2020年2月号

View Point

小山 紀雄(こやま のりお)

長野商工会議所副会頭
日穀製粉株式会社代表取締役社長

昭和29年小諸市生まれ。昭和51年日本大学理学部卒業。昭和60年日穀製粉㈱入社。平成9年取締役就任。平成22年代表取締役社長就任。現在に至る。

 

時代や消費者ニーズの変化に対し
 個々の企業が自ら変わり、対応できるよう
  長野商工会議所も支援していきます

 長野市は交通インフラも整っており、長野ブランドとして売り出す素材にも恵まれています。一方で個々の企業は、時代の変化、消費者や市場のニーズの変化に合わせ、自らが変わることに積極的ではなく、その優れた素材の活かし方、発信の仕方に弱さがあるようです。長野商工会議所では、的確な情報提供とビジネスマッチング等に努め、新しいニーズへきめ細かな対応を支援していきます。

長野は他の地域より
好条件を備えている

── 小山社長はこのたび長野商工会議所副会頭に就任されました。抱負をお聞かせください。

小山
 身に余る光栄であり、私ごときに何ができるかと自問自答の繰り返しです。
 今、地方が沈んでいく時代と言われていますが、要は経済も人口も中央に集中しすぎているのです。利便性の高い中央に人が集まり、より便利になる。さらに人が集まる。相対的に地方に元気が無くなっているように見える。しかし、長野が悪くなっているとは決して思いません。長野市は県庁所在地であり、新幹線をはじめ交通インフラも整っています。他の地域よりむしろ優位にあります。好条件を活かして中央に情報を発信する、ものを売る、そして観光でも企業誘致でも長野市へ来てもらう、副会頭としてそのあたりをお手伝いできたらと思っております。

時代や消費者の変化に
私たちは気づけているか

── 決して悪くない環境において、長野の中小企業はどんな状態にあるとお考えですか。

小山
 たとえば私どもの食品業界では今後、「量」を求めたビジネスを続けたら確実に衰退します。少子高齢化でカロリー総摂取量は当然下がるわけですから。これからは「量」より「質」を求めていかないと売上は確保できません。長野県の特産であるりんごも、家族が少なければ量は要らないですよね。甘くて美味しい確かな品質のものが少しあれば良い、美味しいものなら多少高くてもお金を出す消費者はいます。
 日本酒なども同様です。長野県には全国新酒鑑評会で金賞に輝く蔵が数多くあります。昔に比べ醸造する造石数は確実に減っています。そんな中、消費者を惹きつける特徴を備えた商品を出している蔵は売れています。佐久地方などの蔵は、お互いに研鑚し合い、元気です。
 また自動車産業を例にとれば、これまでエンジンで動いていた車が、モーターで走る構造に変わっていきます。おのずとエンジンの部品を作っていた企業の仕事はなくなります。ブレーキの部品を作っている企業は生き残るかもしれませんが。私たちはその変化に気づけているのでしょうか。信州ブランドは、都会での受けは良いです。長野には良い素材がたくさんあります。ただその活かし方、発信の仕方が、とかく旧態依然としています。どんな経営者も大きく売上が落ちれば、一念発起し、何とかしようと真剣に考えますが、小さな変化を敏感に捉え、自ら変わろうとはなかなか思わないものです。しかし、真綿で首を絞めるような不景気感を自分で打破していかないと、この先が厳しいというのが実際のところです。

問われているのは、
今のニーズへの対応

── 良い素材だとしても、市場や消費者が変われば、売り方も変わるということですか。

小山
 和食ブームが世界に広がっているように、長野の食も潜在的な訴求力を持っています。ただ、今あるものをそのまま海外に持ち込んでもだめでしょう。もしお客様や市場が信州の食に健康長寿を求めているなら、その根拠を示さなくてはいけない。信州ブランドを前面に出すなら、やはりその消費者に根拠を示す必要があります。当社の場合ですと、原材料をもたらしてくれる農業を支援すべく、「株式会社ファームめぶき」を設立しました。遊休農地を有効活用して、そばの栽培を行っています。自ら農業に関わることで、原材料から信州産であることの発信に努めています。
 自分たちの今の生産物なり製品は、消費者ニーズ、市場ニーズを満たしているか、これに合わせて自分たちはきめ細かな対応ができているか、私たちは今そう問われているのです。
 同じことは観光でも言えます。長野には優れた観光資源が沢山あります。ただそれを目当てに来てくれた方が、リピーターになるかは別問題です。何度も足を運んでくれる動機となるのは、やはり「おもてなし」です。私の個人的な思いからすると、観光客にゴミを持ち帰らせるとはおかしな話です。景観になじむ統一デザインのゴミ箱を角ごとに置くべきです。一方で、地元の人がそこに家庭ゴミを持ち込まない教育を徹底すればいいのです。
 ほかにもWi︲Fiの整備は当然として、トイレがきれいなことは決定的に重要です。たとえば、有料トイレにして利用者にレシートを出し、それを持って行けば土産物店やレストランで金額分値引きしてもらえる、という仕組みをつくるのも一案です。観光客も納得しますし、長野のトイレは素晴らしいとSNSで拡散してくれるでしょう。

的確な情報提供とマッチングが
当会議所の仕事

── ニーズの変化に対し、事業者はどんなことができるでしょうか。また、商工会議所はどんな支援ができるでしょうか。

小山
 既存の方法論などにとらわれないことです。再び当社の例で恐縮ですが、そば粉をガレットやパスタ、スイーツなど、洋のテイストで今売り出しています。こうした食べ方が、旧来のそばの食べ方に取って変わることはないでしょう。しかし話題づくりにはなります。そばに親しみのない方が、これをきっかけにそばの魅力を知り、その消費を拡大してくれるかもしれません。伝統は大事です、ただ伝統をそのまま延長した先に未来があるかは疑問です。なんとなく今までやって来られたから、これからも食べていけると思わない方がいい。まずは、都会の人や外国人が分かっているのに、自分たちは気付かないでいる長野の魅力を見直し、分析し、発信していくことが必要でしょう。伝統に何をのせるか?新しい発想、新しい価値の付加が必要で、人材育成もそういう人を育てていきたいですね。
 とかく経営者は、ご自分の物差しでものを測るので、市場やお客様の変化に対し、自分がどこまで対応できているのか見えないときがあります。商工会議所の仕事は、まず有用な情報をタイムリーに会員企業へ提供することです。長野に入ってくる情報や、事業者が個人で取りにいける情報は限られています。その点商工会議所は、全国の様々な組織とのつながりを活かせます。そうして得た情報を共有しながら、今注力すべき方向性と力の入れ具合について、事業者のベクトルに合わせていく。そしてこれまでと同様に、ビジネスマッチングなどに努めていく。それが商工会議所の役割だと思うのです。私もこれからそのお手伝いをしていきます。
 人づくりでも、商工会議所にできることはあると思います。北村当会議所会頭がおっしゃるように、社会通念や挨拶、感謝の心を身に付けたり、長野の良さを感じる教育は、子供時代に一定期間継続して行うべきです。沖縄県では、小学生向けに観光学習の副読本を作成し、同県にとって観光振興がいかに大切か、 10歳から教育しています。これを続けたことで、沖縄県のおもてなし度が向上し、観光で食べていく若者が増えたといいます。同様の取り組みが、ここ長野でもできると思います。

小山 紀雄さんの横顔
趣味のひとつは旅行で、奥様と一緒に海外旅行に年に1〜2度出かける。最近では、砂漠から昇る朝日を見に行ったモロッコへの旅。


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