CCI

   2007年 1月号 No.702

子どもたちをどう育てていくか
演劇でできることを考えています
青木 由里さん

劇空間 夢幻工房 作・演出家




 「世の中のあらゆることを知り、そこから自分の中に立ちのぼってきたものを戯曲にしていくのが戯曲家の仕事。筆を置いた瞬間、自分ではこれが一番良いと思っても、さらに上がある。しかも奥が深い。いくら勉強してもまだまだ足りない。私にとってそれが戯曲創りの面白さですね」。

 演劇との出会いは千葉の小学校時代に入団した児童劇団。自分ではない違う人物になれる楽しさと、演じる面白さを知りました。中学、高校、そして結婚と環境は変わっても演劇との縁は切れず、移り住んだ長野でも某劇団の団員として約十年間活躍しました。

 そして平成十一年、現代表 橋詰孝博さんと二人で長野を発信拠点とする舞台専門集団「劇空間夢幻工房」を旗揚げ。以来、松代城跡などでの野外公演(年一回)を含む年数回の公演を役者として出演する一方、劇団作品すべての作・演出も手がけています。

 戯曲執筆上、一貫して追求するテーマは、生きること、死ぬこと、そして愛。それを今まさに起こっている社会問題など社会的要素で包み、ひとつの作品に仕上げていきます。

 「やりたいテーマを脚本にして舞台化する作業は大変。最初は自分にはできないと思っていました。でも、「誰だって最初は初めてなんだ。やりたきゃやればいい」と橋詰代表にハッパをかけられ、また当時大病を患ったことで「与えられた命。舞台人として悔いない生き方をしよう」と決意し、ようやく大きな一歩を踏み出すことが出来た。今もまだまだ勉強中です。もっといろいろなことを知らなければお客様を本当に感動させる舞台づくりは難しいと思っています」。

 一方、表現教育活動にも意欲的。劇団主催の「夢幻∞アクティビティーズプログラム」では自分の意思や感情を伝える「表現」としての演劇と日本舞踊の講師を務めるほか、長野市内の短大でも「ドラマワークショップ」などの講座を受け持っています。多くの人々に支えられて作りあげていく演劇の舞台づくり体験を通して、人と人とのコミュニケーションの大切さや責任感・感謝の気持ちを育てるのが狙いです。

 「教育の弊害か、今の子どもたちは一生懸命努力して何かを勝ち取るという経験をしてきていない。また目上の人に礼節を尽くす、しっかり声を出して挨拶する、ちゃんとお辞儀をするといった、当たり前の礼儀が身についていないようにも感じます。これからの日本を背負っていく子どもたちをどう育てていくか。結局、今の大人たちがしっかりしていないとダメなのですが、それを本気で考えている大人がどれくらいいるのか。そこをグサッと突くセリフなど、演劇でできることをいつも考えています」。

 演劇人として、大人として、そして一人の母親として。青木さんは子どもたちの未来への責任を常に感じています。




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