| |
2009年8月号 No.733 |
|
地球環境についても、教育についても、
これからの日本社会を考えるうえで、
公器としての企業の役割が大きいですね
長野商工会議所が、善光寺の庭園に放流したホタルが成虫になり、その舞う姿が観察できました。今後この環境を保全していけば、来年もホタルの舞う姿が見られるでしょう。いい環境を整えれば、生き物はきっと応えてくれます。
地球環境問題をはじめ、現代社会は様々な問題を抱えますが、その解決には、国を挙げて取り組まなければなりません。具体的な行動を起こすことが鍵になると考えます。
善光寺東庭園で
ホタルが舞う庭づくり
― 宮澤会長には、商工会議所の環境エネルギー委員長を務めていただいています。最近、善光寺庭園でホタルの観賞会が行われたというニュースがありました。
宮澤 はい。善光寺さんと長野商工会議所がいっしょに取り組んできた活動が実を結びました。
善光寺鐘楼東の庭園にホタルを飛ばそうと、低木を水路沿いに植栽し、ホタルの幼虫と、餌になるカワニナを放流しました。初めての試みにもかかわらず、10数匹のホタルが成虫になりました。6月の観賞会には、この活動に最初から協力してくれた城山小学校の生徒たちも参加し、とても喜んでくれました。ほのかな光を放ちながら飛ぶホタルの様子は、まさに童謡「蛍」のようで、ほんとうに心なごむ光景でした。
今後この場所の環境保全を続け、植栽した木が茂り、水路の流れや周辺の土壌が落ち着いてくれば、ホタルの成虫・産卵・幼虫と生育のサイクルができるでしょう。私は趣味で蘭の栽培をしていますが、いい環境を作れば、生き物はちゃんと育ってくれます。それは人間も同じです。
子どもたちの学ぶ意欲を育む
環境づくりを
― 植物の生育と人間の成長において、共通点があるということですね。
宮澤 ええ。蘭にも人にも、成長するにふさわしい環境というのがあります。そもそも洋蘭は、地球の北回帰線と南回帰線に挟まれたベルト地帯に広く自生しています。コロンブスらが活躍した大航海時代にその存在が発見され、ヨーロッパ経由で日本にもたらされたため洋蘭と呼ばれています。熱帯植物ですから温室で育てます。東南アジア・中南米・アフリカ産、と温室内は国際色豊かです。いろいろな環境で育ってきたことが個性となっているわけで、一株一株に文化があると言っていいでしょう。これは人についても同じです。一人一人の個性を尊重しなければなりません。
また蘭の栽培も、人の育成と似たところがあります。第1に、甘やかさない。本当に水を欲しがっているときに水をあげます。ガマンさせます。第2に、気がついたらすぐやる。害虫や病気で「ちょっとおかしいな」と感じたらすぐ対応することです。第3に、常に声を掛けてあげる。第4に、蘭も一生懸命に花を咲かせるのだから、皆に見てもらえるところに置くこと。つまりきちんと評価してあげることです。
そして、すべての前提になるのが、その蘭の自生地の環境にいかに近づけるかということです。これを人間の教育に当てはめるならば、それぞれの個性を尊重しながら、子どもが主体的に「学びたい、成長したい」と思える環境を整えてあげることだと思います。
私は子どもたちにはもっと自由にのびのびと育ってほしいと願っています。学校法人いいづな学園の理事長をお引き受けしたのも、体験型学習を重視し、子どもたちが本来備えている知的好奇心の芽を育てるという理念と、そのための環境づくりに共鳴したからです。
また長野県産業教育振興会では、今後県内産業を担っていく子どもたちの育成を目的として、専門高校の先生や子どもたちを対象に、県内会員企業からいただいた会費で研究助成をしています。わたくし個人としても、生徒たちの研究発表を多くするため支援しています。
企業は公器ゆえ、
把手共生を理念とすべし
― 環境と言いますと、地球規模の自然環境問題も今世紀の最重要課題ですね。
宮澤 先に麻生政権は、温室効果ガスの削減目標を2005年度比マイナス15%としましたが、日本の環境指針はどうも具体性に欠けます。まず企業にしても家庭にしても、電気や燃料の消費量をきちんと温室効果ガス排出量に換算して、現時点でどれだけの排出量があるか実態を把握することが先です。その上で、たとえば生産現場ならば単位生産高に対してどれだけ減らすのか、具体的な数値目標を示すべきです。さもないと目標は達成されないままです。
私どもも関わっている輸送部門の排出量削減も課題です。解決のためには、ディーゼルハイブリッドエンジンなど新しい技術の導入も重要ですが、一方で消費の在り方も見直していくべきです。端的に言えば、地産地消が進めば排出量は減ります。商品の輸送時に二酸化炭素が排出されていることを考慮して、輸送距離が短くて済む地元産のものを買うのが賢明な消費行動だと推奨される社会を実現すべきだと思います。もっとも環境に対する意識は、現在市民一人ひとりの方が、企業より高いように思います。昨今の不況の影響もあってか、エコと節約が通ずることを生活者は肌で知っているからです。これから日本が環境政策を進めるについて、まず大きな役割を果たすべきは大企業です。大企業が率先して自ら具体的な削減目標を示し、これを実践すべきだと思います。
企業は公器である。そう私は考えます。だから地球環境に対しても大きな責任があります。これは雇用についても同様です。企業が公器であるから、雇用に対しても当然大きな責任があります。企業が雇用を守り、一定の業績を上げれば、法人税や社員の所得税を原資として、国も様々な政策を実行できます。国家の成立は、雇用にあると言っても決して大げさではありません。
ゆえに私たち経営をあずかる者は、企業が公器であることを常に認識すべきです。そして、私の企業経営は「把手共生」(意味:手を取り合い共に生きる)を理念とします。会社と社員・その家族。会社と株主。会社と取引先。会社とお客さん・地域。これら全て「把手共生」でいくべきと確信します。
この考え方は、国と国民の把手共生、すなわち国民の幸せのために日本の国全体を常に考えなければなりません。一例を挙げれば、WTO(世界貿易機関)と農業振興(食料自給率・休耕田他)はどうあるべきが国全体としてベターなのか。環境、教育についても、工業・観光等々についても国全体として国民の幸せになっていくかです。昨今の政治家・大企業のトップ等々は自己中心の狭い考え方過ぎると思いませんか。日本の国、国家として、どうしなければならないか、というトータルな考え方で取り組まなくてはならないと思います。
|
|