2020年11月号

View Point

川浦 二三郎(かわうら ふみお)

長野商工会議所建設工業部会長
川浦土建株式会社取締役会長

昭和23年生まれ。昭和41年、川浦土建株式会社入社。平成5年代表取締役社長、平成24年取締役会長に就任。

 

市の最低制限価格引き上げを契機として
 建設工業部会員が人材育成や新技術導入に
  積極的に取り組めるよう努めます

 昨年建設工業部会長に就任して初めに行ったのが、長野市発注の工事の最低制限価格引き上げの実現です。市内の事業者にとって長年懸案だった課題に、解決を見たことをうれしく思います。
 当部会では今後、これを契機に当部会員が社内の人材育成や新技術導入に積極的に取り組めるよう、新型コロナウイルス感染症への対策に留意しながら、視察研修や情報交換の場を設けてまいります。

長野市発注の最低制限価格
引き上げを実現

── 川浦会長は昨年10月に長野商工会議所建設工業部会長に就かれました。抱負とともに今年度実施する事業についてお聞かせください。

川浦
 部会長就任については、伊藤副会頭や歴代部会長経験者から推薦をいただき、「何もできませんが年の功でやらせていただきます」とお引き受けした次第です。
 部会長として一番やりたかったことは、長野市発注の工事の最低制限価格の引き上げでした。建築、土木、水道、電気等を含めた市発注の最低制限価格は89・5%で、長野県の94・5%と比べ5ポイントも下回っていたからです。そこで今年1月15日、長野市建設業協会長時代から面識のあった市の清水財政部長のところへ伺ったところ、市もかねてよりこの件を気に掛けてくださっており、その場で早期に陳情することが決まりました。
 早速、北村会頭、伊藤副会頭に報告のうえ、2月12日に市建設業協会とともに加藤市長への陳情が叶いました。その席で私が強調したのは、「このままでは若い世代に技術が継承できない。人材育成にお金を回せないと建設業の将来はない」ということでした。市長はその場で4月からの引き上げをお約束くださり、事実、今年度当初から市の最低制限価格は県並みとなりました。この問題は、部会に属する870社はじめ市の建設業界全体にとって20年来の課題でしたので、就任早々解決を見たことで、私の部会長としての務めはその大半を終えられた思いです。

 この他に当部会の事業計画といたしましては、土木・建築を問わず先進事例の視察研修を実施します。具体的には、ダム、川・堤防、橋、トンネル等の国土交通省直轄事業や、リニア中央新幹線、その他最新の建築技術や施工システムの視察、あるいは人材確保、人材育成での優良企業の視察を予定しています。このコロナ禍にあって、観光バスを仕立てた大人数での研修は実現が難しい状況ですが、会員事業所が将来に向かって一つでも得ることを見いだせるような、気付きの場、情報交換の場を設けていきたいと考えています。
 また、部会事業の進め方について会員事業所の意見を聞いたり、個々の企業が悩んでいる問題を出し合ったりする機会も新型コロナウイルス感染対策を施しながら設け、当会議所内で対応できるもの、長野市に陳情すべきもの等に整理して解決の道を探っていきます。いずれにしても、当部会員が当会議所に入っていて良かったと思っていただけるよう努めます。

技能者の人材確保と育成が
大きな課題

── 現在の土木・建設業をはじめ中小企業が抱える課題についてどうお考えですか。

川浦
 新型コロナウイルス感染が全国で拡大する中、一時期体温計を購入できなかったり、夏場の市街地での工事で感染予防のためのマスク着用と熱中症対策を両立しなければならなかったりしましたが、長野の土木・建設業者の間で感染者が出なかったのは幸いでした。
 一方、資材の調達については若干懸念しています。土木・建設で使う資材は、現在中国をはじめ海外で生産されるものが多く、コロナ禍の影響で品物が入り難くなりました。今後、国内で使うものぐらいは国内で生産し供給できる体制を資材メーカーが整備してもらえるとありがたく思います。
 恒常的に大きな課題となっているのが、人材の確保と育成です。今から20年ほど前、長野オリンピックの直後に50歳代だった人たちが、その後10年間で次々退社しました。現場を管理する技術者はそれなりに育っていますが、実際に現場で職人として働く技能者が不足し、企業にとって大きな痛手となっています。さらに、冬期の除雪にも使われる大型重機を使える人がいなくなると、市民生活にも影響が生じかねません。
 企業は存続のために常に若い人材を入れて、こうした技能者も継続的に育てていくべきなのですが、公共工事の件数、金額がずっと下降傾向だったため、人材育成に投資する余力がありませんでした。ですから、初めに申し上げたように長野市発注の最低制限価格が引き上げられたことは、私たちにとって大きな転換点なのです。
 他に課題としては、現在規模の大きな企業や大型プロジェクトで使われている新しい技術を、この地域の工事でどうやって導入し、効率化、合理化を図っていくかについても注目しています。

地元の皆さんとの
コミュニケーションが大切

── 御社はこの地域の中でどんな役割を果たしていかれますか。

川浦
 市内の建設業者は、小規模な災害が発生したとき事前に割り当てられた地域でその復旧にあたる協定を県と結んでいます。また長野市からも、大雨で道路へ木が倒れたり、土砂が流れたりしたときなど、その復旧にあたるよう緊急の要請があります。私たちは、道路や橋、トンネルを新規につくるだけでなく、既存の道路などの修繕などにも携わっています。先ほど申し上げた除雪作業も含めこうした生活インフラのメンテナンスは、地域における大きな役割だと認識しています。
 この先も、痛んできた道路の舗装のやり直しや道幅の拡幅など、既存インフラの維持保全が必要ですし、場合によっては新しいインフラを建設すべきケースも出てくるでしょう。地域に根付いた業者である私たちだから、自分たちの地域のことを自らその地域に暮らす一員としてよく見たうえで、生活者にとってベストな選択と思えることを地区の役員さんなどへ専門家の視点からアドバイスしていけたらと考えています。
 そして公共工事に関しては、授かった仕事にとにかく誠意をもって取り組みます。その際大切なことは、施工する地元の皆さんとのコミュニケーションです。地元の方との打ち合わせや説明会の機会をきちんと設けて、工事の日程、段取りなどを事前に十分ご理解いただき、工事が始まってからトラブルがないよう留意します。例えば学校建築に関わる場合、学校が出来ればそれで良し、ではなく、その工事に関わるすべての業者と地元の方とが良好な関係でいられるよう私たちは常に配慮すべきです。それは道路工事でも水道工事でも皆同じことです。
 当社も携わった善光寺門前の石畳工事では、工事の途中、道沿いにある結婚式場から新郎新婦が門前を歩きたいので一時工事を中断してほしいとの要望がありました。それにお応えしたことも含め、完工後この工事が優良工事と評価されたことをとてもうれしく思います。各々の工事でそれを施工する地域の実情に合うように、発注者の理解も得ながら工程を組むなど、私たちが常に気遣いのできる業者であれば、次の仕事へも必ずつながっていくと信じています。

 

川浦 二三郎さんの横顔
春から初夏は山に入って山菜を採り、食べるのを楽しみにしている。秋以降は漬物づくりに勤しむ。たくあん漬けも野沢菜漬けも絶品とか。


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