CCI

 9月号 No.686

さまざまな価値観のなかで
納得のいく生き方をしたい
増沢 珠美さん

ナノグラフィカ




 「良い会社に就職しなければ幸せな人生はあり得ないという人もいれば、働かなくてもいいと思う人もいる。親には『もっと稼がなければ生きていけない』と忠告されることもあります。でも価値観はひとつじゃない。自分が身をもって体験し、納得のいくやり方で人生を実現していきたい。そのために私が選んだ選択肢がネオンホールであり、ナノグラフィカだったんです」。

 信州大学教育学部卒業後、同級生が始めたライブスペース「ネオンホール」の経営に参加。同時に小学校や養護学校の臨時教員としても働きました。「養護学校の生徒との濃密なふれ合い。その経験が今の私の八割くらいを形作ってるんじゃないかなあ」。

 二足のわらじを五、六年続けた後、ネオンホールに専念し、ライブスペースとは別の収入源をめざした「出版部」の活動をスタート。西之門町の古民家を拠点にフリーペーパー「西之門しんぶん」などを制作するほか、喫茶店とギャラリーも運営しています。

 そのユニークな活動は地元出版界や行政からも注目され、最近、長野の職人数十人を紹介する本の制作話が舞い込みました。初めての大きな仕事。増沢さんが担ったのは取材相手や印刷会社との交渉のほか、取材・執筆、撮影を担当するスタッフのまとめ役としての役割。自ら表現するのではなく、表現者のための場を創り支える仕事です。「一番は(スタッフの)彼らが自己実現すること。この仕事が彼ら自身の精神性をより豊かにし、活動領域も絶対に広げてくれるはずだと思った。だから常に、これでいいの?と問い続けたんです」。

 一方、学生時代から関わる演劇のプロデュース活動にも力を入れています。

 「昔は演劇でも音楽でも、私はみんなの前で ”きらっと光る人“(表現者)だと思ってた(笑)。でも、やると全然楽しくないの。今は役割の違いが分かった。自分の喜びはそこにはないんだと。誰もがそこに行く必要はないし、そうじゃない充足感もあるんだと」。

 「生活と密着し、そこから生まれるものを見続けたい」。仕事場である古民家を生活の場にもしている増沢さんはそう話します。




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