CCI

   2008年 3月号 No.716

人生の先輩たちとともに
ふるさとの「農」と「食」に
携わる。
権田 辰夫さん

株式会社 小川の庄 取締役代表





 幼い頃から慣れ親しんできた食べ物を表す「ソウルフード」という言葉を、よく耳にするようになりました。昨年十二月、「郷土料理百選」のひとつに選ばれた「おやき」は、まさに信州のソウルフードといえるでしょう。株式会社小川の庄で製造販売するおやきは、地元産の小麦粉や野菜を原料に、地元の高齢者たちが一つひとつ手作りしています。特に小川村の「おやき村」や長野市ぱてぃお大門の「小川の庄大門店」では、囲炉裏の火でこんがり焼き上げた熱々を、その場でほおばることができます。囲炉裏端に集い、笑顔や言葉を交わし合いながら味わう…素材の味と手作りの温もりがストレートに心に響き、味わいもひとしおです。

 「これを懐かしいと感じるのは、日本人ばかりではないんです。小麦粉に具を包んで調理する家庭料理は、実は世界中にあります。その中でもおやきは作り方がいたってシンプルなので、食の原点と呼ぶ専門家もいます。完成されたごちそう料理とは違う、常に未完成の素朴さが、海外の方々にも懐かしさを感じさせるのでしょう」。

 権田辰夫さんは、社長として携わる小川の庄の活動を、農業を基盤とする村の産業と位置づけ、「農」と「味」へのこだわりを何より大切にしています。米こそ穫れませんが、この地域には、古くから小麦粉、大豆、野菜などの産地として優れた農作物を生み出してきた伝統が息づいています。地域の農産物を加工し、世に誇れる製品を送り出すことで、その伝統に再び光を当て、四季の輝くような農村風景を村に取り戻したいと、権田さんは考えています。そのため、単に「素朴さ」に終始するのでなく、「おいしさ」の追求にも余念がありません。「昔ながら」を踏襲しつつ、素材や配合の工夫を重ね、味わいを確実に進化させているのです。

 こうした事業を展開する上で、高齢者の存在が欠かせません。小川の庄には定年がなく、八三歳を筆頭に六十歳以上の面々が、社員として工場や店舗で元気に力を発揮しています。

 「おやきや漬け物の技術はもちろんですが、人生の先輩としての知恵や常識、そして心映えに助けられます」。

 権田さんは、高齢化社会の到来を早くから予測し、仲間七人とこの会社を創業した兄を、営業の立場で支えてきました。急逝した兄に代わり社長となった今も、創業の思いを大切に引き継いでいます。昨年は「平成十九年度高齢者雇用開発コンテスト」で、厚生労働大臣表彰特別賞の栄誉にも浴しました。

 「高齢者が仕事に寄せる愛情と責任感には、いつも胸打たれます。だからこそ仕事に喜びを感じられる仕組みや、収入につながる展開を考えていきたいですね。高齢化が進んでも村は活性化していく…それを支援できる事業に携わっていることが、私の喜びなんです」。


小川の庄
〒381-3302 上水内郡小川村高府2876
TEL 026-269-3760
FAX 026-269-3763
http://www.ogawanosho.com/
○おやき村
 9:00〜17:30 月曜(祝日の場合翌日)休
 TEL 026-269-3767
○小川の庄 大門店(ぱてぃお大門内)
 10:00〜18:00  TEL 026-232-5786


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