2019年9月号

View Point

中原 正裕(なかはら まさひろ)

厚生労働省長野労働局長

 昭和36年 宮城県で生れ、中学・高校時代を山形県と福島県で過ごす。東北大学法学部卒業後、昭和58年 労働省入省。その後、滋賀県商工労働部職業安定課長、女性局調査官、厚生省年金局年金課企画官、厚生労働省調査官、北海道労働局総務部長、内閣府参事官(政策統括官付)兼大臣官房参事官、中央労働委員会事務局審査課長、長崎労働局長、和歌山労働局長などを経て現職。

働き方改革は、これに取り組む企業にとって
人材の確保・定着、生産性向上の契機であり
地域全体の発展にも良い影響をもたらします

 去る5月、長野県商工会議所連合会はじめ県内8団体からなる長野県就業促進・働き方改革戦略会議では、令和元年信州「働き方改革」共同宣言をいたしました。働き方改革は、県内企業や産業の持続的な発展、ひいては地域全体の発展のためにも不可欠です。長野県における働き方改革が、オール信州で推進されることを期待しています。

令和元年
信州「働き方改革」共同宣言

── この5月に令和元年信州「働き方改革」共同宣言がなされました。働き方改革関連法の背景と併せて、共同宣言の趣旨をお教えください。

中原
少子・高齢化が本格化し労働力人口が減少する中で、国や地域の活力を維持し、産業や企業の成長を確保していくためには、できるだけ多くの方に能力や経験を活かして活躍いただくこと、そして、そのための場を確保するように企業にお取り組みを進めていただくことが必要です。そこで、全国47都道府県において、労働局と都道府県が連携し、商工会議所をはじめ経営者の方々、労働団体、自治体など関係機関の参画もいただきながら、平成26年以降、働き方改革の取組みが進められてきました。
平成30年6月には、残業時間の上限規制、年次有給休暇5日の義務化、同一労働同一賃金の推進の3つを柱とする働き方改革関連法が成立し、本年4月から順次施行されています。ちょうど元号が令和に改まった今年は、働き方改革がいよいよ具体的な取組みに移行する節目の年となりました。
こうした中で、長野県においては、長野県商工会議所連合会をはじめ、長野県経営者協会、長野県中小企業団体中央会、長野県商工会連合会、日本労働組合総連連合会長野県連合会、長野県連合婦人会、長野労働局、長野県の8者からなる長野県就業促進・働き方改革戦略会議が設けられております。そして、本年5月に、働き方改革が長野県の産業や企業の持続的な発展のために不可欠であるとの認識の下に、特に以下の5項目について県内企業への周知・浸透を図るべく、「令和元年信州『働き方改革』共同宣言」が行われました。
1 新たな法制度に基づいて時間外・休日労働の縮減を図るとともに、36協定が必要となる場合には適正な内容での締結を徹底する。
2 年次有給休暇について年5日の確実な取得を図るなど、計画的かつ積極的な取得を進める。
3 ライフステージに応じた働きやすい職場環境づくりを進め、積極的に女性のキャリアアップを推進する。
4 非正規労働者の一層の活躍促進のため、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、不合理な待遇差の解消に取り組む。
5 短時間正社員制度などの多様な働き方を導入する。
長野県就業促進・働き方改革戦略会議では、働き方改革推進のための具体的な施策を今年3月に打ち出しており、同戦略会議のもとで地域別・産業別の会合も運営されております。長野県におけるこうした取組みには、全国の参考にしていただけるような先進的・積極的なものが多く含まれていると思います。

 

働き方改革で地域の将来を担う
人材の育成を

── 働き方について、長野県においてはどんな課題がございますか。

中原
若者の県外流出が懸念されていますが、長野県における高校生の県内就職率は直近で90・2%、また県出身の大卒者の県内就職率も39・5%と、ともに全国的にみれば高い水準にあります。ただ、せっかく県内に就職した高卒者の37・6%、大卒者の29・2%が3年以内にその就職先を辞めておりまして、こうした若い方たちが不安定就労に陥らずに、再び県内で安定的な就職ができるよう支援を強化することが課題となります。
また、今後、地域間での人材をめぐる競争が激しさを増すであろうことを考えれば、多くの方々が県内企業を選び、定着していただけるような就労環境の整備を急ぐ必要があります。最近の若者の多くは、仕事と生活の調和など働きやすさを企業選びの基準として重視しています。県内企業の皆様には、働き方改革を通じて、魅力ある就労の場を整えていただくようお願いいたします。
次に、女性の活躍についてです。長野県の場合、女性の有業率(自営を含む)は52・6%で全国5位と高い水準にありますが、一方で、女性労働者に占める管理的職業従事者の比率は13・5%と全国47位です。今後、仕事と家庭を両立できる環境づくりをはじめ、女性が意欲をもって継続的にその能力や経験を生かせる受け皿を整えていくことが求められます。
高齢者雇用については、いま60歳台後半層の就業拡大が大きな課題とされておりますが、たいへん素晴らしいことに、長野県における65歳以上の就業率は28・7%で全国1位です。一方で、定年制を廃止している企業の比率は1・6%(44位)、定年の引き上げを図っている企業の割合は18・8%(25位)、65歳を定年にしている企業の割合は16・4%(23位)です。これらは、県内の高齢者の就労について質的な面での改善の余地があることを示すものであり、定年前後において、仕事の中身や処遇に段差が生じない環境を整えることが高齢者の方々の能力や経験を活かす上で重要と言えます。
今後は、2025年頃を境として、これまでのような高齢者の増加傾向が鈍化する一方、生産年齢人口の減少速度が速まることとなります。それを見据え、多くの県内企業に、働き方改革の取組みを通じて、より多くの方々が就労しやすい環境を整え、産業や地域の将来を担う人材の確保と育成に取り組んでいただくようお願いしたいと思います。
また、この機会に労働災害の防止についても申し上げたいと存じます。県内では昨年19人の尊い命が労働災害で失われています。私どもが報告の対象にしている休業4日以上の労働災害は、昨年、過去10年間で最多となり、対前年比の増加率・増加数も過去30年で2番目に高いという憂慮すべき状況となりました。また、卸売・小売業など第三次産業分野における労働災害の増加も懸念されるところです。
安全で安心して働くことができる環境は、労働者や企業のみならず、そのご家族や地域社会にとってもかけがえのない大切なものであり、働き方改革を進めるうえでの基盤です。企業の皆様には、職場における安全と健康の重要性を再認識いただき、職場内に危険が潜んでいないか、必要な管理体制が確保されているか等を再点検いただきますようお願いします。

 

各種支援制度を
積極的にご活用ください

── 最後に、読者である商工会議所会員へメッセージを頂戴できますか。

中原
県内には9つの労働基準監督署と14のハローワーク(公共職業安定所・出張所)があり、皆様の身近な場所で業務を行っています。しかし、働き方改革は決して行政のみで行い得るものではありません。同じく地域にネットワークを有しておられる商工会議所さんは、私ども労働行政のまさに良きパートナーであり、国の施策の浸透・普及にあたり非常に多くのご支援・ご協力をいただいており、感謝申し上げております。今後も連合会や各商工会議所さんには様々な相談をさせていただき、ご協力をお願いしたいと存じます。
働き方改革は、取り組まれる企業にとって人材の確保・定着、生産性向上等への大きな契機となり、ひいては地域全体の発展にも良い影響をもたらすものです。監督署やハローワークにおいて企業からのご相談をお受けしており、さまざまな国の支援制度や各種助成金もございます。ぜひ積極的にご活用いただき、魅力ある雇用の場づくりにオール信州でお取り組みいただければと思っております。

 

中原 正裕さんの横顔
趣味は鉄道に乗ることで、全国の国鉄・JR線はすべて乗車し、私鉄なども3路線を残すのみだとか。他に神社やお寺の参拝、離島巡りなども楽しまれている。


2019年9月号 CONTENTS

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中原 正裕氏 厚生労働省長野労働局長
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