のなか融資などの問い合わせにきめ細かく対応する体制を整えました。また、長野商店会連合会や行政と連携して、まちづくりに取り組んできました。
工業振興が次なる連携の
大きなテーマ
― 連携というお話がでましたが、行政と民間との間で今後さらに進めていくべき連携にはどんなものがありますか。
鷲澤 やはり工業分野です。観光をはじめ商業の分野では、商工会議所さんの事業も、官民の連携も一定の成果を上げていますが、工業ではまだまだです。UFO(長野市ものづくり支援センター)の活動も盛んになってきたものの、確かな実績と呼べるものはまだありません。今後市では南部浄化センターや三菱電機跡地などを活用し新規産業団地を整備するなど、工業振興に一層力を入れていきます。一朝一夕に結果の出る問題ではありませんが、商工会議所さんにもぜひご協力をいただきながら、長野市の工業も元気にしていきたいですね。
加藤 UFOでは着実に異業種交流が生まれつつあり、信州大学もたいへん協力的です。商工会議所としても、新しい芽を大事に育てることにさまざまな側面から協力したいと思います。
鷲澤 今回の大不況は、あらゆる産業に及んでいますが、とりわけものづくりが打撃を受け、たいへんな試練に直面しています。県下では、製造業の盛んな中南信地区がほんとうに苦しい状況にあります。
問題の原点は、需要がないことでしょう。工業は設備に頼るところが大きい分、業態の転換が商業に比べて容易ではありません。長野市は工業に特化した産業構造ではなかったため、経済への影響は比較的少なく済んでいます。とはいえ、今後長いスパンで市の経済を見たとき、工業の振興は重要なテーマです。
その鍵となるものとして“環境”が挙げられると思います。「すべての政策に“環境”の屋根をかけよう!」とは、私の市政におけるビジョンですが、今後環境は長野ばかりでなく日本にとっても生き残りをかけたテーマになります。工業でも、環境に関わる技術をものにしたところは強いでしょう。たとえば長野なら、味噌や日本酒の醸造で培った発酵技術を使って、新しいタイプのバイオマスエネルギーを生み出すことができるかもしれません。日本の技術で身近な草や木の枝などあらゆる植物がバイオ燃料にできれば、日本は資源大国になります。さらに、中山間地域が新エネルギー産業の主役となる可能性もあります。そんな未来も大いに期待しています。
山間地域を元気にする
仕組みづくりを
加藤 中山間地域の人口減、商店の減少は歯止めが利かない状況です。市長がおっしゃるような新しい産業が興って、起爆剤となれば素晴らしいですね。
鷲澤 おっしゃる通り。現在中山間地域では暮らしの根拠が失われつつあります。私が理想と考える「歩いて暮らせるまち」とは、ずいぶん遠いところにあります。当然行政が手を尽くすべき課題ですので支援は行っていきますが、商工会議所さんにもご協力願って、新しいスキームができないでしょうか。
加藤 地元商工会のお考えをお聞きしながら、新しい連携のかたちがあれば、模索していきたいと思います。
最近、商工会議所では、長野の郷土食としておやきのプロデュースに力を入れています。合併により長野市がさらにおやき文化の豊かな市になったわけですから、これをきっかけに地域や団体の垣根を越えて、新しいアイデアを集め、中山間地域の活性化に貢献することもできるかもしれません。それぞれの地域のおやきを大事にしながら、長野市民意識の共有、郷土への愛を深めることができるのではないでしょうか。
長野を観光都市に
ふさわしいまちに
― 今年はどんな事業に力を入れていかれるか、あるいはどんな夢を描いていらっしゃるか、それぞれのお立場からお話し願えますか。
鷲澤 先の選挙でお約束した政策のなかでも待ったなしの課題が、公共交通システムの維持と、今話題にのぼった中山間地域の問題です。両者は互いに密接な関係にあり、また環境都市の実現というビジョンともリンクします。後者については、合併で長野市の中山間地域の面積はさらに増えましたから、ここを元気にすることが市政の最優先事項です。
商工会議所さんとの関係で言えば、北陸新幹線の金沢延伸を長野市の次なる飛躍のためのチャンスと捉え、観光立市に取り組んでいきたいと考えます。
加藤 私どもも、長野を観光都市にふさわしい、きちんとしたおもてなしのできるまちにすべく、昨年7月長野商店会連合会や長野青年会議所とともに市長のもとを訪ね、「ゴミのポイ捨て、路上・歩行喫煙禁止条例」に関する要望をしました。おかげさまで市議会で採択もされ、条例化のめども立ちました。
善光寺の表参道である中央通りの石畳化や、長野駅舎の改築など、仏都にふさわしいまちづくり、歩いて楽しめるまちづくりも、行政と協力して進められたらと考えます。さらに、昨年善光寺界隈で始めたホタル事業を契機に、長野の環境整備も提案していきます。
今年は長野商工会議所が誕生して110周年にあたり、私の夢も大いに膨らんでいます。
例えば、弥栄神社の御例祭である長野の祇園祭は、京都、高山と並ぶ三大祇園祭と呼ばれていましたが、屋台巡行は現在善光寺御開帳の時しか見られません。先の御開帳でもこの屋台巡行がたいへんな盛り上がりを見せましたので、ぜひ毎年開催して、全国からお客さまを呼べる祭りにしたいものです。
えびす講煙火大会は、将来名実ともに日本一の晩秋の花火大会にすべく、好評のミュージックスターマインを増やすなど、市外県外からより多くの人が呼べる付加価値を高めていきたいですね。市にはこれまで以上のご支援を願いたいと思います。
すべての事業に言えることは、長野市をはじめとする行政や、同じ経済団体との間で、人間関係を基礎とした信頼をこれまで以上に築いていくことの重要性です。信頼関係があってこそ、役割分担と事業責任が明確になり、より効果的な地域振興も可能になると信じています。
― 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
|
|