人の心を癒し、地球環境を救う竹。活用の道をさらに探り、伝えていきたい。 小出 九六生さん 小出竹材店相談役竹工創芸・竹の手仕事人
十一月十三、十四日の両日、長野市で「全国竹の大会」が開催されました。林野庁、長野県、長野市の後援を受け、全国の竹に関わる企業や人が一堂に集い、一般市民も交えて行われたこの大会を、実行委員長としてもり立てたのが小出九六生さんです。 竹産地として規模が小さく業界の組織もない長野県での開催は、容易ではありません。しかし、荒廃していく竹林や里山、竹文化を継承する後進が育ちにくい現状などに日頃から危機感を募らせていた小出さんは、自然との共生や日本の伝統文化の素晴らしさを、竹を通じて多くの人に実感してもらおうと東奔西走。まさに全身全霊を注ぎ、全国に広がる竹産業・竹文化の集大成となるような大会を企画し、みごと成功へと導きました。 「ひとえに皆さんのご理解とご支援のおかげです。心のこもった激励が大きな力になりました」と、顔をほころばせる一方で、「日本の竹産業が抱える課題が、予想以上に深刻だという現状を認識する機会ともなりました」と、表情を引き締めます。 小出さんと竹とのつきあいは五十年余。職人として竹材を扱う技術を磨くだけでなく、全国の竹産地を歩いて生産の実態や竹の産業・文化に関する幅広い情報を蓄積してきました。今では総合的に竹を語れる全国でも数少ない専門家として知られる存在です。今回の大会では、豊富な経験や人脈を駆使し、全国の竹製品や竹文化の技を集めた展示を実現。ところが、これが思いのほか困難でした。デザインも作り方も画一的で安価な輸入品に押され、各地に固有の竹工芸品や生活に根ざした竹製品の多くが既に姿を消していたのです。 「かつて農業や建築で使われていた竹材が樹脂製品に代わり、竹産業の発展は水を差されました。今度は輸入品が日本の竹文化を厳しい状況に追いやっている。これは竹林や里山の荒廃といった環境問題にも直結しています。日本人が育んできた美意識や感性を次代へ伝えていく上でも危機感を覚えます。もっと竹を活用できないか…最近は常にそんなことを考えています」 飯綱山が雪化粧したこの日、小出さんが取り組んでいたのは「初音」づくり。かつて、善光寺の界隈で二年詣りの夜、売り歩いていた素朴な玩具です。数年前、市内の有志の依頼でその復活に手を貸したのが縁で、今も冬になると初音づくりの講習に引っ張りだこなのだとか。日本中の誰も真似できないといわれる高度な竹垣に取り組む時と変わらず真摯に竹と向き合い、誰に対しても同じように竹への思いを伝え続ける小出さんの姿が、そこにありました。竹の手触りとそこから響くウグイスの音色は、実にほのぼの。日本の美しさをひとつ見つけた気がしました。