CCI

   2010年 1月号 No.738

自ら馴染み、親しみ、使いながら、
古い蔵の新しい物語を
紡いでいきたい

ボンクラ。
代表 一級建築士 宮本  圭 さん
一級建築士 羽鳥 栄子 さん
一級建築士 広瀬  毅 さん
一級建築士 山岸 映司 さん
一級建築士 古後 理栄 さん
グラフィックデザイナー 太田 伸幸 さん
編集者・ライター 山口 美緒 さん






 明治後期から昭和前期に建てられた3棟の蔵が連なる「カネマツ」。紙問屋、ビニール製品の卸売業、そして倉庫、工場と、用途・目的を変えながら、長野随一の問屋街・東町の歴史を紡いできた貴重な建物のひとつです。その再生に魅せられた7人が始めたプロジェクトは、自由で、しなやかで、素敵なエネルギーを放っています。


自分たちの知恵と労力が
蔵に新しい命を吹き込んでいく


▲片付けも修理も手ずから行うボンクラの面々
 江戸、明治の昔から長野の商工業を支えてきた老舗の多くは、東町を発祥の地としています。今も残る蔵や商家は、この地で紡がれてきた歴史や人の交流を物語る貴重な存在。「カネマツ」旧倉庫も、そのひとつです。この古い蔵を丸ごと借り受け、再生に取り組んでいるのが建築士、デザイナー、ライターの異業種ユニット「ボンクラ。」の7人です。
 蔵を訪ねると、7人がそれぞれ工具を手に、職人さながら大工仕事の真っ最中。半月後に各人が事務所をここへ移転することを目標に、おのおの仕事の合間を縫って、役割分担に応じた作業を進めているのでした。聞けば、アイディアや発想を出してプランを詰めるのはもちろん、そのための資材調達も、施工さえも、すべて自分たちで行う異色のプロジェクト。未知の作業の連続で、並大抵の手間ではなさそうですが、作業に熱中する彼らの表情は、素敵なはかりごとを楽しむかのように喜々とし、息が合っている様子が手に取るように伝わってきます。


一過性のイベントではなく
未来へ続く活動として


 7人は旧知の仲間というわけではありません。「廃屋のような蔵を最初に見た時、素直に『いいね』と感じたことが、唯一の共通点かもしれません」と、代表の宮本圭さんは笑います。「興味を持つ人は少なくありませんでしたが、実際に自分たちで『やろう』と腰を上げたのは、この7人だったんです。しかもビアガーデンで盛り上がったのが、発端でした」。
 彼らはムードに流された寄り集まりとなることを避け、7人それぞれが責任を持って取り組む事業主集団としてスタートを切りました。蔵の改修自体も一過性のイベントで終わらせず、未来へ続く活動にしようと、向こう30年、活動を継続させることを前提に「LLP(有限責任事業組合)」を立ち上げたのです。
 「資金がないので、頼りになるのは自分たちが個々の仕事で培ってきた経験や能力やネットワーク、それに労力だけ。それがいろんな方面にアンテナを張ったり工夫したりすることにつながり、ハード、ソフト両面でいい結果を生み出しています」。


魅力あるものとして残していく


▲11月に行われた「仕事はじめ」や「門前市」には多くの市民が駆けつけ、蔵は新しいコミュニティスペースとして呼吸を始めた
(写真提供:ハラヒロシさん)
 「カネマツ」の蔵は文化財ではないため、改修にもその後の使い方にも大きな制約がなく、無限の可能性を秘めています。7人は自らアイディアを出し合い、訪れる多くの人々と交流を重ねながら、これからも時間をかけ、工夫を凝らして、この空間をよりおもしろい場所にしていこうと考えています。
 古い建物の価値に気づき、魅力を最大限引き出して、利用しながら保存する。しかもそれを当事者たちが心から楽しみながら。歴史あるまちの新しい再生モデルが「ボンクラ。」から始まろうとしているようです。


企業名:LLP(有限責任事業組合)ボンクラ。
創業:平成21(2009)年10月
所在地:長野市東町207-1(KANEMATSU内)
TEL:026-234-1430(広瀬毅建築設計室内)

シナノカネマツ株式会社が所有する延床面積約500uの蔵を借り受け、自分たちの手で改修、再生しようと結成した異業種ユニット。建築士、グラフィックデザイナー、編集者・ライターとして独自の活躍をしている7人が知恵と労働力を出し合い、働く場、人が集まる場をめざし、コツコツと改修を進めている。
ボンクラの日記(ブログ)
http://bonnecura.naganoblog.jp/



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