CCI

 9月号 No.674

自分の世界と人生の
広がりを実感する毎日です
小林 美恵子さん

食遊び・布遊び らくや




 それは一見して、ごく普通の住まい。門を入り、少し下り傾斜になった緑豊かな小庭の向こうに、濃い茶色地に黒で「らくや」と染め抜いた暖簾が下がっています。古い蔵の引き戸を開けると、アンティークの調度品や木綿や絣などの古布でつくられたオリジナルの洋服が置かれた、懐かしくもおしゃれな「和」の世界。食事スペースとギャラリーが一緒になった、人が集い、交流し、作品を展示する”コミュニティ・レストラン“です。

 「お店を出すなら今だ、と。ずうっと(状況が熟す)この時を待っていたんです。家族は大反対でしたけど、今を逃したらもうできないと思って、押し切りました(笑)」。

 四十九歳で調理師免許を取得。市内の病院の厨房にチーフとして勤めながら、古布を使った洋服づくり、和のアンティーク収集の趣味を生かした店づくりの夢を五年間温めてきました。それが今年五月、自宅一階洋間を和風にリフォームして実現したのです。

 自慢のメニューは旬を生かした週替わりの手づくり弁当、三日間煮込んだ玄米野菜カレー、あずき、ゴマ、黒豆をブレンドしたコーヒーなど。古い着物や布団などに使われた古布の素朴な風合いや豊かな色彩感覚とどこか響き合う、人にやさしい料理が並びます。一方、同好のグループがカルチャーの会を開いたり、七月には友人の古布作家、杉浦和子さんの作品展を開催するなど、お店は集いの場としても人気を集めています。

 「『こういうお店が長野にも欲しかった』と喜んでくださる女性のお客様が多いですね。お友だちの家に遊びに来たという感じのリラックスした雰囲気で、皆さんゆっくりと過ごされていきます。店を出して良かったこと?それは人との出会い。お客様といろいろな話をする中で、自分の知らないことがいかに多いかを知りました。日々勉強ですね。そして『おいしかった』のひと言。先日、七十代くらいのご夫婦がいらしたのですが、その日はご主人の誕生日。お帰りになる時、『素敵な時間をありがとう』と言ってくださいました。本当にうれしかった。私はこの言葉のために店を始めたんだと思いました」。

 隣にありながら、それまで行き来がなかった精神障害者共同作業所のスタッフとも親しくなるなど、「自分の世界と人生が大きく広がりつつある」と実感する毎日。今度は店内で、笛やオカリナなどのソロコンサートを開いてみようかと考えています。




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