2021年2月号

View Point

瀧川 浩(たきかわ ひろし)

長野商工会議所生活関連サービス部会長
長野都市ガス株式会社代表取締役社長

1962年生まれ。東京大学工学部卒業。東京ガス株式会社入社。同社導管部長、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社取締役専務執行役員パイプライン本部長、水道マッピングシステム株式会社代表取締役社長を経て、2020年より現職。

活気ある地域を取り戻すためにも
 感染拡大防止と経済活動に加え
  文化活動にも重きを置くことが必要です

 市民生活を支える様々な業種の事業者で構成される生活関連サービス部会では、その多様性を活かして、新型コロナウイルス感染対策についての情報やノウハウの共有をしています。また、感染拡大で打撃を受けた集客に関わる事業者の施設への企業見学も行っていきます。この先、活気ある地域を取り戻すため、感染拡大防止と経済活動、そして文化・イベント活動の3つを併せて行っていくべきと考えます。

コロナ禍の取り組みのノウハウを
企業間で共有

── 瀧川社長は、昨年6月に長野商工会議所生活関連サービス部会長に就かれました。抱負とともに今後実施する事業についてお聞かせください。

瀧川
 昨年4月に長野都市ガスへ赴任してすぐ部会長に推薦され、長野の事情をほとんど知らず、商工会議所の活動も初めてなのに加え、台風19号災害からの復興、新型コロナウイルスへの危機管理など未曾有の状況下で部会長に就くことは正直荷が重く感じましたものの、皆様から強く推していただき、お引き受けすることにしました。
 当部会は電気・ガス、クリーニングなど市民生活を支える事業者、会館・スポーツ・文化・娯楽など集客に関わる事業者を中心に、多様な業種の方々で構成されています。コロナ禍で会合が制限された期間が続きましたが、まずは部会員同士の交流を行い、情報共有をし、互いの理解を深めたいと考えました。今年度これまでに開催した部会では、新型コロナに対する各事業者の取り組みや、行政や商工会議所への要望の取りまとめをしました。また、感染拡大が厳しい状況にはありましたが、例年どおり部会内の企業見学会も検討してきました。少しでも感染拡大で打撃を受けた部会員の支援につなげようと、昨年10月にリニューアルオープンした松代藩文武学校や、本年2月20日㈯・21日㈰に氷の彫刻展が開催され、スケートリンクが無料開放されるエムウェーブ等、当部会員関連の施設に足を運びたいと思っています。さらに出来れば来年度にでも、昨年同様に観光や飲食関係など関連した他部会の方々とも連携したいと考えています。
 部会活動において、情報の共有は大変意義のあることだと思います。何らかの課題に対して、自社の取り組みがどの程度の水準にあるか、自分が属する業界だけを見ていても分かりませんし、マスコミの情報からだけでは、これで充分なのか不安になります。幅広い業種の事業者が集う部会で情報を交換すると、世間の中での自社のポジショニングに気づくことができます。多様性はこの部会の強みです。
 たとえば当社はインフラ企業で、24時間365日の安定供給が使命ですので、社員に一人として新型コロナ感染者を出すわけにいきません。徹底した感染防止対策をとっていますが、同じくライフラインを提供している電力業者の事業者はさらに厳しい対策をしています。集客に関わる事業者の皆さんは、最も厳しい対策レベルを知ることができ、その情報やノウハウを共有することでご自身の事業に活かすこともできます。逆に私どもインフラ企業もやり方に行き過ぎがあれば、それに気づくことができます。

アフターコロナに向けた
デジタル化支援を

── 現在の生活関連サービス部会員の中小企業が抱える課題についてどうお考えですか。

瀧川
 新型コロナ感染拡大により、集客業に関わる皆さんの中には「仕事自体が蒸発した」と表現される方もいました。集客を伴う事業は、その担い手の多くが中小企業です。しかも今回のコロナ禍でいちばん痛手を受けた業種の一つでした。
 エッセンシャルワーカーという言葉で表現される仕事がクローズアップされたことは記憶に新しいと思います。社会生活を支えるこうした仕事は、日頃は目立つことが少なく、あって当たり前の存在のように考えられてきました。当社の事業もそうです。一方、集客に関わる文化・芸術分野やスポーツ・イベント関連の仕事は、華やかで暮らしに豊かさをもたらし、衆目を集める産業と思われていたかもしれませんが、感染が拡大すると「不要不急」の名のもとに活躍の舞台が一瞬にして「蒸発」してしまいました。しかし、コロナ禍がこれだけ続きますと、リモートとかバーチャルには限界があることに皆気づき始めます。リアルな生の体験に飢え、人が集まって一緒に楽しんだり共感したりすることの重要性を皆が感じ出しました。つまり、集客に関わる事業も私たちにとって「不急」かもしれませんが決して「不要」なんかではなく、必要不可欠だということを実感したと思います。
 同様に地域の文化活動も大切です。お祭りや花火大会が開催できなくなり、自分たちのアイデンティティや地域共通の価値観を確認できなくなりました。今は感染の拡大を抑制することと、経済を回すことがせめぎ合っていますが、文化活動も含めた3つが動いていかないと、活気ある地域は取り戻せません。このままでは人間らしさが保てず、せっかくコロナが終息しても、大切なものが滅んで無くなってしまう不安を感じます。
 また、中小企業はフットワークの良さ、きめの細かさという強みを持つ一方、お金、人、情報といった経営資源は十分ではありません。国や県の支援策への申請手続きにさえ人手が回せない事業者もいます。また、デジタル化への対応でも同様の悩みを抱えています。この度、デジタルを活用した非接触型コミュニケーションを私たちは一つのツールとして認め、その活用はコロナレガシーとなりつつあります。国の方針もあり、今後デジタル化はさらに加速し、それに伴う社内の構造改革を余儀なくされるでしょう。中小企業もそれに気づきながら、必要な経営資源を欠いています。アフターコロナを生き抜くため、中小企業へのデジタル化支援は大きな課題であると認識しています。

地域の今と未来に
総合エネルギー事業で貢献

── 貴社は地域の中でどんな役割を担っていかれますか。

瀧川
 コロナ禍で改めて気づかされたことですが、当社は地域に支えていただいている会社だということです。AC長野パルセイロなど長野に拠点を置くスポーツチームへの支援や地域イベントへの参加、ボランティア活動などは今後も継続していく一方、やはりまずは本業であるエネルギー事業で地域のお役に立つことが、私どもの目指すべきところです。
 当社のブランドステイトメントは「もっと、ながのを、ホッとに。」です。「ホッとに」には、都市ガスの炎の熱に加えて、心も地域も温かく「ホッと」するという意味も込めています。地域のホットを支えるため、当社が都市ガスと電気を供給する北信東信8市3町への安定供給と安全を死守することが、本業で果たすべき第一の地域貢献だと考えています。
 また、都市ガスは環境性能が高いエネルギーです。化石燃料の中で最も二酸化炭素排出量が少なく、窒素酸化物や硫黄酸化物も極めて微量です。非常にクリーンである上に経済性や利便性も高く、さらにガスから電気をつくることもできます。クリーンで省エネ、低コストな都市ガスの価値をお客様にご理解いただき、ご家庭や工場や街づくりにもっと都市ガスをお使いいただくことも当社の地域貢献であると考えています。
 そして未来の長野に貢献すべく、私たちはゼロカーボンに挑戦します。たとえば、メタネーション(水素と二酸化炭素から都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術)を実現することもそのひとつです。また、総合エネルギー企業として、長野で地産地消する再生エネルギー事業にも手を伸ばします。長野は、豊かな環境あっての長野です。県も脱炭素社会先進県になると宣言していますし、当社もその意気込みにお応えし、未来の地域のための事業を推進してまいります。

 

瀧川 浩さんの横顔
50歳からチェロを始めた。今はコロナ禍で仲間とのアンサンブルは叶わないが、単身赴任のマンションで時間を気にしながら弾いている。スポーツではスキーやサッカーに親しんできた。


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