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2009年1月号 No.726 |
| 長野と松本の連携を契機に、
長野県の新しい時代を拓く
長い停滞が続く地方経済に、株安・円高の不況が音を立てて迫ろうとしている。しかし、暗いニュースばかりではない。昨年10月には、長野市、松本市の両市長や両商工会議所会頭らによる政経懇談会がスタートし、広域観光連携への具体的な取り組みが始まった。新春にあたって、両会議所会頭に現在の取り組みと今後の夢について大いに語っていただいた。
加藤会頭の提案で始まった
長野・松本政経懇談会
― 昨年は、長野市と松本市の間で初めて政経懇談会が開催され、広域観光連携についても具体的な取り組みが行われた画期的な年でした。この懇談会はどのような経緯で始まったのですか。
井上 6月4日に行われた松本商工会議所100周年記念式典の折、長野県商工会議所連合会会長として出席いただいた加藤さんからご提案いただき、鷲澤長野市長、菅谷松本市長も巻き込んで、一気呵成に話の流れをつくっていただきました。行政トップと会議所トップがともに顔を合わせ懇談する機会はこれまでになかっただけに、そのきっかけをつくっていただいたことに感謝しています。
加藤 いえ!私どもにとっても大変うれしいことです。長野県を代表する両市の連携・交流が進めば、県全体の牽引力となります。この懇談会が、実現したのは、やはり人間関係です。初めて井上会頭とお会いしたときから、誕生日が一日違いで同じ午年というご縁もあり、この方となら一緒にできると思い、ご相談申し上げた次第です。
今後は長野県の全体最適を考え、
連携・交流の輪を広げるべき
― 一連の活動について、お二人はどのようなご感想をお持ちでしょうか。
井上 最もありがたかったのは、長野の加藤さんから信州まつもと空港の利用促進についてご提案いただいたことです。来年は善光寺さんの御開帳の年で、600万人を超える観光客が訪れると予想されます。その1割の60万人の方が松本空港を利用され、さらに松本周辺を観光してくだされば、松本にとって大きな経済効果となります。福岡と札幌で行ったキャラバンでは、両会議所が協力して信州まつもと空港を利用した善光寺御開帳参拝モデルコースを提案することができました。ベクトルを一つにする私たちにとって、大きな一歩だと思います。
これまでは善光寺さんで御開帳があっても、松本ではどこか余所ごとのように感じていました。ご寄進を依頼されるのも、個人単位のことでした。それが組織と組織の交流に発展したことには大きな意義があります。
また、善光寺さんは歴史と伝統のある寺院ですから、私どもとしても商売の垣根を越えて、そのご利益を北海道や九州の皆さんに訴えやすいことも、この取り組みが成功している要因かと思います。
加藤 長野の私共も、これまでは善光寺さんに来てくれさえすれば、後はどこに行こうが、またどこを観光しようが、他所のことと余り、気にかけていないところがありました。また私自身も、今まで信州まつもと空港には、それほど関心をもっていませんでした。北信の人の多くが同じ思いだったでしょう。しかし、今回のことで長野市民も北信の方々も、信州まつもと空港の存在を再認識されたことと思います。福岡と札幌へのキャラバンは、新聞をはじめマスコミで取り上げられ、各方面からとても好意的な評価をいただいています。
― 今回の取り組みは、今後両市の他の観光資源についても、さらには観光以外の連携・交流へも発展していけばすばらしいですね。
加藤 成果を急ぐよりも、初めて実現したこの連携・交流の芽を大事に育てていきたいと思います。地方の経済が停滞して久しく、これまでのように県内競争に時間やコストを費やすべきではありません。工場誘致にしても、県などと協力しつつ、複数の地域が一体となって、連携し、県間競争に勝ち抜き、県全体の活力を向上させることであると思います。
井上 かつて「信州を狙え」を合言葉に県外企業が数多く長野県市場に参入した時代がありました。こうした状況に対し、長野県企業は責められると弱い体質を露呈していました。加藤さんがおっしゃったように、長野、松本という狭い地域ではなく、長野県をひとつの地域とする視座を持ちまとまっていくべきです。ですから、今回のような連携は非常に効果的です。
加藤 長野では今、リニア中央新幹線のルートについての議論も高まってきていますが、このことも北信の私たちは、今まで余り関心がありませんでした。しかし、諏訪や伊那地域だけでなく、松本を含め広く長野県全体の経済の発展を考えると、Bルート(茅野―伊那―飯田を通るルート)が望ましいことは明らかです。
井上 村井知事は、県が認めない限りJR東海側にルートを決定させないと断固たる態度をとっているので私どもも安心しています。しかし油断はできません。松本の経済界としてもBルートを強く望んでいます。
加藤 今後は、行政に提言・要望する側の我々も、また県をはじめとする行政も、部分最適より全体最適を優先させて考えていくべきでしょう。
井上 信州まつもと空港の利用促進や政経懇談会についての加藤さんの提案はその呼び水となり、私たちが取り組んできたことは今後の下地になりました。具体的には、今後コンベンション誘致に関しても、松本と長野で連携が進んでいくものと期待しています。
長野商工会議所では、善光寺御開帳
に向け、まちづくりに努めます
― 続いて、各々の会議所において、現在どんな取り組みがなされているかお聞きしたいと思います。まず加藤会頭いかがですか。
加藤 現在、善光寺御開帳奉賛会では、今回初めて関係団体と広報連絡協議会を設立して、連携して、全国に向けて誘客活動を強力に推進しています。
私どもは、今のような厳しい経済状況の中で、この善光寺御開帳を長野市から県内地域に、そして日本の景気回復の起爆剤となるよう、全力で、全国に発信してまいりたいと考えています。この御開帳に向けて、地元の長野市民をあげて取り組める企画を考えています。まず、善光寺如来様の「48願」に因み、善光寺表参道に48基の灯籠を建立します。また、松代支部には伝統の「回向柱」のご寄進の行事を、篠ノ井支部では長野市の無形文化財であります2頭の「大獅子舞」の奉納行事などを行い、長野市民全体の行事として盛り上げてまいります。
加えて、善光寺の門前町にふさわしい街づくり、仏都の清らかさに癒される街づくりに向け、2014年に新幹線が金沢まで開通するまでに、表参道の全面石畳化、さらに長野駅が、仏都に相応しい駅舎となるよう提案していきます。また、全国からお越しになる参拝客の皆様へ一つの大きなホスピタリテイとして、歩行中の喫煙、タバコのポイ捨てを禁止するなど、まちの美化運動も進めていきます。
一方で、少子化の進展に少しでも歯止めをかけるため、県内の企業に勤務する未婚男女の結婚促進の支援を目的に、マリッジマッチング事業の立ち上げを計画しています。
松本商工会議所は、中心市街地の活性化に
本腰を入れて取り組みます
― 松本商工会議所では、どんな取り組みに注力なさっているのでしょうか。
井上 初めにも触れましたように、おかげさまで当会議所は100周年を迎えることができましたので、記念式典を通じて、あるいは資料収集を通じて歴史の検証をしています。
そして、次の100年に向けての第一歩としては、中心市街地の活性化を中心テーマに据えています。ご多分にもれず、地方都市の中心市街地空洞化問題は松本市でも深刻です。
そこで、TMO(タウン・マネジメント・オーガニゼーション)活動として、まちづくり拠点「ふらっとプラザ」を実験的に展開してきましたし、一昨年中心市街地活性化推進会議を立ち上げました。一昨年は松本市制100周年、昨年は松本商工会議所100周年と大きな節目が続きましたので、その勢いを削がないためにも、今最大のエネルギーを投じるべきは、中心市街地活性化です。
松本にとって幸いなことは、市街地の区画整理事業がすでにほぼ終わっていることです。舞台は用意されています。あとはそこで演じる人をどう集めるかが課題となります。私どもは、市街地活性化の基本に戻るべきだと考え、中心市街地活性化のための商業ビジョンを策定しながら進めています。
その過程では、中長期的な目標と短期的な目標をきちんと整理して議論することが重要です。会員の皆さんからは、「とにかく今が大変だ」という声をよくお聞きします。政治や行政に頼らざるを得ない部分もありますが、私たちが今できることは何か、それを検討していた折、長野商工会議所から観光連携のお話を頂戴したので、たいへんありがたかったのです。
先ほど加藤さんから、マリッジマッチングのお話がでましたが、これは商店街の活性化にもつながる企画だと思いました。後継者を育てることに苦労されている商店主さんも喜ばれるのではないですか。今後、他の団体との協力も進んでいけば、モデルケースとなる可能性があります。松本商工会議所としても、こうした分野でも交流ができればすばらしいと思いました。
加藤 市街地活性化は、長野にとっても課題です。当会議所では、権堂を健全に楽しめる夜のまちとして復興させる取り組みにも協力しています。松本では、はしご横丁のように元気なまちがありますね。そうした成功例もこれから大いに参考にさせていただきたいと思います。
井上 互いの活動の情報交換を進めることで、きっと次の戦略のためのヒントが見つかるはずと私も信じています。
人が心地よく暮らせる
まちづくりに向けて
― 最後に、これからの夢についてお二人に語っていただきたいと思います。
加藤 住みたいふるさとづくりでしょうか。先ほど、タバコのマナーについて触れましたが、住環境や自然環境が美しく、豊かなふるさとになるよう、少しでも力になれたらと思います。たとえば、ホタルの飛び交うまちというのもいいですね。長野市街地を流れる川は、自然の河川が少なく、多くは用水路なので冬になると通水しません。動植物にとって不可欠な水環境が豊かにできれば、長野市はもっとすてきなふるさとになるのではないでしょうか。
先日、善光寺さんの境内の小川にカワニナ(ホタルの食虫)を見つけました。つまり、ホタルが市街地に戻ってくる可能性はあるのです。それを契機として、長野市の水風景が変わっていけばと期待しています。
井上 市街地活性化の話とつながりますが、人が住むまちになることを私は願っています。郊外大型店だけでは、まちは形成されません。年配の方が安心して暮らせるまち、歩いてすべて用が足りるまちになればと思います。市街地に住んでいただくためには、商店に元気になってもらうこと、商店の後継者を育てること等課題はあります。とはいえ、決してマイナス要素ばかりではありません。たとえばまちのシンボルである女鳥羽川では、今もさまざまなイベントが行われ、活況を呈しています。これを有効に使うことも一策です。そうして市街地に人が住み、回遊して、活気と優しさに満ちたコミュニティが復活すること、それが私の夢です。
― 新年にあたり、たいへんいいお話が頂戴できました。本日はありがとうございました。
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