CCI

   2009年2月号 No.727




北村 正博
(株式会社システックス代表取締役社長
長野商工会議所副会頭、長野市ソフト産業協議会会長、
(社)長野県情報サービス振興協会理事、(社)長野法人会常任理事、
長野県経営者協会長野支部副支部長。)

昭和22年長野市生まれ。長野県立長野工業高校電気科卒業後、新光電気工業株式会社を経て、45年に長野ソフトウェアサービス株式会社を設立し、代表取締役に就任する。平成2年に社名を株式会社システックスに変更、現在に至る。

  

  


顧客満足のための第一歩は、
社員の人間力育成による
モチベーションの向上


 ビジネスシステムのコンサルティング、ソフトウェア設計・開発を行う当株式会社システックスは、「先心後技」をモットーに、顧客満足の追求のためにまず社員の人間力を磨くことに力を注いできました。ニーズをとらえ、ニーズに応えるのは、技術よりも先にお客様を思う心、それはあらゆる商売に通じる、ひとつの真実だと考えています。

ソフトウェアの将来性に賭け
23歳で起業


― 北村社長は23歳でシステックスの前身である長野ソフトウェアサービスを創業されました。その経緯をまずお聞かせ願えますか。

北村 高校を卒業した私は、富士通のグループ会社に入社し、自動車ディーラーをお客様として、手形管理、車両管理、一般会計、市場調査システムなどを構築するお手伝いをしました。その過程で人と出会い、業務を知り、これからの社会におけるソフトウェアの可能性を感じ、ぜひ自分でやってみたいと思ったのです。実は、私の祖父や父も農業のかたわら商売をしており、それなりに成功していました。私にも企業家の血が流れていたのですね。商売を始めることに不安はありませんでした。
  とはいえ会社設立当初、長野ではまだコンピュータがほとんど普及していません。私はツテを頼って静岡県のユーザーを開拓して、長野と静岡を1週間おきに往復する生活が続きました。また、「一緒に商売をやらないか」と持ちかけられ、結果的に裏切られた経験もあります。今となればいい勉強をさせてもらったと思います。私は楽観的ですから悪いことはみんな忘れてしまいます。「北村さんは人を恨まない人だね」と言われることがありますが、きっとこれも私がプラス思考だからでしょう。

商売の基本は、
顧客満足の追求にあり


― 会社経営において、北村社長がいちばん大切にされていることは何ですか。

北村 何よりもお客様の満足を追求することです。私の祖父は、かつて裾花川が決壊して地域が水浸しになったとき、家の動力のポンプを持ち出し、各戸の井戸に溜まった泥を無償で汲み出したそうです。後にその話を聞いた私は、人のため社会のために何ができるかが商売の大前提であると学びました。
  では、顧客満足のために何をすべきか。ソフトウェア業界ではとかく技術力が重要視されますが、私はそれ以前に人間力こそ重要だと考えます。当社では「先心後技」を精神とし、社員教育はまず人間力を磨くことから始めます。内定者セミナーにおける基礎教育は、取り組みを始めてから23年ほどになります。
  もちろん企業ですから採算は考えますが、自分の損得勘定のみに走れば、お客様との関係はその場限りのものとなってしまいます。いい関係を継続するためには、お客様に対してこちらが提供できるサービスを精一杯することです。
  顧客満足を十分に提供したうえで、なおかつ収益も高めるには、生産性と品質を上げればいいのです。そこで問われるのが技術力です。当社は技術教育にも相当額の投資をし、社員の資格取得率は業界でも高いレベルにあります。肝心なのは、まず心の教育をして社員のモチベーションを向上させることです。その土台の上にこそ技術力が備わるのです。今後我々の業界にも荒波が押し寄せると思われますが、人間力と技術力に加えて、シーズを見出す発想力・提案力に長けた人材を育成することに力を注ぐつもりです。
  一方業界としては、将来にわたってソフトウェア産業が長野市で生き残っていけるように、次世代を担う青少年の育成に努めています。たとえば子供のためのパソコン教室の開催や、あるいは長野工業高校の生徒さんのインターンシップ受け入れなどはその一環です。なるべく早い時期から子供たちに職場体験をしてもらい、職業観を涵養することが、自分たちが身を置く産業の未来にとっても、社会全体の活力ある発展にとっても重要であると考えます。

ものづくりを振興し、
工業でも長野ブランド創出を


― 顧客満足と教育についてのお話は、どんな業種の商売にも通じることですね。

北村 ええ。かつて義理人情を重んじていた日本は、いつの間にかドラスティックな社会になってしまいました。売り手側は「売ってやる」、買い手側も「買ってやる」といった態度です。心の距離感がおかしいですね。
  しかし世の中がどんなに変わろうと、お金を出してくださる方はお客様です。その方へのサービス精神に問題はないか、もう一度見直すべきです。たとえば長野市の町並みひとつとっても、お客様が歩いて本当に楽しいと思えるだろうか、あるいはお客様がいらしたとき心からお迎えする言葉づかいや態度になっているか、お金を頂戴することにいつも感謝の気持ちをもっているか、そう省みてみるのです。地元商店の方々も、マナー教育、事例学習などの機会をもっと設けて、顧客満足に関する気づきの機会を増やしてみたらいかがでしょうか。
  また、「待ち」の姿勢も見直したいものです。誰かに何かを期待するのではなく、自分から表に出てサービス精神を発揮すべきです。もはや誰かけん引役がいて、その他大勢を導いてくれる時代は終わり、自分から一歩前へ出なければ何も解決しません。長野市は自然や歴史、文化に恵まれています。この資産を大事にしながら、自らおもてなしの精神を前面にだせば、きっとお客様はついてきます。
  さて、長野市の産業構造を見たとき、私は工業がもっと発展すべきだと考えています。産業の原点はやはりものづくりです。幸い長野市には信州大学工学部があり、長野高専があります。近年は産学行(官)連携の拠点としてUFO(長野市ものづくり支援センター)も開設されました。この工業振興の機運の高まりを、商工会議所もバックアップしていくべきです。そして今後、長野市ならではの新技術や製品が誕生し、全国や全世界に発信する長野ブランドとして育ってくれることを大いに期待しています。




北村社長の横顔
「仕事が趣味」と語る北村社長。休暇が取れたときは、音楽を鑑賞してリラックスしたり、あるいはゴルフを楽しんだりする。また、同居されているお孫さんと接するのが、何よりの楽しみとか。

  




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