CCI

   2008年 10月号 No.723

元気なまちづくりの秘訣は
買物が楽しい店、歩くのが楽しい道
横田 悦二郎さん

陶器店 横文 店主






 日本を代表する金型メーカーの社長として世界狭しと活躍してきた横田さん。社業を引退した今も金型界のトップリーダーとして大学院で後進を指導し、講演等でも多忙を極めておられます。グローバルな視点を生かしたまちづくりへの提言は示唆に富み、聞く人を魅了してやみません


看板を守りに長野へ


創業以来100年以上にわたり町並みの移り変わりを見つめてきた瀬戸焼の狸は今も店のシンボル
  「世界に勝つモノづくり」の実践者として、長く日本の金型産業を牽引してきた横田さんが、社業の引退を機に長野へ帰って来たのは、実家である中央通りの陶器店「横文」の三代目を継ぐためでした。
    「数年前、地元TV局のスペシャル番組で取材を受け、”跡を継ぐ宣言“しちゃったからね」と、ユーモア混じりに話されますが、その胸の内には、老舗の看板を継承する覚悟に加え、善光寺表参道に店を構えるひとりとして、界隈のにぎわいに貢献したいとの思いがあったようです。
  先代の没後、4年ほど閉めていた店舗を、階上の住宅も含め大幅に改装し、再スタートさせたのは昨年の夏。人の背丈ほどもある瀬戸焼の狸がシンボルであることは昔も今も変わりませんが、ギャラリーや坪庭を備えた店内は、見るのも品選びをするのも楽しい、魅力的な空間に生まれ変わりました。
  「生活に必要なものは、何でもスーパーで買う時代。人があえて商店街で買うのは、買物そのものを楽しみたいからでしょう。それに応える店作りとプロ意識のある接客が重要です。量販店と戦うのではなく、小売店らしい魅力を発信しなくては」

道具立てが揃っている表参道


ギャラリーや坪庭がある店内では、横田さんや奥様と会話しながら買物や品選びをする楽しみがある
  住居3階のテラスは、表参道の町並みを一望できる絶好の定点観測地点。横田さんはしばしばここにたたずみ、人の流れや通りの様子を飽かず眺めながら、まちづくりに思いをめぐらすそうです。
    「ここには緑豊かな山がある。暗渠になってはいるが、豊かな水の流れがある。気のきいた建物もある。公園にしたら魅力的なセントラルスクゥエアもある。善光寺もある。人が集まるための道具立ては十分に揃っているんです。しかしそれが有機的につながらず中途半端な状態にあることが、にぎわいを阻んでいると感じます。これからは新しいものを増やすのではなく、今ある魅力を住民が自覚し、うまく組み合わせ、機能させることが大事でしょう」

決め手は「食べ物」と「ノスタルジー」

 人を惹きつけるのは「食べ物」と「ノスタルジー」だと言い切る横田さん。「一口で食べられる程度の美味な ”名物“がいくつもあり、散歩道のような店舗や施設があり、店や案内所の人との触れ合いがあり、写真を撮らずにはいられないようなスポットがあれば、訪れた人は ”長野へ来た“実感に満足感を持つ」という説には説得力があります。
  「人が6時間滞留する街にしたいですね。”うちの店ではお客さまが10分は楽しんでくれる“といった分単位の積み重ねが、街の魅力を高め、にぎわいを育んでいくはずです」


横田 悦二郎
陶器店 横文
長野市西後町1626
Tel.026-232-25225
陶磁器、食器、生活雑貨等の販売、ギャラリーでの展示


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