「もともと自分は現場の人間。『雑誌あったかいご』の編集を三年やって、私自身どんどん頭でっかちになってきてるように感じていました。もう一度現場に戻って、納得できる介護を自分の手でやってみたい。現場から発信するスタンスをずっと持ち続けたいと思っていたので、じゃあやってみようと」。 一般向けに介護への理解とイメージアップを図るとともに、介護等の現場で働く人たちに役立つ情報を分かりやすく提供したい。そんな思いから二年ほど勤めた特別養護老人ホームを辞め、業界紙記者時代の同僚と女性二人で介護情報誌「あったかいご」を創刊(平成十一年)。介護保険制度が翌十二年にスタートするという追い風にも恵まれて順調に号を重ね、「あったかいご」の存在感も増してきました。 そんな中で芽生えてきた「現場に戻りたい」という思い。そして平成十四年、松代町の古民家を借りて宅老所「あったかいご」を開設しました。宅老所としての評価も徐々に高まり、現在十人ほどのスタッフが切り盛りしています。 「介護はすごく面白くて、やりがいのある仕事です。しっかりと技術を持ち、その上でやさしさやあたたかさのバランスが大事。自分に対する厳しさみたいなものも必要です」。介護に関する豊富な情報や知識を実践する場としての手応えとともに、介護専門誌出版社としての立場など、対外的評価への意識もまた良い効果につながっているようです。 「”こだわりの旅館“じゃないけれど、うちは本当に小さいところなので、利用者さん一人ひとりを大事にするという姿勢。デイサービスの八時間にこだわらず、基本的にご家族の生活に合わせたサービスをしています。これは比較的珍しいかもしれません。でも、この仕事は区分けが難しいですね。私はお年寄りの人生最後の大事な時間をご一緒してるのに仕事と割り切るのは申し訳ない気がして。人間関係も深くなるし、とはいえ一線も引かなければいけないし。うーん……難しい。スタッフもお年寄りも変わっていく中で、介護の質や考え方などのレベルを維持し続けるのは難しいけれど、ぜひそれを続けていきたいですね」。 その気持ちの柱になっているのは、自身大病で入院した経験から、ただの「病人」ではなく「倉田雅恵」というパーソナリティを持った人間として尊重してほしいという思い。「ただのお年寄り、何々病ではなく、何が好きで何が嫌いな方かというような部分を大事にしたいんです」。 大家族のような雰囲気の「あったかいご」で介護の仕事に汗する倉田さん。その眼差しはどこまでもあたたかです。