CCI

   2008年11月号 No.724




宮崎 一治(長野通運株式会社代表取締役社長
長野商工会議所副会頭、(社)長野県トラック協会会長
長野県トラック事業協同組合連合会会長
長野市交通対策審議会委員長)

昭和13年長野市生まれ。日本大学理工学部電気工学科卒業後、NEC日本電気株式会社に入社し、無線機器などの開発に取り組む。昭和41年長野通運株式会社に入社。52年代表取締役社長に就任し、現在に至る。
  

  


安全・安心、かつ省資源・
効率的な輸送体系の構築が、
運輸業界のテーマです


 長野通運は、自社開発の配送センターシステムを活用することで、物流を徹底して効率化するとともに、顧客に安全と安心を提供しています。業界を取り巻く環境は厳しいですが、私たちの自助努力により、適正な競争と企業の収支改善を実現することは可能だと思います。

業界全体の自助努力で
適正競争を目指す


― 宮崎社長は、長野県トラック協会の会長も務めておいでです。業界を取り巻く現在の環境についてどうお考えですか。

宮崎 軽油価格の高騰や過当競争など、非常に厳しい状況にあります。
  まず軽油価格についてですが、今後も高止まりの状況は続くでしょう。トラック業界にとって燃料は生命線です。軽油価格が値上がりになった部分だけ運賃を上乗せする燃料サーチャージ制度の導入が望まれますが、過当競争の中でこれに踏み切れずジレンマを抱える企業が数多くあります。協会としては、同制度の導入を図る県内企業を支援していくつもりです。また、省資源のために輸送効率を上げる仕組みづくりが、今後大きな課題になります。
  一方、規制緩和が進んだことで、県内に事業所を置く運送業者の数が増加していることも、さまざまな問題を孕んでいます。現在、県トラック協会には526社(平成20年4月現在)が加盟していますが、会員でない企業も約200社あります。公共財である道路を使わせていただく私どもにとって、安全・安心な輸送こそ第一の使命です。これをいかに周知徹底していくかも大事な課題です。
  また、現在話題になっている道路特定財源の一般財源化は、私たち地方の運送業者にとってたいへん理不尽な話です。安全・安心な輸送の実現のためにも、地方における道路の確保は重要な問題と考え、一般財源化には協会として反対していきます。
  運送業界は、メーカーのように生産計画を立てることもできなければ、仕事を蓄えることができません。明日の輸送が決まるのが、今日の夕方だというのが現状です。荷主の要求にジャストインタイムで応える機動力を備えながら、経営や資源の無駄を省き、さらに適正な利益を確保することは、たいへん難しい状況ですが、業界全体の自助努力で適正な競争ができる環境づくりを進めていきたいと考えています。

自社開発の配送センターシステム

― 今お話に出ました安全や安心、あるいは効率的な輸送について、御社における状況を教えてください。

宮崎 まず安全・安心についてですが、昭和25年の創業以来、死亡事故ゼロ、後遺症を残す事故ゼロ、飲酒運転ゼロを継続し、プロドライバー事故防止コンクールトラック部門の表彰においても、最優秀賞を連続して頂戴しています。当社では、警察のご厄介にならなくても不安全行為があれば事故と見なします。この厳しい自社基準をクリアし、100万キロ無事故を達成したドライバーが過去に15名ほどおります。また、構内作業においても20万時間無事故をひとつの基準としており、これらを達成した社員には、ペアのハワイ旅行をプレゼントします。
  輸送効率の向上については、当社独自で配送センターシステムを開発しました。食品関連の企業物流を主体とする当社は、お得意様のスムーズな事業活動に資することが最大のテーマです。私どもは、お客様の工場の中まで入り込んで、在庫管理や出荷管理まで含めた総合的な物流を提案しています。そこで数億円を投資してつくったのが、「まるうん1号」「まるうん2号」です。このシステムは、56台の無線端末により、入庫作業、集荷作業、積込作業を同時進行します。リアルタイムでスルー型配送センター業務が可能なうえ、配送履歴の確認、ロケーション管理もできます。同じ行き先に複数台のトラックが行く場合には、在庫のあるものから集荷と積込をすることで、待機時間が短縮でき、効率よくトラックが出発させられます。また、積荷明細書がトラック毎に出るので荷降ろし先での検品にも役立ち、さらに棚卸の要らない正確な在庫管理にも貢献します。このシステムにより、当社のお客様はもちろん、その先にいらっしゃる消費者の皆様に対しても安全・安心をご提供していると自負していますし、社内的には配送の標準化が実現できたことが大きなメリットでした。
  システムの整備を図る一方で、社員が安心して働ける環境づくりにも努めています。当社には、子どもが生まれた社員に一人55万円の祝い金を贈る制度があります。日本の人口が減少すれば、どんな業種であってもその市場は縮小します。家族手当、福祉手当といった制度は、企業が継続するための自己防衛であると同時に、この国に対する企業の責任です。また、こうした制度が、物流の安全・安心にもつながると考え、今後も継続していくつもりでいます。

公共交通の
ドラスティックな改革を


― 長野市交通対策審議会の委員長としてのお立場から、今後の公共交通のあり方についてひと言いただけますか。

宮崎 お年寄りや子ども、身体の不自由な方など交通弱者のモビリティをどうやって確保するかがやはり大きな問題です。
  地域の路線バスが経営的に大きな負担を抱え、廃止されるケースが出てきました。公共交通を私企業であるバス会社に任せ、赤字になった場合に自治体が補填するという現在の仕組みは、抜本的に見直していく必要があると思います。公共交通機関のあり方と負担の原則について、市民の皆様にもう一度問い直してみてはいかがでしょうか。そのうえで、国内外の優れた事例を参考にしながら、バスやタクシー、列車などあらゆる交通手段を巻き込んだかたちの、新しい公共交通体系をつくっていくことが求められていると私は考えます。



宮崎社長の横顔
趣味は読書と旅行で、年に2回は奥様と2人で海外旅行を楽しむ。旅先にはいつもビデオカメラを持参し、撮影した映像は帰国後ご自身で編集する。現在、長男夫婦、お孫さん3人との三世代同居を楽しんでいる。

  




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