CCI

   2008年12月号 No.725




高木 正雄
(高木建設株式会社代表取締役社長 長野商工会議所副会頭)
昭和23年長野市生まれ。獨協大学経済学部経済学科卒業後、日産ディーゼル工業を経て、昭和48年高木建設株式会社入社。昭和50年取締役、平成7年代表取締役副社長、平成11年11月より代表取締役社長に就任し、現在に至る。
  

  


自社技術の
差別化と提案力が
これからの建設業の課題


 他業界と比べても極端に厳しい経営環境の中、長野市の基幹産業である建設業が健全な発展を遂げるために、長野商工会議所の建設工業部会・建設関連部会は公共事業の発注側との意見交換会や提言を行いました。こうした活動を継続するとともに、建設業界内部においても、各社が独自のカラーを生かした営業展開をし、新しい需要を自ら開拓することで、打ち克っていくべきだと考えます。

県内建設工事の発注額は、
ピーク時の半分以下に


─ 建設業界を取り巻く環境は、他業種と比較しても大変厳しいとお聞きしています。

高木 はい。県内の公共・民間発注の建設工事費は平成7年の半分以下に減少し、建設業従事者は平成8年に比べ3割減少しました。さらに、この6年間ですでに建設関連企業の4社に1社が倒産、廃業に追い込まれているという状況です。
  経営環境が厳しさを増した要因にはさまざまありますが、まず国の財政難、あるいは公共事業不要論を背景に、ここ数年で公共投資が大幅に削減されたことです。また、入札・契約制度の変更によっても大きなダメージを受け、鉄骨などの資材、原油の高騰がこれに追い打ちをかけました。また、受注を民間に求めても、先行き不透明な経済状況に設備投資を控える企業が増えており、楽観視できる状況にありません。さらに、昨年6月より施行された改正建築基準法による建築許可の大幅な遅れによって、建設業界はますます苦境に立たされています。

最低制限価格引き上げ等を
会議所として提言


─ そんな中、今年の8月上旬には長野商工会議所の建設工業、建設関連の両部会に所属する業者と、発注者側との間で意見交換会が行われました。

高木 これまで業界団体として行政に陳情をするケースはありましたが、会議所としてこうした機会をもつのは初めてのことでした。当会議所において建設業に関連する会員数は、全会員の3割を占めています。地方財政や市民の目線が厳しい今、ただ単に公共工事増強を望むことは難しいと認識していますが、今回行政との間に新たな接点を持てたことは大変意義のあることと評価しています。
  この意見交換会を終えて、長野商工会議所では入札・契約制度に関わる提言を行いました。提言は、最低制限価格の引き上げ、公共工事の予定価格の詳細の公表、また、災害出動実績加点の見直し、建設工事請負契約書における支払い期限の短縮、地元企業の活用および県産材などの取扱い、など5つの事項に渡ります。
  なかでも最も重要なのが第1番目の項目です。長野市の基幹産業である建設業が、今後も地域に必要とされる新しい社会資本の整備を担っていくためには、各企業が持続可能な適正利益を確保し、経営の健全な発展を遂げなければなりません。しかし、公共事業の予算削減等により競争が激化しているなかで、ダンピング受注競争が横行しています。現在でも予定価格の80%前後、以前には50%というケースもありました。こうした状況が続けば、公共事業の品質確保、安全確保に懸念が生じ、また技術と経営に優れた企業でさえ経営悪化に陥る危険性もあります。すでに国土交通省は、平成20年度の入札から低入札価格調査基準価格の引き上げを行っていますので、市の入札・契約においても、最低制限価格を引き上げていただくとともに、不良不適格業者を排除して、技術においても経営内容においても市民の信頼に十分に応えられる企業へ発注できる入札制度に改善していただきたいと提言いたしました。

職人の伝統の技術を
後世に伝える家づくり


─ 一方で、建設業界に属する各企業においては、今後どんな経営が求められますか。

高木 各社の特徴を生かすことで、民間需要を開拓していくことが重要でしょう。一時期、建設業者が林業など他業種に挑戦する動きもありましたが、成功した事例はわずか1%程度です。素人が一朝一夕に成功するほど、簡単なものではないのです。
  ですから、あくまで本業で活路を見出すことだと思います。企業にはそれぞれに、時代と地域の要請に基づく生い立ちがあり、売りとする技術があります。受注産業である建設業は、これまでとかく待ちの姿勢に甘んじていたところがありました。これからは、各社各様の技術を積極的にPRし、お客様との間できめ細かなコミュニケーションをはかるべきです。そうして、お客様が抱える問題を解決するための技術提案を自分たちが主体となって行い、これをきちんと形にしていけば、やがてその信頼が新しい市場を開くことにつながると考えます。
  たとえば当社では、古材・古民家を利用することで、伝統の技術を後世に伝える家づくりに取り組んでいます。幾星霜を経て残った建物を現代に甦らせて再利用していくことは素晴らしいことだと思います。壊すことは簡単ですが、一度壊してしまうと、その建物自体はもとより、そこに息づいた職人の技も、暮らしの文化も、もう元に戻すことは不可能です。それが今手を加えることで、これからもまた長い年月生かすことができるのです。先人の造った建物に手を加え、また次の世代につなげてゆくこと、それは私たち建設業に携わる者にとって冥利に尽きる仕事だと思います。
  環境や資源問題への関心がますます高まり、また、豊さの質を見直していこうという人たちも増えています。現在、住宅市場で新築よりもリフォームの需要の方が大きくなっているのも、単に経済的事情だけではないと思います。今一度、私たちは時代の声と地域の声に耳を傾け、自分たちに固有の技術をもって何ができるか、問い直してみるべきかもしれません。



高木社長の横顔
趣味は、お肴を披露するため20数年前から習い続けている謡曲。ほかに、焼き物など骨董の鑑賞・収集、そして週末には薪割りも楽しむ。自社ホームページの「社長☆まさおクンのブログ」も人気。

  




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