CCI

 1月号 No.690

「力のある味噌」を造るためには
これしかないと思っています
井上 元さん

井上醸造




 「味は食べる人の評価で、作り手が自分でおいしいと言うのは変ですが…。でも、こういう作り方でしっかりやっています、という部分だけは自信があります。どこも手を抜かない、その一つ一つの積み重ねが ”味噌の力“に表れていると思います」。

 明治三十年(一八九七)創業時とまったく変わらない天然醸造の味噌を造り続ける、味噌蔵の四代目。大学卒業後「流通を勉強したい」と東京築地の加工食品商社に就職し、せり場を一年間経験した後、家業に入りました。

 自宅と作業場は長野市妻科の住宅街に。敷地内の樹齢三百年とも五百年ともいわれるケヤキの大木も、問屋などの流通を通さずお客様に直接販売する商売や、注文を受けてから杉桶の味噌を掘り出すやり方も、昔のまま。顧客は全国に広がり、四代にわたる得意客や、著名人も多いとか。

 味噌造りは家族総出。手作業で洗って蒸した三百キロの米を「こうじ蓋」という箱に寝かせ、経験と勘を頼りに天窓の開閉だけで温度・湿度を管理しながら、二昼夜にわたってこうじ菌を生育します。半日かけて蒸し上げた国産大豆に、そのこうじと塩を混ぜて大桶に仕込み、約一年間熟成。仕込み途中に別の桶に移し替えて発酵を促す「天地返し」も手作業です。

 「うちにはフォークリフトが一台もありません。米袋を運ぶのも味噌を移し替えるのも身体を使ってやります。こうじ造りでは一瞬たりとも気を抜けません。そうして一生懸命製品にしようという気持ちで対峙していくと、味噌に気持ちが入っていく。今は味噌造りもスイッチ一つの時代ですが、気持ちがこもった力のある味噌を造るためにはこれしかないと思っています。お客様においしいと喜ばれ、また注文が来れば、そんな苦労など吹き飛んでしまいます」。シャイで穏やかな語り口調のなかに、味噌造りにかける熱い熱い思いがこもります。

 「ゆったりした時間も提供したい」。HPなどでの情報発信に力を入れるとともに、敷地内の築百五十年の古民家に手を入れ、来店客のくつろぎの場にしようかと思案中です。




[会議所だよりトップに戻る] [長野商工会議所トップに戻る]

ご意見・ご感想を下記へお送り下さい
長野商工会議所  〒380-0904 長野県長野市七瀬中町276
電 話:026-227-2428/FAX:026-227-2758
E-mail:ncci@nagano-cci. or.jp

copyright