2021年11月号

View Point

後藤 繁夫(ごとう しげお)

長野税務署長

昭和36年長野市生まれ。長野高校卒業後、関東信越国税局に採用され、税務大学校での研修後、上田税務署に配属。国税局調査査察部次長等を経て、令和3年7月長野税務署長に就任。

事業継承をスムーズにする税制手当など
 皆様のお役に立つ情報の発信に努め
  地域の事業者の皆様をサポートします

 コロナ禍により観光業が盛んな長野県が少なからぬ影響を受けたことは、法人税の申告事績を見ても想像に難くありません。また、中小企業経営者の皆様のなかには、事業承継についてお悩みの方も多いことと思います。長野税務署では、皆様のお役に立つ税制上の情報のきめ細かな発信と、親切・丁寧な対応に努め、税制面から皆様の事業をサポートしてまいります。

地域が元気であることが
日本全体を盛り上げる

── 長野税務署長に就任されてのご感想をお聞かせください。

後藤
 実は私は長野市の出身でして、この長野税務署にはとりわけ愛着があります。一方で、長野税務署は明治29年に設置された歴史と伝統ある税務署です。79代目の長野税務署長を拝命したことに職責の重さを感じ、身の引き締まる思いです。
 長野税務署は、2市3町2村(長野市、須坂市、小布施町、信濃町、飯綱町、高山村、小川村)を管轄します。管内は戸隠山や飯縄山をはじめ豊かな自然に恵まれており、まさに山紫水明の地です。特に寒さ厳しい冬を乗り越えるからこそ、草木が一斉に芽吹く季節には、大地も大気も生命の喜びに満ち溢れます。
 また、善光寺をはじめとして戸隠神社、小布施の北斎館、松代の真田邸など名所や旧跡が各所にあって、歴史や文化の薫り高い地域でもあります。産業は、観光や製造業以外に農業も盛んで、ブランド力のある果樹等が消費者の心を掴んでいます。管内市町村の皆さんはそうした地域の魅力を各々活かしながら、産業振興や地域おこしに取り組んでおられ、特色ある「もの・こと」消費の売り込みにたいへん努力されているという印象を持っています。日本全体を盛り上げるためにも、やはり、地域が元気であることがいちばんです。
 他にも、長野県は酒類の製造場数が多い銘醸地です。本年6月30日㈬には、長野県産の日本酒と長野県産のぶどうを使用したワインが全国で初めて同時に「酒類の地理的表示(GI)」に指定されたほか、日本酒の全国新酒鑑評会においては金賞数及び入賞数で長野県が全国1位となりました。日本酒も長野県産のぶどうを使用したワインも味わってみるとそれぞれ特色があり、多様化する嗜好に訴える力を持っています。税務にとってお酒は大切な振興対象の一つですので、長野県の酒類が一層発展するようお手伝いしていきたいと考えます。
 ところで、今日まで37年間、国税の仕事に就くうち、私は長く法人税の調査に従事し、数多くの企業で不正経理を見てきました。不正経理はその芽を早く摘まないと会社の存続も脅かしかねないので、過去には従業員の不正を指摘した企業の代表者から感謝されたこともありました。適正・公平な課税と徴収の実現のため、厳格な調査を実施し不正経理を正すとともに、納税意識の高い方には適正納税のサポートを積極的に行うことが必要であり、2つを車の両輪のように進めることの意義を日頃から署員にも話しています。

コロナ禍の影響が大きかったと
思われる長野県

── 現在の長野市の経済状況、中小企業が抱える課題についてどうご覧になりますか。

後藤
 税務署としては経済状況を見ているわけではありませんので、私個人の感想になりますが、税収等から見ますとコロナの影響は否めないと感じています。景況を判断する一助として、関東信越国税局(埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県、新潟県、長野県を管轄)が発表した法人税等の申告事績でお話しいたします。
 令和元年7月から令和2年6月末までの法人税等の申告税額は、関東信越国税局全体で6、014億円、前年比3・0%(183億円)の減少でした。長野県では申告税額が762億6、400万円で、前年度比7・8%(64億4、900万円)の減少です。これは関東信越国税局管内で一番の大きな減少率でした。また、源泉所得税等の税額は1、453億円で、前事務年度比1・2%(18億円)の減少となっており、法人税等と同様に2年連続の減少でした。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、業績が悪化した法人があったこと、申告期限内に申告することが困難な企業があったことなどが要因と考えられます。特に長野県は観光立県ですので、人流が抑制されたことにより、裾野の広い観光産業が影響を大きく受けたと想像しています。
 コロナ禍の影響で納税が困難な方には、現行の猶予制度が認められる場合があります。猶予をすでに受けている方で、猶予の期限までに納税が困難な場合も、所轄税務署までご相談ください。
 また、従前から中小企業の皆様が高い関心をお持ちの事業承継についても、近年税法上の手当が充実してきています。こちらもお気軽にお問い合わせください。スムーズな事業継承が今後の長野経済の行方を左右すると言っても過言ではありません。税務署としてもできる限りのお手伝いをしてまいります。

税制に関わる情報の
きめ細かな発信に努めます

── 長野税務署では今後、長野市の経済、地域振興にどのように寄与されていきますか。

後藤
 税制改正や制度等の情報が、それを必要とする方へ適時・適切に行き渡ることが非常に大切ですので、きめ細かな周知、時機に応じた広報を行ってまいります。また、税に関する相談等につきましても、親切・丁寧な対応に努めてまいります。
 さて、国税庁、国税局、税務署では現在、ICTを利用した申告の推進に力を入れております。ICTの活用は、税務署の業務の効率化に資するだけでなく、納税者の皆様の利便性にも役立ちます。スマートフォンで国税庁ホームページ「確定申告書作成コーナー」にアクセスすることで、事業所やご自宅にいながらにして、確定申告書が作成でき、e︲Taxで申告することが可能です。医療費控除やふるさと納税などの寄附金控除をはじめ、すべての所得控除に対応しており、計算間違いなどもありません。新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点からも、非接触で手続き可能なこのシステムをおすすめします。皆様ぜひご利用ください。スマートフォンをお持ちでない方は、パソコンやタブレット端末からも申告書の作成及びe︲Taxによる送信が可能です。
 なお、e︲Taxを利用する際には、マイナンバーカードが必要です。もし、来年の申告時にカードが間に合わない場合は、暫定的な措置として税務署が発行するID・パスワードを使用いただくことで、e︲Taxをご利用になれますが、この機会にマイナンバーカードを取得されることを税務署としてもおすすめするとともに、県・市町村ともタイアップしながら利用促進に注力していきたいと考えています。
 併せて納税については、キャッシュレス納付をおすすめしています。ダイレクト納付、インターネットバンキング等からの納付、クレジットカード納付、振替納税ほか、国税庁ホームページから納付に必要な情報を入力し、QRコードを作成してコンビニで納付する方法もございます。
 最後に、先ほど申し上げた通り、多くの中小企業の皆様が経営課題と考える事業承継がスムーズに進めば、長野経済も良くなります。私どもも税法上認められた方法や特例を積極的に広報して、長野経済の活性化のお役に立てればと考えます。

 

 

後藤 繁夫さんの横顔
趣味は、海釣り、家庭菜園、山菜・キノコ採り。最近、新型コロナウイルス感染症の影響で出かけられないため、家庭菜園が唯一のストレス解消法になっている。


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