2021年1月号

View Point

加藤 久雄(かとう ひさお)

長野市長

北村 正博(きたむら まさひろ)

長野商工会議所会頭

 

行政と産業界が連携して経済を回し、
みんなの心が明るく前向きになれる一年に

 一昨年10月の台風19号災害からの復興も途上にあった長野は昨年、新型コロナウイルス感染症拡大による打撃を受け、今なお市民の暮らしや経済、文化・芸術活動にも大きな影を落としています。この先、地域が元気を取り戻すには何がポイントとなってくるのか、加藤長野市長と北村当会議所会頭にご対談いただきました。
(対談は昨年11月27日に実施しました)

 

台風 19号災害と新型コロナの
ダブルパンチ

── お二人は昨年1年をどう振り返りますか。

加藤
 一昨年の台風19号災害に続き、昨年の新型コロナウイルス感染拡大により、経済はもとより文化、芸術、スポーツ等に至るまで、長野市はまさにダブルパンチに見舞われた状況です。
 台風19号で被災された皆様への支援は、国、県をはじめさまざまな皆様のご助力により着実に進んでいます。被災地のりんご畑に色鮮やかなりんごがたわわに実った様子を拝見し、現地の復旧・復興が一歩前進したことを感じています。
 一方新型コロナウイルス感染症は、今も大変な状況が続いています。ただ長野市は中核市として保健所を独自に設置しており、医師である保健所長をはじめ、保健師69名のほか、専門職や事務職員等、総勢180名の体制で対応しています。今回のコロナ対応においても、先の台風災害でも、独自に保健所を設置していることが大きな力となりました。市では保健所が中心となり、県、医療機関と連携して、まずは市民の皆様の生命と健康を守るため、医療・検査体制の充実に努めています。また、接待を伴う飲食店等の従業者を対象とするPCR検査を昨年11月に実施するなど、必要に応じて集中的な対策を講じています。
 さらに経済回復に向けて、家賃支援のほか「長野市推し店プラチナチケット」、「ながのビッグプレミアム商品券」等を発行してきました。今も自粛傾向が続き、さまざまな行事が中止となっている状況ですが、市としてはしっかりと感染対策を講じながら予定したイベントは実施していきます。

北村
 令和2年の年明けには台風災害からの復興は道半ばといった状況で、当会議所では被災企業からのご相談に継続してあたってまいりました。加えて、新型コロナウイルス感染拡大による経済への打撃に対しても、資金繰り支援をはじめとして事業所の皆さんからのご要望にお応えしています。また、家賃補助については長野市や不動産関係の皆様にお願いして実現し、飲食・小売業の皆様へは会員企業へのデリバリーサービス斡旋などもしてまいりました。今後は、長野市で発行された商品券等の活用により、小売業の皆様が栄えていただけるよう援助ができればと考えています。
 コロナ禍では、日頃よく言われる「お金は天下の回り物」の言葉通り、経済を回すことが会員企業の皆様の生活を支える糧になると感じました。今苦しんでいる事業者がどんな問題を抱えているかヒアリングして、当会議所でできること、行政にお願いしなければいけないこと、それぞれを分けて着実に対策を行っていきます。

 

善光寺御開帳の年には
長野県全域を観光一色に

── Withコロナにおけるイベントのあり方についてどうお考えですか。

加藤
  イベントや消費喚起策をこんな時期に実施して良いのかと不安を煽る人はいます。しかし、リスクと責任を逃れて誰もが自粛に走れば、それが積み重なって大変な規模の消費低減になります。これでは北村会頭の仰るように経済は回りません。新型コロナウイルスは、三密を避け、換気の徹底やマスクの着用、手洗い、うがい、消毒をしっかり行うことで感染拡大がかなり防げます。まずそのことを一人ひとりが実践し習慣化することで、安心して社会生活を送ることができ、経済も回ると考えます

北村
 昨年は長野びんずるも長野えびす講煙火大会も残念ながら中止・延期にしました。しかし、あれもだめ、これもだめばかりではいけません。取りやめるならそれに変わるものを工夫すべきです。昨年11月3日に台風災害からの復興、新型コロナの早期終息を願って実施した「千曲川流域復興等花火」は、加藤市長のご助言もあり、千曲川流域の全市町30箇所で打ち上げました。実施後、多くの皆様から異口同音「きれいだった」「よくやってくれた」とご評価いただきました。コロナに感染しない、感染させない工夫をしながら、みんなの心が明るくなる事業等を今後も企てていきます。

加藤
 善光寺御開帳が来年に延期になりましたが、戸隠神社式年大祭が今年4月25日から5月25日まで行われます。長野市では長野商工会議所と連携しながら、このイベントをメーンにさまざまな企画を実施します。私が市長就任時から善光寺御開帳を目途に進めてきたハードの整備も、県庁緑町線の開通、セントラルスクゥエアのオープンが実現しました。北部幹線、高田若槻線、国道18号長野東バイパスも順次開通します。また、県立美術館のオープンに合わせて、城山公園噴水広場の再整備も完了します。さらに、完成は御開帳後になりますが、城山公園の動物園、プール、少年科学センターをセットで再整備する方針も決定しました。こうして、大きなイベントを迎えるに相応しい態勢が市内で整ってきました。今年は、長野びんずる、長野えびす講煙火大会も前向きに開催していただきたいと思っています。

北村
 善光寺御開帳が1年先送りとなり、今年の戸隠神社の式年大祭と足並みを揃えることは叶いませんでした。そこで、当会議所としては、式年大祭に対しても様々な面でご支援しながら、この機会を翌年に控えた善光寺御開帳のPRの場にしたいと考えています。今回御開帳本番となる令和4年には、諏訪大社御柱祭や飯田のお練りまつりも行われます。さらに上田別所温泉の北向観音、松本城も含めて、多くの皆様に広域での周遊観光を楽しんでいただけるはずです。県内各商工会議所と連携し、長野県を観光一色の年にします。
 長野びんずるや長野えびす講煙火大会は、今年こそ無事に開催できる状況になることを願い
、また何が何でもやれるような工夫をしていきます。特に長野えびす講煙火大会については、1899年から続く伝統ある行事ですので、当会議所として強い思いを持っています。

 

長野市を
IT産業集積地に

── 中心市街地活性化も課題となっています。

加藤
 中心市街地活性化は、このコロナ禍でさらに重要性を増しています。権堂のイトーヨーカドー長野店の閉店後は、生鮮食品を含む複合商業施設として、既存建物を減築して活用する方向で進められています。これを機に、権堂は将来へ向けて大きく変わる転換点に来ているように思います
 市では中心市街地活性化策として、例えばセントラルスクゥエアを中央通りと一体となったイベント広場として活用して、賑わいの拠点としていくことを考えています。また、長野駅周辺第二土地区画整理事業の公共施設整備が終わりました。長野駅東口は、長野インターチェンジおよび須坂長野東インターチェンジへのアクセスも良く、今後ビジネスの拠点として発展する可能性を持っています。観光の拠点としての善光寺口と色分けが進み、共に発展していくことを期待しています。

北村
 駅を一つの境として、ビジネス地域と商業・観光地域としての性格が定まっていけば、人の動きも変わり、街の活性化にも良い刺激となります。

加藤
 また、現在県を中心に信州ITバレー構想に関連する取り組みが進んでいます。市では、善光寺門前周辺を、IT産業とそのための人材育成の中心地にしたいと考えています。すでにいくつかの企業が進出しており、昨年秋からスタートアップ成長支援事業を開始しました。学生を含め若い方の起業を支援し育成する体制の整備に取り組んでいきますので、この先市外・県外からIT産業が集積することを楽しみにしています

北村
 当会議所としても、これまで創業スクール等を通じて起業家の育成に力を入れてきました。今後こうした機会へ長野市の内外から多くの人にご参加いただけるよう努め、参加者に長野の良さを感じていただくことで、こちらへ根を下ろしてもらえるよう考えていきます。
 IT産業は、事業をするのに広大な土地は必要ありません。コロナ禍により、東京などの大都市に住み働く人の意識も変わってきました。首都直下型地震や東南海地震への懸念もあります。長野で仕事をしたい、長野で暮らしたいという機運は以前に比べ高まっています。あとは、長野でITに関わる人材をどう増やしていくかが課題です。

加藤
 北村会頭が中心となり、U-15長野プログラミングコンテストがこれまで3回実施されました。こうした取り組みも長期的にはIT人材を育成する戦略として必ず機能します。一方、ITビジネスの拠点として、昨今注目を集めているのが空き家の活用です。中心市街地のみならず中山間地の活性化を進めるうえでも、市では今後、関係事業者の皆様や地域と連携し、空き家バンクの登録を促進するなど効果的な空き家対策を進めていきます

 

高齢者の継続雇用も
地域経済を強くする鍵

── これまでお話しいただいたことに加え、地域経済を力強くするための鍵はどこにありますか。

加藤
 少子高齢化が急激に進み、15歳以上65歳未満の生産年齢人口も当然減ってきています。今の状態では高齢者1人を生産年齢人口2人で支えなければなりません。以前から私は、高齢者は75歳以上と定義すべきだと繰り返してきました。生産年齢人口も 18歳以上75歳未満とすれば、高齢者1人を4〜5人で支えられる計算になります。これからは、高齢者の活躍がなければ社会は持続できません。そのためには、高齢者自身の意識も社会の意識も変える必要があります。併せて、健康で元気で長生きできるよう健康維持増進に努めることも重要でしょう。そこで市では、「いつまでも健康に暮らす」「元気なからだをつくる」取り組みとして、「ながのベジライフ宣言~ハッピーかみんぐ1.2.30~」の普及啓発をはじめ、フレイル予防や介護予防・健康づくり施策を推進しています。

北村
 当会議所としても、健康経営優良法人の認定取得などを通じて、会社が社員と一緒になって健康を維持増進する活動を応援します。
 ところで、そもそも定年を65歳と区切るから、「自分はもう年だから仕事を辞めなきゃ」と皆後ろ向きになるのです。あえて年齢による線引きをせず、有用な人材なら幾つになっても効果的に活用できる環境であれば、「自分はまだ現役」と意欲が湧き、年齢に関わりなく働く人は増えるはずです。

加藤
 高齢者と職のマッチングは重要なテーマです。年齢に関わりなく働ける環境づくりを、行政と商工会議所が連携してやっていけたらと考えます

北村
 高齢者雇用に限らず、人を前向きにさせる情報提供や仕組みづくりは経済に力強さをもたらすうえで欠かせません。現在の報道は日々の新型コロナウイルス感染者数を伝えるばかりで、人々を一方で極端に萎縮させ、他方で誰が感染しようと構うものかと投げやりに振る舞う人を増やしているのではないかと危惧しています。私たちが向き合うべきは、暮らしにおいても経済活動においても、Withコロナをどう進めていくかでしょう。
 コロナ禍を乗り切り、アフターコロナで活路を開くには、皆が知恵を持ち寄ることが大切だと思います。当会議所の組織には委員会と部会がありますが、会員事業所はこのうち11の業種に分かれた部会のいずれかに所属しています。今年は各々の部会が互いに交流する機会を多く持てるようにします。業種を超えた交流を促すことで、明日の長野経済を回していく力を強くしていきたいと考えます。

 

  加藤久雄氏プロフィール
 昭和17年、長野市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部卒業後、42年に株式会社本久入社。平成21年6月株式会社本久ホールディングス代表取締役会長兼社長に就任。平成19年11月より長野商工会議所会頭、長野県商工会議所連合会会長を務め、平成25年11月の長野市長選に出馬、当選し現在に至る。
趣味はゴルフ、健康。好きなことばは「ピンチはチャンス」「自分の力は友達の力」
  北村正博氏プロフィール
 昭和22年、長野市生まれ。長野工業高等学校電気科卒業後、市内電子メーカーを経て、45年に長野ソフトウェアサービス株式会社を設立。47年に社名を株式会社システムリース、平成2年に株式会社システックスとし現在に至る。平成25年11月より長野商工会議所会頭。26年には株式会社信州フードラボを設立。
今も昔も仕事が趣味で、「知恵のない者は汗をかけ」が信条。


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