CCI

 2月号 No.679

こんな美味いそばを打ちたい
自家製粉に込める職人魂
西澤 一茂さん

蕎麦にしざわ




 「学生時代からそば好きで、フリーターの三年間も食べ歩きをしたり、戸隠でそば打ちを体験したり…。そんな時に出会ったのが高橋邦弘さんの本。彼の考え方と生き方にとても感銘を受けました。実際、高橋さんのそばは本当においしかった。その時、こんなそばを打ちたい、と強く思ったんです」

 大学卒業後、長野の半導体関連メーカーで生産設備の設計技術者を五年間。ハードな毎日に疑問を感じて退職後、フリーターをしながら仕事探しをしていました。そんな生活に終止符を打ったのが、当時山梨県の「翁」でそば本来の風味を生かす自家製粉の先駆者として名を馳せていた高橋邦弘さんとの出会い。

 矢も楯もたまらず、手紙と電話で弟子入りを志願。大勢の志願者が順番待ちをする中、「もう三十歳、時間がない」と必死に頼み込み、高橋さんの一番弟子が池田町で開く「安曇野翁」での住み込み修業が決まりました。

 毎朝五時過ぎに起床。すぐに底冷えのする製粉室で玄そばを自家製粉することから一日が始まります。営業時間中は店のさまざまな仕事をこなし、閉店後は親方のそばつゆの仕込みを見て憶える毎日。「徐々にそば粉を水でこねる仕事を任されるようになり、修業期間の最後の最後に、自分の思い通りにそばを打たせてもらいました。うれしかったですね」。まさにそば一色、厳しくも充実した三年間の修業でした。

 それから一年半後の〇四年六月、長野・須坂インター線に面した自宅庭に和風モダンといった趣のそば店を新築オープン。低温管理した国内各地産の玄そばをブレンドし、使用分だけ殻を取り石臼で挽いた粉でそばを打つ。そのすべてを一人でこなしています。

 「仕事のすべてを自己責任で完結できるのがそば職人の魅力。自家製粉はさらに、そば打ちに必要な工程の最初から最後まで自分で見届けることができる。まさに理想の形なんです。それを食べにお客様が何度も足を運んでくださると、多少は受け入れられているのかなととても励みになります」。西澤さんはそば打ちの魅力を熱っぽく語ります。

 「たとえそばだけじゃ物足りないと言われても今はいろいろなものに手を出さず、そばだけに全力投球」という西澤さんですが、休みには努めて他のことをするようにしているとか。「仕事一辺倒だと思考回路が固まってしまう。リフレッシュすることで、仕事のアイデアも一層湧いてくるんじゃないかな」




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