心の垣根をふっと乗り越えて気持ちが通う…そんな力があるよね三線に出会えて、本当によかった 北村 親雄 さん 沖縄風時空間 太陽家 いのー
沖縄料理の店「太陽家いのー」は長野では珍しい、三線(さんしん)演奏を聴くことができる空間です。毎週火・土曜の夜には、「長野三線の会・銀河(ティンガーラ)」のメンバーの練習風景にも出会えます。三線を指導するのは、この店のオーナー北村さん。バリアフリーに徹した店舗で沖縄風の空気感や味わいを提供するかたわら、さまざまな舞台に出演し、演奏活動を展開する三線演奏家です。北村さんは自ら主宰する「銀河」のメンバー三〇名ほどに三線の手ほどきをしているほか、長野盲学校の音楽の授業でも三線を指導。メンバーや生徒たちとともに数々のイベントや舞台に積極的に出演し、沖縄の伝統的な音楽や文化の輪を、長野の地で広げています。 北村さんは長野市のご出身。三線の最初の手ほどきは受けたものの、演奏の技術も手法も、ほとんどは独習で身につけました。尊敬する演奏家の弾き語りを聴いて、弾いて、聴いて、唄って、弾き語って…その積み重ねで今に至ります。「百回やってもできないことが、百一回目にふっとできたりすることがある。とにかく練習を重ねることで、 ”唄がこちらに近づいてくる“という感覚を実感できるんです」。愛して止まない沖縄の古典や民謡をはじめ、地域やジャンルを限定せずに三線を楽しむ北村さんに、各方面から演奏や講演の依頼が寄せられています。長野合唱団のエイサー隊との共演やオペラの舞台でフルオーケストラとの演奏もしました。 実は北村さんにとって、沖縄は長い間「大好きだけど、遊びには行けない場所」だったといいます。「第二次世界大戦の沖縄戦や米軍基地問題などを考えると、日本人として後ろめたい思いがあって、単純に ”癒しの島“なんて言えないと思って…」。その一方、古来の伝統や文化、目が覚めるほど美しい自然、人と人の濃厚なコミュニケーションなど沖縄のさまざまな魅力に、北村さんは惹かれ続けました。返還から十数年後、やっと訪れた沖縄で、北村さんはさまざまな人と出会い、文化と触れ合って、それまで以上に沖縄に対する想い入れが深くなりました。三線を学ぶなかで唄の歌詞や意味を考え、その地を想い、その唄を育んできた歴史や文化に触れる。三線にのめりこみながら、頭よりも体と心で沖縄への理解を深めていったのです。「気持ちの垣根をふっと乗り越えてしまう瞬間があるんですね、音楽をやってると。三線に出会って、本当によかったと思います」。 「いのー」は、北村さんがそうやってはぐくんできた思いを、味わいや空間や音楽を通じて発信する場。「表面的なよさだけじゃなく、もっと広い視点で沖縄を見てほしい。沖縄を知ることで、今の日本のことも、もっとよく見えてくると思うんです。その道しるべになれれば」。金曜の夜には、生演奏もあり、沖縄と長野を結ぶ三線の糸の響きに、改めてじっくり耳を傾けたくなりました。