
「めざすのは、おいしい料理とお酒をゆっくり楽しんでいただける店。おいしさはもちろん、手間暇惜しまずに仕上げた料理の見た目の美しさも大切にしていきたいです」。
和食部門の職人、さらには責任者として二十三年間勤めた公共施設を平成十五年十一月に退職。今年五月、JR長野駅前に初めて自分の店を開きました。「当初売上げ目標よりも上回っている」と滑り出しはまずまず。板敷きのフロアにカウンター席と掘りごたつの大きなテーブル席が二つのこぢんまりとした店内には、落ち着いた雰囲気が漂います。
メインのメニューは備長炭で丁寧に焼き上げる串焼き。ビタミン、ミネラルが豊富でコクがある地鶏「名古屋コーチン」の焼き鳥が自慢です。また料理人のセンスが問われるという「お通し」にも毎日工夫を凝らしています。お酒にもこだわり、「屋久島」(山口)や「飲食店で置いているのは少ない」という「麻輝」(長野)など全国から選りすぐった吟醸酒や、芋、麦、米の本格焼酎を揃えました。
「子どもの頃はいわゆる鍵っ子で、自分でよくご飯をつくっていました。そのせいか自然に料理人の道を志し、東京の料理学校に入りました」。卒業後、東京のイタリア料理店で二年間修業。家庭の事情で長野にUターンしてからは和食一筋です。
前の職場では月一回、ランチ、婚礼などの宴会料理、盛り込み料理の献立を考え、原価計算をして会議に諮り、数人のスタッフで決められた数だけ調理するという、どちらかといえばサラリーマン的なスタイル。今は当然のことながら、店づくりはもとより「午前十時から午後五時の開店間際までかかる」という仕込みや調理はすべて一人でこなします。
「お客様の入り方は日によって全然違うので、どれくらい仕込みをすればいいのかまだよく分からないというのが正直なところ。難しいものですね。でも、いつお客様が来られてもいいように備長炭の火加減はつねに整えてあります」。初めての一国一城の主としての仕事に少し戸惑い気味ですが、先輩にプレゼントされた冷蔵庫を見るたびに「腰を据えてかからねば」と気持ちが引き締まります。
「メニューはよりおいしくしようと日々改良を加えています。まだまだ試行錯誤の途中ですが、ぜひ味わいに来てください」。鮮やかな黄色い暖簾をくぐると、一日の疲れを癒してくれるおいしい時間が流れています。