2019年8月号

View Point

清水 昭(しみず あきら)

全国健康保険協会長野支部長

1981年 ㈱八十二銀行入行、2013年 八十二スタッフサービス㈱社長を経て、2017年 全国健康保険協会入社、現在に至る。長野県保険者協議会副会長。

長野県商工会議所連合会との連携協定を機に
健康経営を全県で普及促進し
加入者・加入事業主の皆様の
利益実現を図ります

 全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)加入者・加入事業主の皆様には、平素より当協会の事業運営にご理解ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。私どもは今年4月1日に、長野県商工会議所連合会(以下、県連)と健康経営に関する連携協定を締結いたしました。まずは長野地域で健康経営に対する意識向上と、実際に取り組む企業へのバックアップに努め、これをモデルケースとして、全県に健康経営の普及を促進していきます。

加入者および加入事業者の
利益の実現を図るのが使命

── はじめに、協会けんぽがどんな役割を担っていらっしゃるのか教えていただけますか。

清水
協会けんぽは、主に中小企業で働く従業員とそのご家族など、全国で3、940万人(長野県65万人)の加入者と、220万事業所(長野県3万6千事業所)からなる、わが国最大の医療保険者です。その基本使命は、加入者の健康増進を図るとともに、良質かつ効率的な医療が享受できるようにし、加入者および加入事業主の利益の実現を図ることにあります。2008年10月に発足以来、健診や保健指導などの健康づくりの推進、ジェネリック医薬品の使用促進をはじめとする医療費適正化の取り組み、国や地方公共団体などの関係方面への意見発信に努めてきました。
世界に誇るべき日本の国民皆保険制度を私たちはこれからも維持していかなくてはなりません。しかし、高齢化の進展や医療の高度化により、近年医療費が上昇し、今後十数年間さらに上がり続けると言われています。しかしながら制度を支える現役世代の賃金は、医療費の伸びに付いていけません。また現在、協会けんぽの支出の約4割が高齢者医療への拠出金であり、大企業に多い組合健保にいたってはその比率がさらに高まっています。日本の医療保険制度を維持するには、健保財政を長期的に維持していくことが非常に重要になります。
そこで鍵となるのが、加入者の健康増進です。協会けんぽに加入いただいている被保険者と被扶養者が健康でいらっしゃれば、将来も含めて医療給付の抑制につながり、財政を健全に保つことができます。初めに申し上げました通り、まずは加入者が健康になっていくことを通じて、加入者と事業主の利益に資することが私どもの使命です。そして、そのことを通じて協会けんぽの財政が安定的に維持されれば、その結果としてわが国の医療保険制度の持続性が確保できると考えています。

健康経営の取り組みが
企業価値を向上させる

── 今年4月1日に健康経営の推進について、県連と連携協定を結ばれました。その経緯や狙いについてお話しいただけますか。

清水
まず健康経営とは、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することと言われています。従業員の健康管理・健康づくりの推進は、単に医療費の節減という視点だけでなく、会社の生産性の向上、従業員の創造性の向上、企業イメージの向上等の効果が得られ、かつリスクマネジメントとしても重要です。つまり、企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できるのです。
実際、健康経営に取り組む企業とそうでない企業とで従業員の健康度を比較すると格段の差があり、取り組みが実質的に企業の収益に結びついているという東京大学の研究結果もあります。健康経営はまちがいなく企業価値を向上させます。また、人手不足が叫ばれる今、限られた貴重な人材に意欲をもって効率的に働いてもらうためにも、健康経営の考え方は欠かせません。
健康経営を、スピード感をもって普及促進することがこの提携の目的です。加入事業所の皆様には、私たちもDMやホームページを通じて健康経営をおすすめしてきましたが、情報が一方通行になりがちで、経営者の皆様に具体的な行動を起こしていただく力に欠けていました。そこで、経営者と近い位置にある県内主要都市の商工会議所や、商工会議所と連携しているアクサ生命さんのお力を借りることにしたのです。長野商工会議所は、すでに健康経営に積極的に取り組んでいらっしゃいますし、何より長野県にある商工会議所のなかでリーダー的な存在ですから。
2019年が明けて間もないころ、長野商工会議所さんとアクサ生命さんにこちらへお越しいただき、健康経営の普及について意見交換する機会がありました。その折に、「せっかく連携協定するなら県内すべての商工会議所と提携させていただきたい」と申し上げたところ、非常に前向きに捉えていただき、県連へすぐにお話を通してくださいました。おかげさまで、県連とはトントン拍子で提携を結ぶことができました。たいへん感謝しております。

連携協定締結後2ヶ月で
現れ始めた効果

── 健康経営は企業イメージの向上にもつながるというお話もありました。

清水
たとえば採用の場面でも、従業員の健康を気遣う会社は求職者を非常に惹きつけます。数年前に実施された経産省の就活学生へのアンケートでも、「どういう企業に就職したいか」という問いに対する回答の第1位が、「従業員の健康や働き方に配慮している会社」でした。
経産省では、健康経営優良法人認定制度を設けています。認定企業はそのロゴをホームページや採用媒体で利用できることなどから、求職者、お取引先、金融機関などから社会的に高い評価を受けることにつながります。ちなみに、この2月に発表された中小企業部門の健康経営優良法人認定数は、長野県は全国で6番目の87事業所でした。長野県の経営者の皆様の健康経営に関する意識が高いことが窺われます。
制度の認定を受けるには、健康経営に取り組むことを、まず内外に宣言することが必要です。協会けんぽ長野支部でも加入事業所からの「健康づくりチャレンジ宣言」を受け付けています。その企業数は、スタートから4年半を経た2018年度末で411社でしたが、今回の連携協定締結後、この2ヶ月で47社も増加しました。今後はチャレンジ宣言企業をより増やすとともに、宣言を着実に成果に結びつける活動に力を入れます。アクサ生命さんのお力もお借りしながら、該当企業の過去の健康診断データをもとに、具体的にどんな活動をすべきかアドバイスするなどのバックアップも今まで以上に行っていきたいと思います。
また連携協定を機に啓発活動にも一層力を入れ、商工会議所会員様向けにセミナーを共同開催するなど、まずは経営者の皆様に健康経営に興味を持っていただき、次いで経営者と従業員が共に前向きに健康増進に取り組む環境づくりを進めていきます。また、健康診断の受診率向上、運動習慣づくり、食生活の改善などについても、商工会議所と連携した事業ができればと考えています。いずれにしても、長野商工会議所との連携で実績を積んでいくことで、県内各商工会議所からも信頼をいただき、よりスムーズに健康経営を県内企業に浸透させることにつながっていくものと考えています。
最後に商工会議所会員企業の皆様にお知らせがあります。昨年より健康保険料のインセンティブ制度が始まりました。特定健康診断の受診率、特定保健指導の実施率、健診後の医療機関受診率、ジェネリック医薬品の使用割合などを都道府県ごとに競い合い、健康保険料率に反映させるもので、皆様の健康への取り組みが支部保険料の低減につながります。協会けんぽも全力でサポートしますので、ぜひご協力ください。

 

清水 昭さんの横顔
上田市生まれ。趣味はハイキングで、年に数回仲間と蓼科山や湯ノ丸山などゆるい山歩きを楽しむ。


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