CCI

   2007年 6月号 No.707

デザインを通して
愛する街、長野を
もっと楽しく明るくしたい
轟 久志 さん

トドロキデザイン





  ゴールデンウィーク中、長野市街地を彩った「善光寺花回廊・長野花フェスタ」。テーマの一環である「風林火山」ゆかりの人物に扮した案内人の登場が話題を呼びました。中でも隻眼の武将・山本勘助の姿で、ひときわ注目されたのがグラフィックデザイナーの轟さんです。

 轟さんは、ものづくりの楽しさを体現するクリエイターズ・ユニット「nana*t(ナナット)」のメンバーでもあり、今回、仲間とともに「花キャンパス」のデザインを担当。イベント期間を通し、フェスタのバックアップに尽力しました。「長野は生まれ育った場所であると同時に、生活や仕事のベース。自然は豊かだし、独自の食文化や人を癒す雰囲気があり、心から好きな場所のひとつです。その魅力をデザインで発信したい。デザインを通じて、この街をもっと楽しく、明るくできたら…そんな思いで、自らも楽しみながら、いろんなことに挑戦しています」。

 子どもの頃からデザインや絵に興味があったという轟さんですが、職業としてデザインを志したのは、会計事務所に勤務し、数年にわたる社会経験を積んでからのことでした。やりたい仕事をやろうと一念発起して長野・東京のデザイン学校で学び、デザイナーとして社会に出たのが二五歳の時。折からの就職難を乗り切るため、自分でデザインして作り上げた履歴書や封筒、そして自己PR用のパンフレットを持参して自分の売り込みに奔走しました。就職後は、デザイナーとしてのスタートが遅い分、人の倍やらなくては追いつかないと、仕事と勉強にひたすら貪欲に取り組みます。さらに時間を見つけては上京して展覧会や街を見て歩き、公募展の情報があれば積極的に出品。まさに寝る間を惜しんでのデザイン三昧ですが、「好きだから、少しも苦にならなかった」と、当時を振り返ります。

 平成十七年、轟さんは念願の独立を果たし、「トドロキデザイン」を立ち上げました。デザイナーの役割を、ものではなく「コトを創る仕事」と位置づける轟さんが最も大切にしているのは、デザインという手段によって「何をどう伝えるか」ということ。それを的確にとらえるため、仕事を発注するクライアントとできる限り直接対話し、消費者の指向や時代の傾向と照らし合わせながら伝えたいことの本質やその方法をていねいに整理していきます。その上で、目的に最も合うデザインをまとめ上げるのです。「いたずらに個性を出したり、無理に振り向かせたりする必要はないと思っています。伝えたいことが自然に見た人の胸に落ちる、そんなデザインを心がけています」。

 そうした視点から、「長野に合うデザイン」を模索し続ける轟さん。勘助に扮し、花いっぱいの街に溶け込んで人々と交流するひとときにも、新たな創造の芽を見出しているのかもしれません。


トドロキデザイン
〒380-0871
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